丸の移籍のお約束

画像1

オールスター戦を前にカープに、ある壁が立ちはだかった。
そこには「正念場」と、肉太で書かれているはずだ。

交流戦に入るまで、カープはぶっちぎりの首位。開幕直後の惨憺たる最下位から、漫画でも恥ずかしくて描けないような勝ちっぷりでリーグトップの座を奪還。絶叫マシンのごとき盛衰曲線を描いて首位に立っていたカープが、勢い余って再び下降へのスパイラルに走りこんでしまったらしい。

交流戦は5勝12敗1分で最下位。
「魔の交流戦」に入れば何が起こるかわからない。つまずくこともあり得るだろうと懸念していたファンも少なくなかったはずだ。
しかし、まさか転倒までするとは思いもしなかっただろう。

それでも最大14の貯金があったから、首位戦線でジャイアンツと肩を並べてはいたが、リーグ戦に入っても仕切り直しとはならず、昨日まで1分をはさんで3連敗。気がつけば首位の背中は4ゲーム先へと遠のいていた。

いきなり開幕スタートに失敗して大借金を抱えたときと、この度の惨状は明らかに様子がちがう。

開幕後にどん底に落ち込んだ際は、(リーグ3連覇したチームが…)というカッコ付きの低迷だった。
「まさか、このまま寝ているわけがない」と、いずれ挽回するであろうことは予想できた。
チームの歯車が噛み合えば、「あとは上がるだけ」だった。

ところが現在進行形の低迷は、前回とは別次元の深刻さを帯びている。
神がかりの快進撃で盛り返したカープは、いま神に見離されたかのごとく拙攻拙守に沈んでいる。

その焦りからか不安からか、チームというか球団全体が、ざわついてきたように見える。
そのさざ波がぶつかり合って怒涛となったかのように、きのうは様々な事態が多発した。

試合はといえば、前回の登板でプロ入り初完封した九里が好投しながらも、バティスタのラッキーな内野安打であげた1点のみで1対3で負け。投打が噛み合わないお手本のような展開で、覇気すら感じさせないまま敗退した。

その唯一のヒットを放ったラッキーボーイのバティスタが、そのまま二軍への降格を告げられ、これから調子を出すはずだったベテラン長野も一緒に下で調整することになった。

思い出したように覚醒して快投を見せていた中村恭平投手は、突然の肘の違和感を訴えて脱落してしまい……。

そして何より驚いたのは、下水流が突然トレードされたことだ。

「右の内野手が欲しい」からのトレードらしいが、交換した選手が右打席に入ったからといって、この事態を覆してくれるイメージは浮かばない。
たぶん、そんなピースは現有戦力の中にもいたはずだ。

下水流の元には、いくつかのチームからオファーが来ていたらしいから、いいタイミングとばかりに、「やってる感」を見せたセレモニーという意味合いもあったのかもしれない。

FA宣言した丸を易々とジャイアンツにくれてやったカープ球団。
ゆめゆめ「丸を出したから」という結論に帰結されては困るだろうからだ。

どちらにしてもカープの屋台骨のタガが外れて、ゆらゆらと母屋が揺れはじめたようだ。
ここに来て、ようやく丸の不在がボディーブローのように効いてきたようだ。

「1番が固定できないのが(勝ちきれない)貧打の原因だ」と首脳陣は理解しているようだが、3番目のタガが外れたから1番から8番までが打線として繋がらないのだろう。
そして繋がらない打線の破綻部分が、たまたま田中の1番にあらわれたと考えられないこともない。

丸をFAで出してしまったとき、この惨劇は約束されていたといったら牽強付会に過ぎるだろうか。


この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

1
手作り野球場DREAMFIELD元管理人。現ホーリー農園オーナー兼物書き。主な著書に『わしらのフィールド・オブ・ドリームス』(メディアファクトリー)、『衣笠祥雄はなぜ監督になれないのか?』(文工舎)、『初優勝』(プレジデント社)など。 —noteでの著書は下の「プロフィール」に
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。