NHKと民放は急に競争原理にさらされ、衰退の一途を辿るというお話
ついにBBCの受信料が世界的なニュースとして取り上げられる時代になりました。公共放送という強制課金権を持つシステムに対する批判が今後表だってくるのかもしれません。
今後批判の的になる「公共放送」
※2月17日追記
ついにテレビという機械の販売阻害要因にまでなったとまで指摘されるNHK。しかし論理的には当然の帰結。ここまで成功体験が業界で認知されると今後、アンチNHKテレビはますます増えますね。ネットさえあれば課金するようなことも策としてあるみたいですが、それはさすがにどれだけおとなしい日本国民でも怒ると思うので、敗色はどんどん濃くなっていきますね。
このような例を引用しなくとも昨今はずっと「公共放送が強制的に国民に課金できるシステム」に対するエンドユーザーの不満は高まり続けていると思われます。
「強制課金」に対する不満自体は目新しいものではありません。-「NHKの集金から逃れられる方法」はネットが普及し始める頃から議論されていたテーマでした。しかし私の見立てですが、今後は表立って、公共放送の在り方がより喧しく取り沙汰されるようになると思います。それには、Netflixを始めとする課金動画コンテンツの事業拡大が挙げられます。
NHKの課金システムは以前から不評だったものの、大規模課金動画媒体としては昭和・平成を通じて唯一のコンテンツであり、他に類似のサービスはなかったために、どこかに視聴者の中に「反感はあるものの、そんなものかとなんとなく許容している」意識はあったと思います。唯一であるものは比較対象がないが故に、反感が収束しない。結果、どこかあきらめに近い感情でNHKを視聴者許していたと思います。ところが、サブスクリプションという形式で動画を視聴させるNetflixを始めとするコンテンツが登場して以来、「サブスクリプションで映像コンテンツを見る」という観点から、NHKの受信料という名のサブスクリプションのコスパが問われる時代になってしまったのです。ついに比較対象が広く世間一般に認知されるようになりました。
全裸監督・イカゲーム等を始めとするオリジナルドラマとアニメが豊富にあるNetflixと、スターウォーズやマーベルが見放題のディズニープラスがしのぎを削る中、同じ地平で大河ドラマや紅白に充当される視聴料のコスパが比較検討に入り、当然のことながら世界的なコンテンツを前にして、ドメスティックなシニア層に向けたコンテンツが多いNHKは若年層にとっては「コスパが悪すぎるサブスクリプション」であり、にも関わらず「退会の選択肢がない強制課金コンテンツ」であることから、今後ますますヘイトが募っていく対象となることでしょう。比較対象が生まれると言うことは、目に見えない不満が顕在化することと同義です。
NHKは今後、自身のコンテンツが有意義で費用対効果があることをNetflixを敵に回して上で、説明責任を果たすことが求められると思います。それは苦しい戦いですが(なんせ敵のコンテンツ力が桁違いなので)、視聴者が比較検討をする以上、避けて通れない戦いだと思います。
保護されてきたテレビ業界
実はNHKのみならず、日本のテレビ業界全体が競争に直面する事態になっています。「え、いままで熾烈な視聴率競争をやってきたじゃないか」という方もおられるかもしれませんが、全テレビ局はキー局同士で視聴率獲得競争を行ってきたのと桁違いに苦しい戦いをワールドワイドな映像コンテンツサービスと繰り広げているのです。これには日本の放送免許を巡る利権の問題もあるかと思うので、ボトムの部分も論じながら、現在の「テレビ局の戦い」について触れたいと思います。
そもそも日本において、テレビ放送の事業に新規に参入することは実態的にはほぼ無理だと考えられています。
上記のウィキペディアの解説にあるように、日本のテレビ局は既得権益の下、新規参入の業者との競争にさらされることもなく、極めて閉鎖的な業界の中で事業を展開してきました。
上記サイトを見てもおわかりの通り、地上波テレビ局の最も新しい参入は1999年で既に23年前、現在のキー局と系列局の構造はバブル期前後の90年代前半に完成した後は、全く姿形を変えず現在に至っています。市場規模から考えると、30年間も業界の勢力図やゲシュタルトが変化していないのは他の業種にはありえないことで、如何に放送免許の下、業界全体が法的に過保護に事業を継続してきたかが明らかだと思います。このような中でのキー局同士の視聴率競争など、国内外を問わず常に新規のチャレンジャーが来る他の業種からしてみれば、「競争ともいえない身内の喧嘩」レベルの話だったのではないかと考えています。
しかしこの放送免許が張り巡らした「新規参入バリア」を乗り越えるコンテンツサービスがネットの発達により世界規模で登場しました。それがYoutubeであり、Netflixです。それまでテレビは放送免許という印籠の下、①情報の即時性の担保②随時大容量の動画を送信するできる運用上の信用性③娯楽性を同時に兼ね備えている唯一のインフラとして覇権を握っていましたが、ブロードバンドの登場以来、ネットサービスもこの3つの要素を具備するようになり、「免許を持っている」かどうかは意味をなさないようになりました。つまりはテレビ業界が脈々と受け継いできた「新規参入バリア」はいとも簡単に乗り越えられ、テレビ業界は動画配信サービスの挑戦を受けざるを得ないようになってしまった訳です。
そのようなわけで、有史以来初めて、テレビ業界は自身の所属する業界内での争いではなく、全くの異業種の異民族の襲来を受けることになっています。この戦いにおけるテレビ業界の活路については皆さんが想像される通りでして、全くテレビサイドの勝ち目が見えてきません。
フジテレビの例が象徴的なのですが、多分に景気の悪い話しか伝わってこないというのが、テレビ業界の苦しさを物語っていると思います。
マジで延命策は無いと思うので、終活が必要かも
https://www.soumu.go.jp/main_content/000777188.pdf
ついには公然と総務省から「このままだとテレビマジで死ぬんじゃね??」と暗に言いたげな資料が提出される始末です。
思えば無理のないことで、テレビ局はあくまでもテレビ業界という内輪の中で試合をすることだけやってきたので、真の意味での競争原理という概念がありませんでした。そんな大甘ルールで闘ってきた自称格闘家がいきなりストリートファイトをやれと言われても何をしていいかわからなく、ひたすらネットコンテンツにハイキックを決められて敗北を重ねている状態だと思います。
なんとかファミーコアとかZ世代向けコンテンツとかを作り出して異民族の侵入を食い止めようとしていますが、果たしてどこまで効果があるのか。
もっとも象徴的だったのは、2021年大晦日の紅白歌合戦で、従来のシニア視聴者層を削り落とし、テレビの前には座っていないだろうZ世代向けのコンテンツを盛り込み、LGBTへの配慮とけん玉ギネスもつけときました、みたいな「ごった煮闇鍋」状態に仕上げたのを見て、「ああNHKは、ひいては日本のテレビはもうだめだ」思ってしまいました。
NHKは本来なら、公共放送なので、ファミリーコアとかあまり気にする必要はないはずです。にも関わらず業界全体がそこを意識するあまり、NHKすらも影響力を示すために、そこに注力せざるをえず、結果どっちつかずの何をしたいかよくわからない歴代最低視聴率のクソ紅白を作り上げてしまったことに、この業界の断末魔が聞こえたような気がしました。
最も深刻なことは、ネットコンテンツはまだまだ既存のテレビ業界のコンテンツを「喰える」伸び代があるのに対して、テレビ側はもはや「出涸らし」もないということですね。過激なコンテンツを作ろうにも放送倫理などという縛り条件を課してしまったが故に、当たり障りのないものしか作ることができません。またテレビ局は平安時代の貴族のように上前だけをはねて、制作を下に投げつけるという傍若無人なコンテンツ制作体制をとっていたために、自身で活気のあるコンテンツはもはや作れないようになっています。制作会社及びタレントは今は様子見の状態ですが、ネット配信の方が稼げるとなった場合は、テレビというプラットフォームに見切りをつけるのは避け難いことかと思われます。テレビにはもう勝ち目はありません。
NHKの今期大河ドラマ「鎌倉殿の13人」は大変に面白いドラマです。私も楽しんでいますが、もし私がNetflixの日本法人関係者で、シニア層の取り込みのために仕掛けを施すなら、「大河より面白い歴史ドラマ」を
Netflix上に作ってしまうという企画書を書くのではないかと思います。バラエティでもスポーツでも食い詰めている日本のテレビ局より予算をつけてタレントと制作会社ごと引き抜いてしまうのは容易なように思います。
テレビ業界が残念に思うのは、もはや争う術がなさそうなところです。新聞の方が一足先にお亡くなりになりますが、テレビも今の売上規模やコンテンツ作成は絶対に維持できません。その頃にどんな姿になっているのか今の私にそこまで想像することはできませんが、かつてのテレビの栄光を知るものとして、来るべき未来が酷すぎるので、前もって哀悼の意を捧げることといたします。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?