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言葉が通じない

何か月かぶりに音楽を聴こうと思った。
なぜそうしようと思ったのだろう?
推しの動画をYouTubeで見るためにイヤホンをしていた。
ここまではいつも通り。
思考をたどるためにホーム画面を眺めて、音楽アプリを開いたところで思い出した。
断捨離しようと思ったんだ。
もう聞かないであろう、登録アーティストをお気に入りリストから削除しようとして。
ついでに好きなアーティストの曲を再生して、そこで諦めた。
何を諦めたって、音楽を聴くことを中断して他のことをすることを。

キータイプする指にもうまく力が入らなくなって、あぁ、ゆるみきっていると思った。
(バックグラウンド再生ができるので、リストの断捨離は秒で済ませた)
ちなみに好きなアーティストが何人なのかも分からないし、アーティスト名の読み方も知らない。
なんなら、4年近く性別も間違えていた。
(私の好きなアーティストはほとんど歌わない。)

それでも。彼女の音楽を聴いた時の、心臓をくり抜かれたような幸福感。
そこには重力が存在しない。
浮遊感。心臓だけ風船おじさん。
あぁ、この後で買い出しに出かけようと思っていたのに。
あらがうことのできない幸福感がいつまで続くのか、消え去るまではここから動けない。
おそらく1時間弱というところ。
あらがう気などないのだけれど。

「自分はどういう人で」
「何が出来て」
「何が苦手で」
そんなの思考の後付けでしかなくて。
何にひれ伏すほどの幸福感を感じるのか。
それが自分。
常識は通用しない。
言葉はいらない。





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