「感染」から学ぶ「観戦」のスタイル

2019.3.17イチロー凱旋

昨日、プロ野球とJリーグが連携して開催した「新型コロナウイルス対策連絡協議会」で、専門家から選手の健康管理や観客への観戦指針が提言された。

そのうちファンやサポーターに向けてのものは、下記のようなものだった。

・発熱、倦怠感など不調時の観戦自粛
・合唱、鳴り物、ジェット風船、ハイタッチなどの禁止
・ドーム内の適切な換気、座席位置や観戦ゾーン把握

このなかで2番目の観戦マナーについては、「ズムスタでファンに定着しているものばかり」。
まるでカープファンを狙い撃ちしたかのような内容になっていて、つい苦笑してしまったのは私だけではないだろう。

冗談はさておき、球団はこの提言を受けてファンには相応の対応を求めるという。
つまり当面、ズムスタでは選手の応援歌は自粛、鳴り物は禁止、スクワット応援はできず、ジェット風船は飛ばせない、という観戦スタイルが実現しそうだ。

あえて「実現」と書いたのは、常日頃からそんな応援を望んでいたからだ。

野球観戦において、白球の動きや選手が躍動するスピード感を愉しむ視覚的な部分は大いに認知されている。
しかし、球音に親しむという聴覚的な部分はないがしろにされているのが現状だ。

いま新型コロナウィルスの感染リスクから無観客試合が行われ、そのテレビ中継を観戦している向きには、すでにお気づきだろう。
そう、投手がボールをピッチするときの「ふむっ」という唸り声だったり、ボールの力を誇示するかのように剛球がミットを叩く乾いた音とか、ベンチから、そしてグラウンド間で選手たちがコミュニケートする掛け声とか、いままで耳にすることがなかった「音」が聞こえることを。そして、そのことに新鮮な感慨を覚えているのではないだろうか。 

いまのいままで約束事として、のべつ幕無しに強要される応援でかき消されていた「音」が、いまスタジアムによみがえり、こだましているのだ。

このグラウンドの「音」に、ゲームの流れとともに自然発性的に生まれる拍手と歓声が重なり、その興奮の中で生まれる一体感…。
それは、えもいえぬ高揚感を生むはずだ。

上の写真は、昨年マリナーズのイチローが凱旋してのメジャー開幕戦が行われた東京ドーム。
ホームもビジターもない試合で、観客はピュアな野球ファンとしてゲームに集中し、好プレイに惜しみない拍手と声援を送っていた。
「なんか変な感じ」と、知人は戸惑ってもいたが、「音」も楽しめるいい雰囲気で観戦できたものだった。

今シーズンは、ウイルスの被害という好ましからざる原因で、思いがけずも応援を強要されない観戦が実現することになりそうだ。
そして、できうれば今回の事態が応援スタイルを再考するきっかけとなってくれればと願う。

しっかし、こんなことになるとわかっていれば、せっかく当たった抽選券だ、ズムスタのチケット、あと4試合分買っておくんだった。(笑)




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