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小田中耕一さんの染工房を訪ねて

2020年の12月の初旬、はんこワークショップとトークイベントをご依頼いただき、お邪魔した岩手県は紫波町。
その際ご縁あって、なんと型染め作家・小田中耕一さんの工房を訪問させていただきました。

小田中さんは、グラフィック社『民藝の教科書』シリーズの表紙デザインや、その他パッケージデザイン、ロゴ、装丁など各地さまざまなお仕事を手がけられています。

小田中さんは、人間国宝である芹沢銈介さんに師事し修行されたのち、家業であった染工房を継がれています。

岩手県・紫波町にある小田中染工房

芹沢銈介さんの言葉や写真が、見守るように飾られている工房。

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この日は、小田中さんの型染め絵作品をいくつか見せてもらいました。

型染め絵ができるまで

まずは型紙を彫り、それを紗とよばれる細かい網に貼っていく。

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型染めの文字は、一文字がどこかでつながっている。たとえばこの写真で言うと、「三」という文字以外は、すべて線がどこかでつながっている。それでもその文字に読めるというのが不思議...!!私がひとしきり感動しているそばでご本人は「いい加減なものなんですよ」とポツリ。
「職業病で、全部の文字がつながって見えてきませんか?」と聞くと、「たまにあるね」とのこと。

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彫った型紙の上に糊をおくと、絵柄のない余白部分に糊が置かれる。
そして糊が乗っていない箇所に、顔料と豆汁を混ぜた色を載せていき、最後に糊を落とすと、型染め絵が出来上がる。

これが

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こうなる

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こちらは紫波町内にある「廣田酒造店」さんの日本酒・新年用パッケージ。宝船と2パターンある。このエネルギッシュな配色はなんだ!もう!(ときめき)
ちなみに2021年の新年に美味しくいただきました。本当にきれいな水からできている…!!というすっきりとした飲み口でついつい飲んでしまった。
廣田酒造店さんから季節になると買えますので探してみてくださいね。

大きめな作品や布のものは張り手という道具で、布をピン!と伸ばしながら色を差していきます。

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そのほかにもさまざまな型紙も見せていただきましたが、その精巧さとどっしりしたバランスにうっとり。

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手仕事フォーラムさん発行の『日本の手仕事カレンダー』を毎年手がけられているのも小田中さん。それぞれの図柄のエピソードも伺いつつ、私もカレンダーと手ぬぐいをゲット。

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静かながらもユーモアある小田中さんの話し振りからも、謙虚な姿勢と仕事に対するまっすぐさ、今後やりたいことへの熱意もひしひし感じられて、大いに刺激を受けました。その後の予定が迫り、滞在時間30分ほどでは到底足りないくらい前のめりに質問攻めにしてしまいました…。
型染めの型をじっくり眺めて、ああ、私も彫りたいなと言う気持ちがむくむくと。先生、私も頑張ります。本当にありがとうございました!

民藝のひとつの聖地・光原社

翌日、紫波町から電車で20分ほどで盛岡駅へ。お目当ては、宮沢賢治『注文の多い料理店』を出版した【光原社】へ。

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うつわ・ガラス・染物・絵画・衣服…日用品でありながらもひとつひとつ洗練された、全国のみならず世界各国から集まった美しい民藝品を取り扱われています。小田中耕一さんの作品や、芹沢銈介さん・柚木沙弥郎さんの作品も販売していました。
(いつか………入手したい………という夢を抱いて……。)

↑の看板のお店をくぐり抜け、裏側から店舗を見たのがこちら↓
なんて美しい空間なのでしょう…。ガラス越しに見える階段がすでに絵本みたい。

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さらに宮沢賢治の直筆原稿や、柚木沙弥郎さんによる宮沢賢治作品をモチーフにした絵画作品などが贅沢に展示された【マヂエル館】も、観覧無料なのに贅沢すぎました。(光原社・マヂエル館ともにいずれも館内は撮影禁止)

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奥を進むと宮沢賢治の言葉が書かれた壁が。

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「そこらの野原のこどもらが 小さな赤いももひきや 足袋ももたずにゐるのです」

全文はこちらに載っていました。

お仕事で伺ったにも関わらず、思いがけず大好きなものをたくさん見させていただいた、岩手県・紫波町〜盛岡に寄り道、の旅でした。

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