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【感想】「シン・ゴジラ」が無かった世界の「シン・ウルトラマン」が見たかった件

【この文章は「シン・ウルトラマン」のネタバレを含んでいます】

率直な感想

「シン・ウルトラマン」を見てきました。感想としては、ウルトラマンの文脈を知っていた人であれば十分に楽しめたのではないかと思っております。しかし「S評価」かと言われればそうではないかもしれません。

「シン・ゴジラ」があっての「シン・ウルトラマン」

「シン・ゴジラ」の見どころの一つに、やはり現在の日本の政治・官僚・防衛システムのなかで、人類に危害を加えてくるモンスターであるゴジラに如何に対峙するかという思考実験があったと思います。その内容はよく練り上げられたもので、空想のゴジラというものを主題におきながら、「リアル感」が演出されており、エンターテイメントとして非常に面白いという評価をもった方も多かったろうと思います。「シン・ウルトラマン」でもこういった傾向は濃厚に継承され、従来のウルトラシリーズの文脈にはそこまでの存在感のない国際政治・政府・官僚・防衛といった要素は重要なファクターとして登場しました。「シン・ゴジラ」ではこれらの要素はプラスに作用したと思います。しかし「シン・ウルトラマン」では私は必ずしも有効に作用しなかったと思います。

「シン・ゴジラ」の世界観を「ウルトラマン世界に」適用させるのは…

「シン・ゴジラ」で政治・防衛などの「リアル要素」がプラスに作用し、「シン・ウルトラマン」ではあまりプラスに私が思えなかった理由は2つあります。

一つには、「リアル要素」を乗り越える「ファンタジー要素」が物語の中に次々と登場したことです。「シン・ゴジラ」ではなんとか人類の叡智でゴジラを攻略するところにカタルシスを感じましたが、「シン・ウルトラマン」の中に登場する人類は、「神に近い存在・ウルトラマン」とこれまた「神に近い存在の宇宙人」に翻弄されている描写が強く、「リアル要素」が「リアル感」を演出する以上に、「ファンタジー要素がファンタジー感」を出してしまったのではないかと思います。結果論からしてみれば、ウルトラマンという物語は、ゴジラほどにはリアル要素を受け入れる容量がなかったのではないでしょうか(無論、ゴジラも初代以外になってくるとファンタジーが強くなるので、初代のみに限った話ですが)?つまりは「シン・ウルトラマン」は「シン・ゴジラ」路線でいくのには少し無理があったのではないかというところが、突き抜けた評価にならない理由かとおもいます。

二回目はどうしても印象が薄い

二つ目には、「シン・ウルトラマン」のリアル路線は「シン・ゴジラ」で既視感があるものだということです。「シン・ゴジラ」のリアル路線は多くの人に新鮮な印象を与えました。

時の首相が引用したくなってしまうぐらいには、人々の心を捉え、インパクトを残したんだと思います。それぐらい目新しさがあったと思います。しかし、残念ながら後を追ったものというのは開拓者程評価を受けません。何でも一番先にやったものが長く語りつがれ、その後を追ったものというのは印象が薄くなるのは仕方がありません。「シン・ゴジラ」が開拓した路線を「シン・ウルトラマン」が追ったケースにおいてもこれは言えるのではないかと思います。私の中にも「うーん、なんとなくシン・ゴジラで見たな」という思いがあり、更に「シン・ゴジラはやっぱりよく出来た映画だったな」とも思いました。「シン・ウルトラマン」のことを考えているのに、考えはいつのまにか「シン・ゴジラ」に至ってしまうことに気づき、「シン・ウルトラマン」の印象はやや薄いのが正直な気持ちです。

個人的な想像と意見として

しかしこれはある程度止むをえないのかもしれません。偉大なパイオニアである「シン・ゴジラ」が成功したのに、それと全く異なる味付けをすることは配給会社やその他諸々のステークホルダーとの関係性を考えると商業的には現実的ではなかったかもとは思います。そこそこの路線継承を匂わせて、コンテンツ作りしたからこそ、現在「シン・ウルトラマン」はヒットしているのであり、商業的はそれで正解なわけですから、むやみな冒険は必要無かったのかもしれません。後、僕が好きなウルトラシリーズは「帰ってきたウルトラマン」であり、「ウルトラマンレオ」なので、もっとMATばりの禍特対の地上戦があってもよかったとか、全滅MACばりの悲劇があってもよかったとか、そういう感想を持ちがちな人間です。実はそれほど「ウルトラマン」に対し思い入れがないことも今回の評価につながっているかもしれないことはここに書いておこうとおもいます。

「シン・仮面ライダー」に望むこと

ただ、これだけは言ってもいいのではないかと思うのは、「シン・仮面ライダー」は「シン・ゴジラ」「シン・ウルトラマン」路線の継承はさすがにいらないのではないかと思っています。第一に「仮面ライダー」はそもそも孤高のヒーローであり、人知れず活動する日陰のヒーローなので、政府がどうのこうのという要素をいれるのはウルトラマン以上に無理があるのではないかと思います。第二にはまあ三回目の「シン・ゴジラ」路線はいくらなんでも見飽きるかな、と。ランボーやロッキーやジュラシックなんたらもシリーズは続きましたが完全に見飽き、ゴッドファーザーですらPART3は苦しかったわけで、「シン・仮面ライダー」は切り口はフレッシュなものにしていただきたいという思いはあります。

「真・『シン・ウルトラマン』」

いかんせん、「シン・ゴジラ」があるから、現在公開されている「シン・ウルトラマン」になったのではないかという思いがずっとあり続けます。じゃあ、「シン・ゴジラ」がない世界の「シン・ウルトラマン」はどういう形になってたのかということに非常に興味があります。もっと禍特対は科学特捜隊ぽかったのか?チームとウルトラマンとの関係性はどうだったのか?ウルトラマンと人類の融合はどのような解釈になっていたのか?それが「シン・ウルトラマン」より面白いのか、商業的にヒットするのか、それはわかりませんが、いかんせん見比べてみたいという思いが強いですね。

まあそんなことができる可能性はほぼゼロに等しいので、考察しても仕方がありません。ただの「ないものねだり」です。でもいつかは「シン・ゴジラ」とは無縁の別解釈の「真・『シン・ウルトラマン』」見てみたいですね。


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