見出し画像

「小杉湯となり」で寝そべって

最近、私の中では比較的大きめな出来事があった。
このコロナ禍の世界においては、極めて小さい事象。されど私の中ではかなり大きなできごと。

それは、6月末から「小杉湯となり」という場所を借り始めたこと。

コロナのある世界の、外出があまり推奨されていないご時世。

私の仕事はざっくり言えば、
・はんこを彫ること
・日本語⇄英語の翻訳
・エッセイや記事の執筆 など

この3種類。ほとんど全てが家でできることだ。介護やパートナーやら子育てやらで、家で仕事ができない!という事情もとくにない。だけど私は、家で仕事が捗らない日が多い。

シェアオフィスとフリーランス

フリーランスといっても様々だし、家で全て自己完結してそのほうが仕事がしやすいというひとも往往にしているだろう。しかし私は、他者の目があったり、ざわざわした環境や、移動時間の中で考え事をする時間があるのが案外心地よかったり。今までもよくファミレスやカフェなどを渡り歩いて作業をしていたので、家から出ずに仕事をする時間は結構息苦しかったり、進みが悪いのだ。

過去にもシェアオフィスを借りたことがあった。その時は家がゴタゴタしていたこともあり、介護や家族から距離を置いて、フリーランスとして仕事の繋がりを増やしたかったという事情があった。(このあたりの心情はcakesの連載「家の中にいるのが息苦しい時の処方箋」に書きました)

画像1

当時身を置いたのは、錦糸町にある「co-lab墨田亀沢」。ここは印刷工場の1フロアをシェアオフィスにしたつくりで、町工場の多い東東京において、ものづくりとクリエイターのコラボレーションが生まれやすい風土がある、不思議な磁場の場所だった。そこで出会えた縁はたくさんあって、大好きな人たちがいっぱいできた。しかしいかんせん、私は西東京在住。友達や仕事のお付き合いが今でも続く繋がりはできたものの、悲しいかな、この時代において東東京は、物理的にはなかなかの遠さになってしまった。

銭湯が好きだ

ところでここ2年くらい、私は銭湯が好きだ。これは、自分がもっともつらかった時期と重複する。銭湯は、本当に心を救ってくれる存在なのだ。とくに高円寺にある「小杉湯」という銭湯で、温水と冷水を交互に浴する「交互浴」を覚えてからは、ふはぁ〜〜っと心身を解放してくれる瞬間に出会えるようになった。

思えばこのはんことことばも、小杉湯にいたときに生まれた。

ofuro-08のコピー

母を亡くして寂しさを感じた時、深夜に小杉湯に行った時もあった。特に誰と話すでもなくても、お風呂に入って牛乳か缶ビールを1本飲むだけで贅沢を味わえたり。漠然かつ確実に人の気配を感じられて、心地よい安心感がある。その時間に私は幾度となく救われてきた。ふわっと解放される瞬間の中で、今まで考えていたことやアイディアが湧いてくることもあったりして。仕事との相性もとても良かった。

そんな「小杉湯」のとなりに、シェアスペースができるという。仕事場の隣に銭湯があるなんて、もう夢の境地だ。私はワクワクしていた。できれば利用したいけれど、小杉湯はかなりの人気スポットだから、なかなか入れないだろうなあ。そう思っていたけれど縁やタイミングが重なって、私は「小杉湯となり」の会員になった。

「小杉湯となり」ってどんな場所か

銭湯つきのセカンドハウス。夢みたいな触れ込みだ。ちょうどコロナ禍のはじまりのころにオープン予定だったこの場所は、主催の銭湯ぐらしの皆様によって様々に形を変えたようで、現在は「会員限定の空間」になった。

そして会員のハラユキさんによるイラスト&エッセイがあまりにも巧妙に小杉湯となりを紹介されていたので驚き。このスピード感と、わかりみに溢れた記事を書かれているのがすごい…!!ぜひ読んでみてほしい。

仕事もするけれど、シェアオフィスともなんだか少し違う。新しい畳の香りを嗅ぎながら、そよ風をそよそよ受けながら仕事して、疲れたら畳に寝そべってちょっと寝て、気持ち切り替えに銭湯行って、その場にいる人とご飯食べたりして。そんなことができる場所が自宅から徒歩圏内にできてしまったのだ。

地元とつながりたくなってきた

実はわたしはこのあたりの出身です。今まで地元で活動するのをなんだか気恥ずかしく感じてしまい、特にはんこの活動においてなど高円寺界隈で活動することはなかったのですが。こんなご時世ということも後押ししてなのか、ここにきて地元の人たちともっとつながりたい、という気持ちが芽生えてきました。所縁あってこの地に長く住んでいるのだし、近所という利便性以上に、少し広い意味でのご近所さんをもっと作りたいなあ。それも会員制とはいえ、閉塞感はない、人が交流し行き交う場所で。と。

こんなに贅沢な環境にいていいのだろうか、いやいいのだ

私はつくづく自分が「贅沢」な体質だなって思っている。しかし元来自己肯定感低めな私は、自分を甘やかす環境に身を置くことが大事なんじゃないか?と最近思っています。

出て行くお金があるならその分稼げばいいか。死ぬわけでもないし。

あまり先のことを考えすぎるのをやめて、とにかく今入りたい場所を選んだ結果、ここにいます。そして快適です。そしてこれからもっと快適になる予感がしている。これからが楽しみ。

「使ってください」とカレンダーを寄贈したら、いい場所に飾ってくれていたので、最近私は「カレンダーの人」として認識されている。

コロナ禍で気をつけるべきことを忘れずに過ごしながら、30代後半に差し掛かった今は、お風呂みたいにぽかぽかと、居心地の良い環境に身を置くように努めたいな〜と思う。銭湯いっぱい入るぞ〜。

なんだかまとまりない文章になりましたけれど、近況報告まで。

『スキ』をしていただくとあなたにおすすめのチェコをランダムにお知らせします。 サポートいただいたお金は、チェコ共和国ではんこの旅をするための貯金にあてさせていただきます。