中田翔トレードを私的に解釈してみれば…

過日、暴力事件を起こして自宅謹慎していた日ハムの中田翔が、この20日に突然日ハムから巨人に無償トレードされました。
そして、謹慎期間ももうけられないまま、その翌日には一軍登録されて即代打出場。翌日にはもうスタメンな名を連ね、度肝を抜くホームランを見せつけるという電光石火の成り行きに、野球ファンばかりか世間さまも騒然となっておりますね。

まず、チームメイトに言われなき暴力を振るうという事件を起こした中田選手に、非難が集中しました。その結果として、もう所属チームにはいられない、引き取るチームもなさそうだから、引退もやむなしか、と思われていたところに巨人が「手を差し伸べた」。このことに、今度は賛否両論が沸騰しました。

そうこうしているうちに、当該選手はすぐにベンチ入り、当たり前のように試合に出場。そのことがさらに議論に火を点けることになりました。

少し乱暴とは思いますが、それらの議論・意見をまとめると、おおよそ次のようになるのではないでしょうか。

中田選手の暴挙については弁解の余地なく、最悪引退もやむを得ない。
巨人があえて中田選手に救いの手を差し伸べたことは、よかった。一プロ野球ファンとして感謝したい。
しかし、彼に何のペナルティも課さずに、すぐに出場させたのは如何なものか。

かくいう私も、当初は〝巨人の英断〟に拍手を送りました。
中田選手が日常的に暴力行為を働いていたことは褒めせれたことではありません。しかし、公的に断罪されたのは初めての初犯ですから、更生のチャンスは与えられてしかるべきだと考えたからです。

一方で、トレード即処分解除され、翌日から出場したことについては、それほどの問題意識を持ってはいませんでした。巨人が戦力補強として獲得したのだから、すぐに使うのは当然のことだろう、いかにも巨人らしいじゃないか、と無自覚に理解していました。

それが、現実に中田選手がホームランを打って「巨人の戦力」となったのを目の当たりにして、はたと疑問が湧いたのです。

巨人は中田選手に救いの手を差し伸べたのか?

それとも…

戦力として触手を伸ばしてたのか?

主たる目的はどっちだったのだろうか、ということです。

そういえば、入団までの経緯で腑に落ちないことがいくつかありました。妙に対応にギクシャクしていたり、成り行きにしてはタイミングが良すぎたり…

札幌ドーム・裏外観

ここで、改めて事件の経緯を、ざっくりと整理してみましょう。

8月4日 試合開始前に中田選手がチームメイトに暴力。球団は試合中に退場を命じ自宅謹慎処分を課す。調査の結果、看過できない事案だとして一、二軍にかかわらず無期限の出場停止処分と決定

8月11日 事件を球団が発表。コミッショナーにより出場停止処分に

8月16日 日本ハムの栗山英樹監督が「今後、このチームで(プレイするの)は難しいかな」と放出の可能性を示唆

8月20日 ジャイアンツへの電撃無償トレードが決まる。処分解除

8月21日 一軍選手登録。代打出場

8月22日 長嶋茂雄が試合前に激励に。その〝展覧試合〟で移籍第1号ホームラン

とまあ、これが事件のあらまし。

あらためて眺めと見ての最初の疑問は、事件の発生から発表までのタイムラグです。なぜか1週間もかかかっています。
事件当日には確認も済んで球団の処分は決めているのですから、調査期間であったはずはありません。

さらに事件が公になって大騒動になってからも、しばらく球団側からも栗山監督からもコメントはなく、不可解な沈黙がつづきます。

ようやく栗山監督がコメントしたのは16日になってから。その間、4日もブランクがありました。しかもその内容たるや、前述のように「うちで面倒を見るのは難しい」という、移籍を示唆するものでした。

そして、その4日後には無償トレードが決まるという、こちらは手際の良さに驚くばかり。16日の夜には栗山監督が原監督に(中田を獲ってもらいたい旨)電話を入れ、原監督が「ヨシっ、共有する、という結論に至った(意訳)」と、申し出を快諾したということらしい。

それにしても、いかに強大な権限を持つ原監督といっても中田選手クラスの選手を右から左へ入れたり出したりはできない。球団内での最低限の根回しは必要でしょう。つまり、相応の時間はかかるはずです。

その決定までの4日間を短いと見るか十分と見るかは意見の分かれるところでしょうが、きっかけとなった栗山監督が「日ハムでは難しい」とコメントしての4日後というのは、あまりにもタイミングが良すぎます。

そして、中田選手の出場を待っていたかのように長嶋御大が登場しての〝ミソギ・セレモニー〟です。
栗山監督登場の前は対応がギクシャクしていたのが、あのコメントからはトントン拍子でコトが運んでいるのです。

ここからは、タラレバの個人的な見解です。

「中田選手の暴力事件はトレードに利用された」私はそう推論しました。
たまたま事件が利用されたのでしょうが、彼の巨人への無償トレードには筋書きがあったように思います。

なぜって、そう仮定すればコトの経緯がすんなりと腑に落ちるのですね。
事件が発生してから球団の発表まで時間がかかったのは、当初は球団内で収めるつもりだったからでしょう。

ところがそこに中田選手を放出したい思惑と、かれを獲得したい巨人の思惑が絡みつきながら飛び込んできた。
つまり、巨人への移籍の段取りの調整に要したのがブランクの1週間だったというわけです。

その段取りが決まってから事件を公表。そこからは中田選手が移籍せざるを得ない世論をつくり、栗山監督がコメントで補強。そして、トントン拍子にトレードは決まった…。

つまり補強のためのにトレードを画策したのですから、中田選手を即出場させるのは規定の路線だったのですね。

ここまでは、あくまでも個人的な推測です。
これが当たっているかどうかはさておき…、

中田選手に救いの手を差し伸べたのであれば、これはいかにも力技ですし、戦力として触手を伸ばしたのであれば、いかにもゴーマンで、どちらにしても巨人らしい所業ではありました。




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