「男といるほうがラク」と言う女を好きになった男の末路
吾輩は猫を被るニンゲンである。名前はぽん乃助という。
「男といるほうがラク」と言う女性は、多く存在する。
街の中で、女性の集団に一人だけ男性が混じっているという構図はあまり見ないけど、男性の集団に一人だけ女性が混じっているという構図をよく見かける。
なぜ、急にこんなことを話したかというと、私は「男といるほうがラク」と言う女性と多く付き合ってきたからである。
決して、そう言う女性を否定するつもりは無い。逆に、私もそういう女性が魅力的だと思って、付き合ってきたからだ。
男性趣味にも楽しく付き合ってくれるし、自然体で付き合えるというのが、私としても心地よかった。
ただ、私はそうした女性と付き合ってフラれてのループを繰り返した結果、恋愛観にバグが発生してしまったわけである。
私はこのループを脱するため、心を抉って(えぐって)考えることにした。
◇
私は男兄弟で育ち、元々の気質もあってか、異性を前にすると変に意識をしてしまいやすかった。
なので、中学生までは好きな子がいてもアプローチできずに、他の男子が付き合うのを指を咥えたまま見ていた。
そんな私は、高校生のときに体育会系の部活に入り、客観的には垢抜けたらしい。俗にこれを、「高校デビュー」と言う人もいるかもしれない。
自分で言うのはなんだが、高校生のときは、人生で最大のモテ期だった。だけど、その時からだった。私の恋愛観が歪んでいったのも…。
中学生までは女子と男子の垣根が、進撃の巨人に出てくる壁のように高かったけれど、自由な校風で帰国生も一定数いる高校に通ったため、女子と男子の間の垣根はベルリンの壁の崩壊のように無くなった。
私はそれでも、自分から女子に話しかけることができなかった。けれど、女子から自分に話しかけてくることが増えた。
特に、「男といるほうがラク」と言っている女子とは、気軽に話すことができて、必然とそういう人が好きになっていった。
私は運が良かったようで、高校のときは、好意を伝えたら好意を返してくれて、100%の確率で付き合えることができた。
文化祭のときに2人きりになったときに付き合って、自転車の2人乗りで帰るという、当時ネットミームだった「リア充爆発しろ」といわれるような経験もあった。
ところが、私は付き合ってからすぐに、相手に好きな人ができて、フラレることが多かった。
「君は悪くない、私が悪いの。」
みんな口を揃えてそう言っていた。
フラれるときは他の男性が好きになったとは言われず、後日談として、すぐに相手が他の人と既に付き合っていることを知り、浮気だったのかそうでなかったのか、このグレーゾーンにモヤモヤしていた。
この「付き合って、すぐフラれる」のループは、社会人になってからも続いていた。
私はフラれた後、「浮気許すまじ!」という他責の感覚を心の中に持つことで、自分の精神の平穏を保っていた。
でも、本当は自責すべきだったんだ。私には、そんな簡単なことでさえできないくらい、心が小さかったのだ。
では、私は付き合ってから、何故すぐにフラれていたのだろうか?
理由を心を抉って考えてみよう。
◇
私は、「男といるほうがラク」と言う女性と付き合うことが多かった。
そうした女性は、付き合ってからも性別を分け隔てなくいろんな人と接するわけである。
そう考えてみれば、「男といるほうがラク」と言う女性にとって、今付き合っている自分より好きな人が現れる確率は、高いに決まっているのだ。
でも、私はその事実を見ないふりをしていた。
「多くの男性から自分を選んでもらえたのは、愛が深いからだ。」
純愛という幻想と、自分が選抜されたという優越感に浸っていたのだ。
就職活動や転職活動は、選抜されるまでが大変だけれど、でも働き始めた後の方がもっと大変だ。
そんな当たり前のことを、私は恋愛でできなかったのだ。
付き合う相手は、メイクや髪型、服装を整えて、自分好みになるように努力する。
自分は、目をハートにして相手のことを褒める。で、おしまいだったんだ。
付き合ってきた相手に、自分がギブできたことはあっただろうか?
自分のことをもっと好きになってもらうための努力はしてきただろうか?
それができない男が、見放されるのは当然なんだ。
純愛という幻想を現実にするためには、当たり前の努力が必要だったんだ。
思えば、私はこれまでも何か結果を得ると、そこに安住してしまっていたような気がした。
フラれるたびに刹那的には傷ついてきて、恋愛はおろか、女性が怖い存在にしか思えなくなることもあった。でも、それは自分が変わろうとすることから逃げていたんだ。
今思えば、自分の欠陥に気づかせてくれて、一段と自分を強くさせてくれた。
これが、「男といるほうがラク」と言う女を好きになった男の末路だ。
これからも、恋愛に限らず、見放されて傷つくこともたくさんあるだろう。
それでも、自分を強く持って、私は前に進んでいきたいと思う。
私は鏡に映る自分の顔を見て、涙とともに、縋っていた過去を拭った。
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