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ムーンフォール 2021年アメリカ

ムーンフォール

出来立て最新作、そしてインディペンデント映画史上最高額の制作費1億4000万ドルが投じられたバリバリのSFディズアスター作品が、Amazon Primeにラインナップされたので、久しぶりに映画鑑賞させてもらいました。
7月8日に発生した、今後日本の教科書に絶対乗るであろう安倍晋三元総理大臣銃撃事件の後は、なかなか映画感想、読書感想をブログや、ネットカラオケのSmuleで続行中の、年度別洋楽カラオケ歌いまくりプロジェクトも、なんとなく中断したままでしたが、そろそろ通常モードに戻らせてもらおうと言う気になりました。
国際社会の中では、ダントツ落ち目の今の日本では絶対不可能な、贅沢な製作費をつぎ込んだ羨ましい限りの大作ですので、もちろん、映画はそれなりでした。
これだけお金をかければ、今時はこんな映画が作れるんだなと感心しきり。
しかし、これだけの巨額の製作費をつぎ込んだ作品は、当然コケるわけにはいかないという事情があるので、そうそう攻めた脚本は却下されないでしょう。なかなか冒険は出来ないものだと想像します
そうなると、目玉となるスペクタクル・シーン以外のドラマ部分は、どうしても、オーソドックスになりがち。
そんな事情を反映させた本作の脚本は、サイド・ストーリーとしては、万人ウケする定番の人間ドラマが
描かれることになります。
もちろん本作の肝は、軌道をはずれて地球に接近し始めた月が、地球を壊滅状態にしてしまうというローランド・エメリッヒ監督お得意の、CGを駆使した圧倒的なディザスター描写なのですが、そこに並行して描かれるサイド・ストーリーは、やはり感動盛り上げエピソードの定番として、「ありがち」な感が否めませんでした。
これに、これもまたド定番の、派手なカーアクション。
今時の全世界公開を意識した映画における登場人物たちの人種的多様性にもバッチリ配慮。
これだけ盛り込めば、少なくとも絶対に大コケすることはないだろうという保険要素がたくさんかかっているような作品に思えてしまいました。
もちろん、黒澤明監督の「七人の侍」のように、カツ丼の上にハンバーグを乗せて、カレーをかけたような「ごちそうさま」的な作品でも、一つ一つの要素が絶妙に絡み合ってこちらの味覚を刺激してくれれば、その相乗効果により大傑作に昇華するような作品にもなり得るのですが、果たしてこの作品はどうであったか。
人間ドラマを描かずに、月の接近による地球の異変だけを描いては、NHKの教養番組になってしまいますから、それは難しいところ。
名監督と言われる人たちの中には、最低限のスペクタクル・シーンでも、人間ドラマや伏線を巧みに描いて、最大限の効果をあげる名手もいます。
そういう映画にはまた、それなりの映画の楽しみ方もありますが、本作のような圧倒的な破壊映像で観客を引き込もうというのかウリの作品における人間ドラマの盛り込み方は難しいところ。
ゴジラ・シリーズにおける本多猪四郎監督のような、その辺りのバランスを熟知した映画づくりは、子供の頃にはなかなか気がつきませんでしたが、この年齢になってみれば「うーん、わかっている」ということが理解できます。

映画というものは、お金をかければかけるほどかけるほど、いろいろなしがらみに縛られて、物語としては無難にならざるを得ないもののようです。
そんな中にあって、月が実は、巨大な人工物だったという設定は、かなりぶっ飛んでしまいましたが、そんな「とんでも」設定も、あれだけのスケールで描いてくれれば、映画的説得力は産んでしまうというあたりは、やはり、それなりの製作費をつぎ込んでいる映画ならではの力技です。

ローランド・エメリッヒ監督は、かつて日本の誇るモンスター「ゴジラ」をハリウッドでリメイクしてくれましたが、もしよろしければ、今度は「日本沈没」なども検討してみては。
その意味では、本作が好評を得ることよりもまず、製作費くらいは軽々と回収する高収益を上げる作品になるようお祈りする次第。

エメリッヒ監督のツキが落ちませんように。

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