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PLANET OF THE APES/猿の惑星 2000年アメリカ

さて、ディズニープラス月間とさせて頂きました今月ですが、続きましては本作を鑑賞させてもらいました。

本作は、言わずと知れた1968年公開のSF映画の傑作「猿の惑星」のリメイク。
しかし、本作監督のティム・バートンは、リメイクといわれるのを嫌がって、自ら「リ・イマジネーション」作品と公言しています。
「再創造」という意味のようですが、前作を見ているものとしては、これはもうどちらでもよろしい。
「猿の惑星」は、公開当時大ヒットし、後にシリーズ化されました。
これは全五作となりますが、続編まではおつきあいさせてもらいました。
しかし三作目以降は、製作費も尻窄みになっていったのはわかったので、内容は推して知るべしとの判断。
見ていません。
ただし、衛星放送でこの旧シリーズはオンエアされましたので、とりあえ全作品は録画済み。
いずれ鑑賞するつもりです。
さて、今回鑑賞したのは、その旧作シリーズではなく、2000年に公開された新シリーズの一作目です。
なるほど、「シザーハンズ」や「バットマン」を撮ったティム・バートン監督なら、触手を伸ばしてもよさそうな作品ではあります。
製作会社も、前作大ヒットの保険と、監督の実績もあるので、この企画ならハズすことはないだろうと判断したのでしょう。
それにしてもここ最近はリメイクが目立ちます。
スピルバーグ監督までもが、ミュージカルの「ウエストサイド物語」をリメイクしています。
なぜリメイク映画がこうも幅をきかすのか。
その大きな理由が、映画の製作システムが変わってきたことだと聞いています。
映画製作に巨額な制作費を投資するのは、今のハリウッドでは、映画制作会社ではなく、巨大なファンド会社。
つまり、ファンドはお金の専門家集団で、映画の専門家たちではないということです。
ですから、彼らにとっては、過去のデータが判断材料の全て。
どういうスタッフとキャストを集めて、どんな作品を作れば映画は当たるかといういう経済論理でしか、映画を判断しません。
そこにどんなに優れたオリジナル脚本が提示されても、映画の専門家ではない彼らには、それを正当に評価する能力はなく、多少鮮度には問題があっても、過去にヒットした作品のリメイクで、二匹目三匹目のドジョウを狙う方が、コケるリスクは少ないだろうと判断するわけです。
僕も含めて、自由の女神に腰を抜かした、前作からの映画ファンたちを、どう納得させるか。
とにかく、細かいディテールは違うにせよ、物語進行はおよそ見当がついているファンたちを、どう映画の中に、再び引き摺り込むか。
ティム・バートン監督には、その辺りの勝算と自信はあったのでしょう。
当然前作からは、38年もの時が流れていますので、SFXはそれなりの進歩を遂げています。
猿の特殊メイクの進歩もそれなり。
前作で、人間の味方となるジーラに当たるのが、雌猿のアリ。
演じたのは、ティム・バートン監督のパートナーでもあるヘレナ・ボナム=カーター。
前作にはない新キャラとして、人間を追い詰める猿の将軍セードを演じたのがティム・ロス。
前作のキム・ハンターやロディ・マクドゥオールもそうでしたが、ちゃんとした俳優なのに、猿メイクのせいで、観客には俳優としてのイメージが伝わらないのは、可哀想といえば可哀想です。
前作の主役はチャールトン・ヘストンでしたが、なんと今回も出演してました。
セーどの父親ゼイウスがそうだったのですが、これは、エンドクレジットを見るまで気がつきませんでした。
オールドファンとしては不覚。すぐに見直しました。
ワンシーンのみの出演でしたが、確かに、アップ多用で、それなりのリスペクト撮影だったような気がします。
撮影当時77歳。ご立派。
それからなんと、前作でノバを演じたリンダ・ハリスンも、人間の女性役で出ていたんですね。
猿メイクではないのに、これも完全に見落としています。
もう一度確認しておきます。
なかなか、心憎いキャスティングをされますな。

「ジャングル・ブック」の感想文で、「不気味に谷間」の話に触れましたが、ティム・バートン監督は、過去作品のラインナップを見ても分かるように、この心理現象を避けるというよりも、あえて狙いに行くようなところがあります。
そしてそれを、独特のエンターテイメント世界にするのが彼の映画表現における真骨頂。
一歩間違えば「気持ち悪い」になりかねない世界を、ギリギリのところで、不快感にまではしないバランス感覚が絶妙です。
そして気がつけば、見ている方は、その悪魔的な演出の毒気に取り込まれてしまっているわけです。
ですから、この人の作品にリアリズム目線のツッコミを入れるのは野暮というもの。
前作のノヴァにあたるディナを演じたエステラ・ウォーレンだけが口紅をしている辺りは、やや気になりましたが何も言いますまい。
映画途中からは、自由の女神オチを、どう「リ・イマジネーション」してくるかと楽しみにしていましたが、なるほどなるほど、あの方を持ってきましたか。
この辺り、リメイク作品には、何をやっても衝撃度だけは前作を越えられないという宿命がありますので、あえてそこにお得意の「毒気」を盛り込んできたあたりは、この監督らしいところです。

前作が大ヒットしていた頃、たれが言ったかこんなジョークがありましたね。
「この映画、ちょっと匂わないか?」
「そりゃそうさ。サルノハ、クセエ。」

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