見出し画像

本を出すことになった。

結論から言います。エッセイ本を出版します。

書影

しかも書籍の帯・コメントを、憧れすぎるこの人、赤江珠緒さんに書いていただきました。もういうことなしです。成仏できそうです。でもまだ死ねません。なぜなら本を出すからです。

本を出す。何かしらの創作をする人は、一度は描く夢ではないだろうか。

"漫画家"と"小説家"に憧れた人生

小学生の頃、少女雑誌『りぼん』を愛読し、漫画家に憧れた。当時とっていた進研ゼミでは、課題を提出して貯めたポイントを"漫画家になれるセット”と交換したのに、原稿用紙もスクリーントーンも勿体なくて、結局ほとんど使えなかった。小学校を卒業する頃には、もう漫画家になりたいと書くのは幼稚な気がして恥ずかしくて、すこしカッコつけたのだろうか。卒業アルバムには、将来の夢は”小説家”と書いていた。

結局、小説は書いていない。

32歳のとき、立て続けにつらいことがあった。
それは泣きっ面に蜂、に刺された上から塩を塗られたまま太陽に照りつけられる、みたいな痛々しい出来事の連続だった。その時は、漫画家になりたいとかいう想いはない。考えるよりも先に、勝手に書いていた。とにかく吐き出せる場や、気持ちの整理をする場所が、私には必要だった。それが私には、書くことだった。

はじめは自分の中で書くだけだった日記を、他の人にも届けようと思い始めた。思ったものの、当初は父や母の病気を公表していたわけでもなかったので、こんなことを書いてしまって本当にいいのだろうか、引かれるかな、惨めな気持ちにならないだろうかなどと、とにかく不安しかなかった。

それでも意を決してnoteにも公開し、#コミックエッセイ大賞 にも応募した。結果、準グランプリという賞までいただいたときも、なんだかふわふわした信じられない気持ちだった。でも嬉しかった。書いてよかったのか、と思えた。

"書く"ことで救われる気持ち

精神科医・ミュージシャンである星野概念さんと、いとうせいこうさんの対談の中で、星野さんは、患者さんに「書く」ことを勧めることがあるとおっしゃっていた。

「自分が思っていることを書くときは、誰が見るわけでもないので、まとまってなくていいんですよ。「疲れた」「あいつまじむかつく」みたいな感じで大丈夫。自分の中でグルグルさせないで、外在化させることが大事なので、ちゃんと書かなくてもいい。」
(いとう せいこう, 星野 概念, トミヤマ ユキコ(2020)
 『自由というサプリ 続・ラブという薬』リトル・モア より引用)

自分の思っていることを外在化させる
ああ、まさに私のしていたことはこれだ、と思った。

以前、星野概念さんのトークイベントを聞きに行ったことがある。
このときは、母のがんが発覚した32歳の夏から少し経った頃で、当時出版された『ラブという薬』の本の帯にあった"「きつい現実」が「少しゆるい現実」になりますように”という言葉になんだか救われたものだった。この日は星野概念さんと桃山商事さんで、「傾聴」と「対話」というテーマで話されていた。

今思うと、私が書いていたのは"「きつい現実」が「少しゆるい現実」になりますように” と願っていた結果なのかもしれない。仲の良かった父を嫌いになるのが怖くて、父との日々をマンガにした。ノンフィクションだけれど、ドキュメンタリーじゃない、自分がもっと笑えるように描いた。目の前の現実を完全にひっくり返すことは、なかなかできない。だからこそ「きつい」と感じたものを一旦外に取り出して眺めて、それをどんなおにぎりにして、頬張って自分の中に取り入れるか。そんな感覚なのではないだろうか。

「きつい現実」が「少しゆるい現実」になりますように。

何度もこの言葉を借りて申し訳ないけれど。その手段にはいろいろなものがあるということなのだろう。
精神科に行くこと、カウンセリングを受けることもひとつ。
書くことや、アートとして昇華する人もいるのかもしれない。

『自由というサプリ』の中で、いとうせいこうさんは、誰かの文章を翻訳をするのもいいよ、と話している。人の文章を読んでその人自身を憑依させるように文脈を考えるうちに、自我と向き合うことから離れられるという。自分を外在化させる以外の、自分から解放される手段としての「書く」もあるということで、その方法は千差万別。

苦しいから、書いて描いて外に出したもの。そんな風に書いたものが、本になる。なんだか信じがたい気持ちだ。
はじめにnoteで発表してから、cakesで連載、そして書籍化にあたり、何度も何度も自分の文章などと向き合っていると、その度に少しずつ、気持ちの整理が明確になっていく気がする。それも不思議な作業でした。

漫画家にも小説家にもなったわけでもないけれど。
エッセイと漫画が本になり、11月26日(土)に出版されます。
夢か? いや、一応夢じゃなさそうです。

みなさまどうぞどうぞ、よろしくおねがいします。

最近の父

名称未設定のアートワーク 21

名称未設定のアートワーク 20

元となった連載は、こちらから読めます。








『スキ』をしていただくとあなたにおすすめのチェコをランダムにお知らせします。 サポートいただいたお金は、チェコ共和国ではんこの旅をするための貯金にあてさせていただきます。