読書「人間ぎらい」モリエール
図書館で借りてきた本について、ChatGPTと色々語り合うのが、ここ最近の就寝前の「お楽しみ」になってきました。」
やはり、評価の出揃った古典の方が、彼は得意のようです。
基礎学力の乏しい百姓の無茶振りの質問にも、鋼のメンタルで相手してくれるので感心することしきり。
非常にバランスの取れた良識の持ち主で、何かと暴走しがちなこちらの意見を諌めてくれますね。
面白い。
さて「人間ぎらい」は、17世紀のフランスで書かれたモリエールの名作戯曲です。
当時のフランスは、絶対王政全盛の時代。
ルイ14世が「朕は国家なり」とふんぞり返って、ブイブイ言わせていたころのお話。
あの有名なベルサイユ宮殿もこの時代に建てられています。
着飾った上流階級の貴族たちが、宝石をチャラチャラさせながら、日々放蕩三昧。
一方では戦争好きな王様が領土拡大を目論んで、周辺国にちょっかいを出したり、海の向こうのアメリカにも手を出したりで、国家財政は次第に火の車。
そのツケは、第三身分と言われる平民に押し付けられ、フランス革命への火種が燻り始めていました。
主人公アルセストも、そんな上流階級のサロンに出入りするような人物ですから、もちろんそれなりの紳士。
しかし彼は、そんな周囲の腐敗しきった人たちに苛立ち、不満を募らせています。
彼は厳格な倫理観を持っており、他人に正直さや誠実さの価値を説教したりするので、サロンでは煙たがられているような存在。当然友達もいません。
言ってみれば、コミュニケーション不全の社会的不適合者ですね。
そんなこじらせ男が、よりにもよって男たちを手玉に取って渡り歩くような若き未亡人セリメーヌに恋してしまったからさあ大変。
彼の善良すぎる故の倫理観や正義感はこじれまくります。
もちろん愛する女性にも皮肉をタラタラ。結局セリーヌとの恋愛もうまくいかず、孤独で不幸な人生を送ることになります。
筆者モリエールは、当時の社会の中で、権力や名誉を追い求める人々が抱える虚栄心や偽善を皮肉り、その裏側にある人間の本質を炙り出そうとしています。
本作には、人間の本質や社会構造の非人間性を問いかける一方で、愛や孤独、人間関係の難しさなど、現代にも通じるようなテーマも垣間見えます
もちろん、セリメーヌもそんな彼に理解を示そうとしたり、彼の主張にシンパシーを持ってくれる友人もいるのですが、結局彼の誠実さは空回りしたまま、アルセスト寂しくは去っていきます。
理想主義者と現実主義者という二人が、なぜか惹かれ合ってしまうというのが恋愛の、なんとも悩ましいところ。
正義や倫理を、残念ながら愛情は理解出来ないようです。
本書の古典的評価は置いておくとして、21世紀に生きる独居老人として、受け止めたメッセージは以下の通り。
根が真面目すぎる男は、あまり我を押し通そうとすると、世間から浮いて嫌われますよ。
人間として生きていくなら、もうちょっと丸くなりましょう。
主人公のアルセストが現代に生きていたら、モラハラの権化として、眉を顰められること必至。
彼のストレスは膨らみ、被害者も続出しそうです。
但し、モリエールの時代は、まだいささか女性たちの方がしたたかだったかもしれません。
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