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(受信者なし)

今この文章は、メールの下書きに打ち込んでいる。

だからこの文章が保存される時、「下書き」のフォルダに「(受信者なし)」という文字が太字で大きく表示される。この「受信者なし」という言葉、結構気に入っている。

今自分が書いている文章はきっと誰の目にも止まらないだろう。それでいい。だだっ広いこの宇宙の中にわずかな音も立てずに放たれ、そんなことにすら誰も気が付かない文章。それでいい。

もしかしたら「あ、こんな所になんか転がっているぞ」と誰かが足を止めるかもしれない。名前も顔も知らない誰かに受信されるかもしれない。それもいい。

だから宛先は空白のまま。

宛先を決めていないから、送信することはできない。

でも必ず少し薄いグレー色になって押すことのできない紙飛行機のアイコンを1回だけクリックしてページを閉じるようにしている。届かない誰かに、届くかもしれないという不可能な望みを託して。

だからこそ、ありのままにゆったりと。そんな気持ちで綴る、風景と感情の記録。

こんにちは、翠雨です。すいう、と読みます。
彩がなく目に止まらぬ雨でも、受信してくれた誰かの心を潤わせることができたなら。

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