![noteバナー_フラデツ_ペトロフ_2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/15773001/rectangle_large_type_2_de86d3a67beee7da45192c77b3a57b6d.jpeg?width=1200)
チェコの手仕事と文化にふれる旅ー手作業で作られるピアノ
チェコには、創業155年となるピアノメーカーがある。しかもそのピアノは現在でも80%が手作業でつくられている。それが【PETROF(ペトロフ)】だ。
![画像1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/15616725/picture_pc_21f5998b494cb3c7889915d6a723b8d8.jpg?width=1200)
PETROFは、フラデツ・クラーロヴェーという街にある。街についての紹介はまた後日書くとして…。ここにはPETROFの工場のみならず、誰でも来場可能なPETROFギャラリーとミュージアムもある。今回はそのPETROFギャラリーにお邪魔することができた。
![画像3](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/15618626/picture_pc_6246d09d0605c4194eeb7bb50a4aafa2.jpg?width=1200)
案内してくださったのはルカシュさん。2mくらいありそうな長身だった。ペトロフで働く人には珍しく、ピアノは弾けないという。カジュアルな出で立ちだがかなりやり手のビジネスマン。私との共通点はピアノが弾けないということくらいか。
巨大ピアノに出迎えられる
まず、PETROFのショールームに足を踏み入れると…。
![画像3](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/15618684/picture_pc_168f8976057186d75afb49f76833476f.jpg?width=1200)
巨大とかいうレベルじゃないピアノ!遊び心がある!と気持ちが高まる。
「本来のピアノの形とは左右が逆なんだけどね」とルカシュさん。
そしてピアノの間にある階段を上がっていくと…。
ピアノの中にピアノがならんでいた。
![画像4](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/15618730/picture_pc_2823e94d4929a7f70c417cf8e8273af6.jpg?width=1200)
さまざまなモデルのピアノが並ぶ。背板に模様があるのもかっこいい
先に書いたようにPETROFのピアノは80%が手作業で作られている。また部品の70%も自社で生産しているため、品質の担保が保証できる。そして同時に、さまざまなカスタマイズが可能なのだ。
板の素材や質感、色を選ぶことができたり、
![画像5](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/15618803/picture_pc_a3e2764ba94ffec05f4a50d7e87b0624.jpg?width=1200)
なんと化石(!)を埋め込んだり、
![画像8](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/15618828/picture_pc_71acd322b49ddcfd55bfd010b962bb5a.jpg?width=1200)
色や形の指定もできる。赤いピアノがまぶしい…。
![画像8](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/15618856/picture_pc_a6b7be720f0fbd481ad3861c91ea19cb.jpg?width=1200)
「望まれれば大抵の要望には応えられます。予算があればね。」
「そこですよね」
![画像9](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/15618861/picture_pc_15bc9de5e0b79a2012a253d3f902bd1d.jpg?width=1200)
オーダーメイドはさまざまな色に変えることができる。ただし、たとえば車は白が基本色だけれど、ピアノの基本は黒だ。なので白いピアノの制作に際しては器具をすべて洗浄する必要があるなど、正しい「白」をつくるために非常に手間がかかるため高価なのだそう。また一部に傷がつくと、補修できる黒とは違い、白の場合はすべてを塗り直さなければならないため維持管理が非常に大変なのも特徴。
ピアノというのは背が高いほうが高価で音がいいそう。それはピアノの背の板部分が肝で、ここの面積が広いほど音が響く。
![画像17](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/15619337/picture_pc_f68c646ab13e3738502290c4e1319008.jpg?width=1200)
へぇ〜…170万円くらいで買えるんですね〜…。
き、機内持ち込みできるかなぁ…。
需要に合わせて多様化するピアノー電子ピアノもあります
PETROFで生産されるのはグランドピアノやアップライトピアノのみならず、現代の需要に合わせた電子ピアノも含まれる。
![画像10](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/15618916/picture_pc_9ba80542f801a63063506450867f2407.jpg?width=1200)
ピアノに録音をしてそこでアレンジなどもできてしまうというからすごい。
「近隣への音を気にして、ヘッドフォンで聴ける電子ピアノを選ぶ人もいますよ」と聞き、その問題、やっぱりチェコでもあるんですね!と思うなど。
![画像11](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/15618964/picture_pc_8f07efec4e95d7daddf5927cbaadeaaa.jpg?width=1200)
変わり種や限定モデルなど最高級のピアノまで、ここでは誰でも試奏ができるというから太っ腹だ。
![画像12](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/15619010/picture_pc_be3e833fd5c13f0866d64389f1f11d79.jpg?width=1200)
私の頭の中では流れましたよね。西田敏行さんが。
もしも〜ピアノが〜フンフーンフンフフン♪ ってね…。
「ANT.PETROF」の最高級ピアノ
ショールームを進むと、ガラスとシャンデリアのもとに照らされたこの空間にたどりついた。ここにあるのは、2014年に発表された「ANT.PETROF」という、創業者の名前を冠したプレミアブランドのピアノたちだ。PETROFの中でももっとも熟練の専門家たちがあたり、最高級の材料と技術が使用されている。
ちなみにこの空間でコンサートやイベントが行われることもあるそう。
![画像14](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/15619088/picture_pc_bd27b960eaa5e6a5798fe39d70dd3947.jpg?width=1200)
「ピアノも、ものによっては、この地域で3LDKくらいの家が買えるくらいの価格ですね」
へ…へぇ…お安いですね…。
![画像13](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/15619052/picture_pc_c04970c7bdbcfc44a74758432ad0de82.jpg?width=1200)
ペトロフ家が代々継いできたピアノ生産
現在も年間約2000台のピアノを生産し、中国・ロシアを中心に世界65カ国へ輸出している。代々ペトロフ家が経営を守り続けて現在では6代目だ。1864年に創業し、1948年には戦後の共産主義の時代にPETROFの工場も数年国有化され、権利や財産も没収されるという苦難の時代もあった。その後1991年にまたペトロフ家が事業を引き継ぐ際も、PETROFのみならずその他グループ全体を買い取らなければならないなどの不利な条件であったものの、他のブランドも合わせて買い取り海外に譲渡するなどして、民営化に成功したという。手作業で行うという伝統が今でも続いているのは、背後に過去の偉大な経営の力があることを感じさせる。
PETROFホールのビジネス引力
![画像14](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/15619217/picture_pc_f990351ae5ce1e187cc65bdd71d47dba.jpg?width=1200)
2017年にできたばかりのPETROFギャラリーには、ホールが併設されている。500名ほどが収容できる空間だが、どうやらこの空間がものすごい魔力を放っているようだ。
![画像15](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/15619272/picture_pc_b77001550996b95e00b2e2d0c63e8fff.jpg?width=1200)
フラデツ・クラーロヴェーの街は比較的裕福な層が多い。それがPETROFの客層と一致し、近隣に他に大きな会場もあまりないという条件も揃い、開催するコンサートもすぐ完売してしまうそう。
また、この場所はコンサートのみならず、さまざまな企業がこの場所をビジネスの場として利用する。パーティやイベントの会場として使用され、使い勝手も自由なため、時にはスポンサーの車が中に乗り入れる演出まで行われるという。フラデツ・クラーロヴェー、ひいてはチェコを代表するメーカーのひとつであるPETROFの洗練された空間でイベントができるというのは企業にとってもメリットが大きいということだそう。
![画像21](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/15621237/picture_pc_e5d5e609d3482512f245e66e63e33a93.jpg?width=1200)
![画像22](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/15621238/picture_pc_19e1a9f99d4f995f82a067246e5bde8e.jpg?width=1200)
(上記2写真:PETROF Gallery より)
もちろん音響に最大限のこだわりを持ち、ヒーターや冷房も天井にあり、防音壁のパーツも吊り下げ式にするなど工夫も満載だ。天井の天窓からさす光もやわらかで心地よい。本当に豪華で、変幻自在な会場なのだ。
![画像16](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/15619328/picture_pc_95f7b5995496d377f528701fad09a699.jpg?width=1200)
また、ホールから直結ではないのだが、扉を一枚開けるとそこはカフェとギャラリーに繋がっている。カフェから料理がケータリングされることも多い。
![画像21](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/15619465/picture_pc_2b5694b9a90f2d663949e1570b95a98d.jpg?width=1200)
二階吹き抜けの快適な空間は、ショールームとも直通している。この風通しのいい空間に使われているすべての内装やインテリアは、床を除いたすべてがチェコ産・チェコデザインのものでできている。
![画像20](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/15619463/picture_pc_22cf843f1d0f0792a68e44db82eaa84c.jpg?width=1200)
Made in チェコ、そして手作業へのこだわりの伝統が貫かれていることにひたすら感動する…。国産にこだわることは、ときに予算も手間もかかることであることは想像に難くない。
PETROFギャラリー・カフェへの行き方
![画像22](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/15620326/picture_pc_8ce9a491edb9a9c68a0cb3fd1e8c59a1.jpg?width=1200)
フラデツ・クラーロヴェーの鉄道駅の駅前からバス1番または2番に乗り、9番目の「Na Brně」にて下車。車内でドライバーに現金で支払いましょう。
料金は25Kčでした。小銭を多めに用意しておきましょう。
ショールーム営業時間:
月〜金 9:00-17:30
予約不要で訪れることができる。
(個別な案内・対応をお願いしたい場合は事前予約をおすすめします)
カフェ営業時間:
月〜金 8:30-20:00
土 12:00-20:00
フラデツ・クラーロヴェーの観光中心地からも近いので、カフェに立ち寄って雰囲気を味わうだけでもかなり贅沢な気分にひたることができる。
ミュージアムや工場見学ツアーに参加したい人は
今回は尋ねられなかったが、工場併設のミュージアムは、毎週火曜と木曜に予約制で訪れることができる。(カード不可、現金払いのみ)
ミュージアムツアー(英語・約60–90 分):
大人 1名につき200 Kč または 8 €
工場見学ツアー(英語・約60–90 分):
大人 1名につき400 Kč または 16 €
その他詳細はPETROFホームページよりご確認のうえお申し込みください。
(日本語の案内はありますが申し込みはメールまたはミュージアムのホームページの申し込みフォームからとなります)
ピアノを手作業でつくるには想像しえない膨大な工程がある
歴史や工場での製造の工程がまとめられていた映像があった。映像は英語だけれど、1:15以降くらいからの工程をみるだけで気が遠くなりそうだったからぜひ見てほしい…。職人の技術もさることながら、ひとつの工程が狂えば音が狂うかもしれないわけで、人間の集中力とはすごいものです…。
今後も引き続き、チェコ共和国の「手仕事・文化」を中心に、チェコの小さな街への旅についてまとめていきます!
※情報はすべて2019年10月時点のものです。
今回の旅費宿泊費は一部チェコ政府観光局に負担していただいております。
旅行記エッセイ『チェコに学ぶ「作る」の魔力』、かもがわ出版より発売しました。ないから、自分の手で作る。社会主義下の時代を経たチェコの方々に根付くものづくり精神を取材した、版画・マンガ・イラストエッセイ。
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