父と包丁研ぎ

この歳になって私のしてきた包丁の研ぎ方がやや間違っていることを知る。

両刃包丁を研ぐ時、どちら側を研ぐ時も刃を向こう(身体から遠い方)に向けて持ち、裏面を研ぐ時は持ち手を入れ替えて研いでたのだが、包丁の研ぎ方を紹介してるサイトでは、包丁は常に右手に持って、はじめに刃を手前(身体の方)に向けて研ぎ、次に刃を向こう側に向けて研ぐ…とある。
確かにこれなら、包丁の持ち手は常に右手になるから安定しやすい。(私のやり方だと持ち手が左手になる時にはやや不安定になる)
いつになっても学びは必要だ。

私が包丁の研ぎ方を知ったのは小学生の頃で、父に教わった。
家に大きい砥石があり、日曜の朝などに父が包丁や草刈り鎌などを研いでるのを見かけ、やらせてもらったのが最初だった。(ちなみに、その頃から研いでは使い研いでは使いしていた包丁が実家に残っている。この前見た時は砥がれすぎて記憶の中の姿よりだいぶ細くなっていた。まあ父が亡くなってからは砥がれてないのだけど。)

一人暮らしを初めた以降は、砥石が手元になかったことと、「ステンレス包丁は砥石で研いではいけない」という謎のデマ(おそらくセラミック包丁と混同したらしい)を信じてたため、砥石で包丁研ぎをすることはなく、100均の「ステンレスもOK」と書かれたシャープナーで研いでいた。

10年くらい前、何回目かの引っ越しする時の荷物の中に砥石を見つけた。
以前勤めてたディスカウントストアが倒産した時、倒産セールで売れ残ったものをもらったものが、何度かの引っ越しをくぐり抜けて残っていたのだ。それを見て思った。
「シャープナーの中に付いてるのも結局砥石だよね…なら砥石で研いだっていいんじゃん!」
で、早速切れ味が落ちてたステンレス包丁を、父親に教わった研ぎ方を思い出しながら研いでみたのが包丁研ぎ再開の最初だった。
それから時々、その砥石で包丁を研いでいる。

私がやってた研ぎ方が、父に教わったやり方だったのかどうかはわからないが、包丁研ぎを教わるシーンはたまに夢に見るので、私にとっては印象深い体験だったことだけは確かだ。
食器洗いの後、家にある包丁を(フルーツナイフまで)新しい研ぎ方で全部研ぎ、ついでに切れ味が微妙だったキッチンバサミも研ぐ。
包丁を研ぐのは割と好きだ。無心になれるのがよい。全部研ぎ終わった時の寂寞感も悪くない。

あの頃の父も、包丁を研ぎながらこんな風に感じていたのだろうか。こどもの日にそんなことを考えた。

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