ドラマ『ゴッサム』贖いの賜物
あらすじ
ゴッサム・シティ警察新入りのジェームズ・ゴードンはベテラン刑事のハービー・ブロックとペアを組み、トーマスとマーサ・ウェインの夫妻殺害事件の解決を目指す。捜査中、ゴードンはウェイン家の執事のアルフレッド・ペニーワースに育てられた夫妻の息子ブルースと知り合い、殺人犯逮捕をより一層決意する。道半ばでゴードンはフィッシュ・ムーニー、ドン・カーマイン・ファルコン、サルヴァトーレ・マローニといったゴッサムのマフィアたちとかかわり合いになる。最終的にゴードンはブルースと友人となり、後にバットマンとなる少年の未来を形作る手助けとなる。
監督:ダニー・キャノン
キャスト:ベンジャミン・マッケンジー
【贖いの賜物(あがないのたまもの)】
ジョン・ドーソンの説で、神がそれぞれの都市に与えた賜物のことで、ドーソンは、すべての都市には、その都市を通して主が成し遂げようとしている尊い御計画が、いったいどのようなものであるかを暗示する賜物が注がれているという。
悪魔は何も創造する事ができないので、神が与えられた贖いの賜物を悪用して罪を犯させる。
悪魔は都市だけでなく、人間に与えられたよい賜物も悪用して罪を犯させるという。
ドーソンは神は各都市に天使を配置したとし、その例にダニエル12:1、第二列王記6:16-17をあげる。
ゴッサムシティのモデルはニューヨーク。
ニューヨークに与えられた贖いの賜物は「自由と希望」
ニューヨークをモデルとしたゴッサムシティも同じ贖いの賜物を神に賦与され、それを守るために配置された天使のメタファーがこのドラマの主人公ゴードンだと思う。
ゴードンがゴッサムシティの天使長として街の「自由と希望」を守り、その活躍を邪魔するヴィラン(悪魔)たちがこの贖いの賜物を利用して、成功の誘惑と残忍さ、絶望を街に与える。
ゴッサムで繰り広げられる天使と悪魔の戦いを経て、街は『最後の審判』のような大破局的な展開を迎え、最後に救世主バットマンがゴッサムシティに誕生する壮大な物語。
ドラマのシーズン2では5つの名家がゴッサムシティを創成した歴史的背景が描かれていて、バットマンを輩出したウェイン家(ウェイン産業)が実質的な主として街を管理し、ゴッサムシティをスクラップ&ビルドする権利と責任も彼らにある。
ゴッサムシティで暮らす人たちの生態系は主であるウェイン産業の思惑によって決まり、大部分の人たちは利用され、割に合わない目に遭遇した者はヴィランになってしまう。
全てはパワーゲーム。
主には理念と計画だけがあって、その行動に善と悪の分別はない。
救世主バットマンは善に加担するが、そこに自由意志は感じられず、主である立場上背負った使命として、常に迷いながら自己実現を目指す様子が描かれる。
僕は神も救世主も、その正体は孤独な愛着障害者の成れの果てだと思っている。
自分が愛されるために世界や街を創り、そこに住む人たちに愛されるように彼らを管理して自己実現を目指している存在。
「自分が導かなければ彼らは哀れな子羊で、自分が住みやすい世界や街を創らなければ、彼らだけでは到底生きていけないだろう」
「自分の創った世界や街が彼らを幸せにし、彼らも自分を愛するなら、この世界や街を永続的に守っていきたい」
「それが無理なら破壊して、もう一度創世しよう」
これが神の思惑と計画であり、救世主の内面世界だ。
アメリカはプロテスタントが新天地を目指して建国したキリスト教世界。
バットマンは建国神話がないアメリカが生んだ新たな聖書、救世主物語だと思う。