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大好きな秋に手紙を書いてみる


秋へ


秋様か、秋さんか、秋ちゃんか、秋くんか。
敬称に悩んだ結果、上から目線で呼び捨てすることにします。


突然ですが、あなたのことが大好きです。

今年の9月初旬、朝晩が冷え込み出したので一年間離れ離れだったあなたを思い出しました。「今年はいつもより早く会えるかな?」と期待したのも束の間、あなたはすっかり姿を見せなくなりました。シャイなんだから!この!

コンビニやスーパーでは既に芋味や栗味のお菓子が陳列されています。街も私も、あなたと再会するための心の準備はバッチリ出来ています。


長袖の服を身にまとい、本格的に金木犀が香る頃には涙の再会ですね。

本当ならば「秋〜!一年振りだよね〜!涙」と抱き合って喜び合いたいところですが、あなたは目に見えないので、私は仕方なく自分の体を抱きしめます。

その姿を側から見ればただの変人でしょうが、他人の目も気にならないぐらい、全身で感じたいと思うほど、あなたのことが好きなのです。


しかし、秋。ひとつだけ言いたい。あなたは春夏秋冬の中でも特に地味な存在ですよね。


春夏冬は「うわぁ、春(夏・冬)だなぁ〜!!」と、その到来を明るく受け入れられるのに対し、あなただけは「あぁ、秋が来たんだなぁ。」と、しみじみと感じられてしまっていますよね。


特に大きなイベントがない秋。唯一あるハロウィンでは渋谷の若者を踊り狂わせてしまう秋。祝日が多いことぐらいしか取り柄がない秋。その祝日も今年は夏に取られて、一体何してるんですか?祝日のバランスを考えてください。

それに毎年毎年、台風ばっかり日本列島によこして楽しいですか?学生時代は何度も学校を休みにしてくださって、本当にありがとうございました。


ぱっとしない秋。なんか沈んじゃう秋。

でも冒頭にも書いたように、私はあなたのことが大好きなのです。


だって秋は、みんなから愛されたいくせに、態度に出せないからって匂わせて、隠れて、不器用でなんか可愛いから。


それに、あなたのなんともいえない虚無感(夏を失った喪失感?)に影響されて適度に精神を病むことで、楽しいこと尽くしの冬の到来が待ち遠しく、嬉しく思える。

寂しい秋から楽しい冬へ、うきうきの春へ、そして最後はぶちあげの夏へと、順を追ってじわじわとテンションをあげながら四季を味わえるのは、陰気なあなたのおかげです。

めちゃくちゃの夏を整え、イチから季節を巡らせているのは、他でもないあなたです。


あなたこそが四季のトップバッターであり、リーダーです。もはや日本の季節は「春夏秋冬」ではなく「秋冬春夏」と言い換えられるべきです。

ヒルクライムの名曲のサビは「今年の秋はどこへ行こうか♩」から歌い始められるべきなのです(世代)。


そして、他の季節の踏み台にされても文句ひとつ言わずに耐え忍ぶ姿。そんな日本の古き良きサムライソウルを持つあなたを、愛せずにいられるでしょうか。

人があなたに物悲しさを感じてしまうのは、あなたの強く、おだやかで、儚い魂があるからなのかもしれません。


秋。みんなあなたのことが大好きです。
あなたの到来を心待ちにしています。
洋服にも困るので、早めに来てください。


大好きだよ、秋。
秋、最高。
アイラブ秋、フォーエバー。キスミー。ちゅ


秋生まれのウマソウより

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