唯一無二の新しい仲間と、8ミリビデオの思い出

 新しい仲間がおうちにやってきた。

 2年ほど前から計画していたのだが、現実的な数ある問題点を考えて将来の目標にしようと思っていたが、今になった。

 おうちに来てからもうすぐ1ヶ月、まだまだちび助で体も小さければ足も短い。おうちに来た日は興奮してなきまくるはバタバタしまくるはで、翌日は環境が変わったせいかほとんど経口摂取が出来なかった。1週間程で下痢と血便を来たして、早速病院のお世話になった。しかしながら終始元気で、よく寝てよく遊んで時が流れた。私も一緒に暮らすのは当たり前だが初めてなので、色々と戸惑ったり手探りながらも時が流れ、かわいい存在を慈しみたい気持ちは膨らむ一方である。

 見ていてると、日に日に様子が変わってくる。なんだか大きくなった気がするなあ、長くなったりむっちりしてきた。1週間後に体重を量ったら1日当たり40g程大きくなっていた。正常な新生児として問題ないくらいの体重増加だが、一緒に生活することで大きくなる様を実感した。毛の色もクリーム色から茶色が濃くなってきた気がする。

 運動面だってすごいスピードで成長している。おうちに来たときはよたよたして5cm程度の段差もつまづいていたのに、数日でこけなくなった。心持ち力強く前に進むが、相変わらずお尻はぷりぷり振っているから愛嬌にあふれている。接地点が4つあると安定感が違う。走る速さに至っては目に見えて速くなり、とても楽しそうに走る。高い物に狙いを定めて立とうとして、そのまま後ろにすーっバタン、と倒れてしまったことがあった。頭を打っていないか心配になったが本人は気にもしていないらしい。未だにバランスを崩すこともあるが、ずいぶん上手につかまり立ちが出来るようになったので、もはやテーブルの上に口に入るものを置いてはおけなくなった。

 表情だって毎日変わる。おいしいご飯が嬉しくて激しく興奮するが、抱きついてくるからついかわいくてじらしてしまう。お留守番の後に寂しそうな顔をしていたのがすねた表情になったりする。じっとこちらを見つめて、ふと高い声でないたり、時には上目遣いでお辞儀のようなしぐさをすることもある。暴れる事もある。何か訴えてくれているようなのだが、なんだろう。お話が出来ないから分からないのだが、分かるようになれたら良いのにと思う。顔つきも変わってきたのだろうか。毎日見ていると、気がつけない変化もあるみたいだ。予防接種は着々と消化している。

 最近の悩みは、爪切りをしようとすると暴れることと、ご飯の好みがはっきりしてきたこと。子供だからドライフードをふやかしているが、それだけだと見向きもしなくなった。缶詰のおいしいやつを足してあげるとすごい勢いで食べる。グルメになってしまった。


 うちの犬は、お迎えした時は生後2ヶ月と少しだったが今日で3ヶ月になった。今月下旬に予防接種の3回目を終えたら、お散歩デビュー出来る予定で今から楽しみで仕方がない。私が歩くといちいち付いてくるので踏んづけないように気をつけないといけないが、とてもかわいらしい。興奮していると私が止まった事に気がつかず走って追い抜いて、慌てて引き返してくるのがまたかわいい。今日はお出かけ用のケージに入って練習しているが、気に入ってくれるだろうか。首輪は最初気になるみたいでしきりに後ろ足でぽりぽりと掻いていたが、今は気にならなくなったらしくて安心した。

 きっと人間の子供もこんな感じで、日に日に変化があってあっという間に成長するのだろう。うちの犬を見ていると、ふとした瞬間に面白いことが起こったりお思いがけないかわいらしい仕草をしたりする。あ、と思って写真やら動画を撮ろうとしても、ほんの一瞬の出来事な上にじっとしていないからシャッターチャンスを捉えるのはかなり難しい。体も中身もどんどん成長して変化する今の時期に、うちの子の全てを、今しかないこの瞬間を記録したいという願望が芽生えてくる。世の親御さんもこんな気持ちなんだろうか。

 忘れない記憶がある。小学生の頃、8ミリビデオはかなり普及していてほとんどの家庭に備えてあった様に思う。運動会も学芸会も、8ミリビデオを構えた父兄の姿は当たり前にあった。一方で我が家は、普通のカメラだけだった。なんでうちにはビデオがなかったんだろう。デジカメやケータイで静止画も動画も撮れるようになったのはもう少し先の話で、スマホひとつでかなり高画質の画像も動画も記録することができるようになったのはどちらかと言えば最近の出来事だ。もし私が親だったら、今ほどの技術がないあの頃であっても、子供の記録を残したくてビデオを撮りたいと思うだろう。当時存在した8ミリビデオを買おうと何らかの努力をするだろう。その立場に立ったことはないけれど、新しい仲間への愛おしさがそう思わせる。

 運動会のリレーの時、父は写真を撮って現像した。得意げに出したその写真に限ってパノラマだった。細長い写真の中心に写っていたのは、私ではない違う子だった。私はその子を追って走っていて、横に長い写真の左端に見切れていた。前のリレーと違う色のはちまきをしていたから間違えたらしいが、それにしてもあのパノラマ写真を見た時のショックは今でも鮮明に覚えている。父はごめんともなんとも言わず、振り返ればこれはいつもの事だった。

 うちの子はやんちゃで、ぞうさんのおもちゃがお気に入りである。ぬいぐるみタイプだけではなく、100均で買った緑色のじょうろタイプのぞうさんにも日々戦いを挑んでいる。しかし、緑色じょうろぞうさんはプラスチックなのでなかなか噛めないらしく、唸りながら苦戦している。いつか勝てる日がくるのだろうか。私はうちの子をしかと見届けたい。

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