リーダーシップ往復書簡 082

世間話の中などで特に意識することなく日常的に行われている他人に対する人物評は、多くの場合、人間の本質的な評価とかけ離れて、社会的な地位やお金を持っているなど表面的な評価に留まっているように思います。

倫理観、正義感や優しさはもちろんのこと、言葉の重み、度量の広さ、懐の深さ、人間の器・・・リーダーシップに着目していると、会社の規模や役職など社会的な地位とは全く別の尺度である、これらの価値に気づかされます。

他人を評価するなど傲慢なことと感じるかもしれませんが、リーダーには「人をフラットに見ること」が求められます。

リーダーが他の組織のリーダーと会う時にも、このリーダーは信頼に足りるか、経験に裏付けられた言葉の重みがあるか、部下の失敗などに対して寛容さを持ち合わせているか、そして、器の大きい人間かどうかなど、一つ一つを確認することになります。

なぜなら冒頭に記載したような社会的な地位やお金を持っているなど表面的な評価が、中長期的に価値ある判断になり得ないことを私たちは経験則として理解しているからです。

現時点において、大きな決裁権を持つ大企業の幹部社員であったり資金量が豊富なファンドマネージャーであったりしても、「人間力」のある人でなければ、中長期的に成功し続けられる可能性は低いでしょうし、少なくとも一度きりの自分の人生において、長く時間を割いて、信頼して付き合うには足らないのです。

特にリーダーは、フォロワーを率いており、多くの人に対する責任を背負っています。そのため、リーダーは人を見誤るわけにはいかないのです。

優秀な剣士が剣の切っ先が触れ合うまでもなく相手の力量が分かると言うように、「人間力」も、その人のたたずまいや少しの所作や発言で見えてしまうから不思議です。もっと言うと、私たち全員は、子どもの頃から、人間の本質的な評価をし続けているのかもしれません。そのため、社会人になればお互い立場があるので他人の人物評の答え合わせをする機会は少ないかもしれませんが、別々の人がそれぞれ評価をしたとしても、「人間力」という点については評価が大きく乖離することはないように思います。

リーダーは、ついてきてくれるフォロワーのためにも、人を正しく評価することが求められます。その時には、それこそリーダーという役割を念頭において、職業的な懐疑心を持って、表面的な評価を排し、人をよく見なければなりません。

リーダーシップについて疑問がある、質問をしたいという方がいらっしゃいましたら、コメントや個別にメッセンジャーでご連絡ください。

また、コメントも大歓迎です。もし興味ある人がいれば、これを酒の肴に一杯やりましょう!

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【Q.82】
リーダーシップ・スキルを習得するには、どれぐらいの時間がかかるものですか?


<コメント>

私はリーダーシップ・スキルの習得には、少なくとも3年程度の時間がかかるものと考えています。

まず前提として、今までも繰り返し述べてきておりますが、リーダーシップは、決して先天的な能力ではなく、後天的に誰でも習得できるスキルだと考えています。

そして、リーダーシップとは「やり方」ではなく「あり方」です。そのためリーダーシップ・スキルを学ぶには、どうしても方法論を学ぶ座学よりも、実際にリーダーシップを発揮して体得することが必要になります。

私は、ヒーローズ・ジャーニー(英雄の旅)のように、リーダーシップ・スキルを習得するためには、実際に、あなたがリーダーとなって、夢や目標を掲げて、旅に出て、仲間(フォロワー)を引き連れて、目標を達成して、帰還するという経験が必要だと考えています。

今の社会人の時間感覚だと、この旅の出発から帰還まで、少なくとも3年ぐらいを要するのではないかと思います。

具体例として、昨今、非常に話題のベンチャー業界を例にしましょう。創業者が、その他メンバーを誘って、スタートアップ企業を設立します。創業融資を借りて、プロトタイプの商品・サービスを制作します。そこから半年ぐらいかけて、収益シミュレーション、資本政策など事業計画を策定して、エンジェル投資家などから、シードマネーとなる資金調達を行います。資金調達が完了したら、策定した事業計画の実行です。この実行には1年から2年ぐらい時間を要します。ここで2度目の資金調達を行い、株式上場を目指すという選択肢もありますし、ここでM&AでEXITするということもできます。これで3年程度の時間です。

最近の優秀なベンチャー経営者の方々を思い浮かべればイメージがわきやすいと思いますが、このように自らがリーダーシップを発揮すれば、必ずリーダーシップ・スキルを磨くことができると思います。

ヒーローズ・ジャーニーは、主人公の成長物語です。人生100年時代の長い人生において3年程度ならば大した時間ではありませんから、ぜひとも読者の皆さんにも、リーダーシップの旅に出てもらい、リーダーシップ・スキルを習得してもらいたいと思います。



※この記事は、2021年4月24日付Facebook投稿を転載したものです。

株式会社スーツ 代表取締役 小松 裕介
 2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、JASDAQ上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に株式会社スーツ設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。

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