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自作コンピのつくりかた(長文記事)

もう20年近く自作コンピと称するものを作ってる。2000年代前半くらいまではCD-Rに焼いたりもしてたけれど、itunesが一般的になってからはCDの録音可能時間と同じ約80分の一繋ぎのmp3ファイルを作るようになった。

基本的には自分が家でお酒を飲んだり通勤したりするときに聴くためのもので、今でいうサブスクのマイ・プレイリストみたいなものなんだけれど、せっかく作ったものだからということで、2010年代以降はブログにトラックリストを載せたりMixcloudにデータをアップロードするようにもなった。

少し前にMixcloudの仕様が変わって、無料ユーザーだとアップロードできる音源の容量?数?に制限が付くようになってしまったから、最近はhearthisという似たようなサイトにアップロードにしている。

今日は僕が自作コンピと呼んでるmp3ファイルの作り方について書こう。

4,000文字以上の長文記事なので、興味のある方だけ読んでもらえればと。一応、目次もつけておこう。


自作コンピをつくり始めたきっかけ

音楽好きの人にとっては「あるある」だと思うけれど、昔から自分で選曲したオリジナルのカセットテープを作るのが好きだった。レンタル屋で借りたり買ったCDに入ってる曲の収録時間を計算しつつ、自分の好みの曲順に並べ替える作業が好きで、小学校5年生くらいからやってたような気がする。

中学に入ると同時にMDコンポ、高校に入ると同時に業務用のCDレコーダーを買ってもらって、時代の流れとともに徐々にデジタルに移行していくんだけど、今つくってる自作コンピも基本的にはこの延長線。

制作にパソコンを使うようになって色々と出来ることは増えたけどベースは同じ。「自分で選曲した曲の収録時間を計算して、好みの順に並べ替える」突き詰めるとこれだけだ。

DJミックスではなくコンピレーション

ちなみに僕が作ってる音源ファイルは、いわゆるDJミックスと呼ばれる曲間に切れ目がないノンストップスタイルではなく、基本的に曲間がしっかり切れているもの。だから「自作ミックス」ではなく「自作コンピ」と呼んでいる。

一時期はミックスCDっぽいものを作ってたこともあるんだけど、選曲対象が生音の旧譜中心で基本フェイドインフェイドアウトになるし、ヒップホップのDJみたいに二枚使いで擦ったりすることも出来ないから、わざわざミックスCDにする意味がないんだよね。

それならばいっそコンピ形式にして、市販のものでは大人の事情で実現できない選曲をするほうが面白いし意味があるなって思って、今のスタイルで選曲をすることにした。

まぁ4つ打ち系の曲なんかを選曲してるときで、明らかにロングミックスした方が雰囲気がよくなるだろうなってときは、ミックスしたりすることもあるんだけど、自分の趣味で作ってるものだし、その辺りの縛りは別にゆるくてもいいでしょう(笑)

選曲についてのマイルール

選曲は基本的に自由。「ジャンル」「レーベル」「雰囲気」「特定個人のオールタイムベスト」なんかの単位で大きなテーマを決めて、そのテーマの括りのなかで自由に選曲していくってのが僕のやり方。

ただ、さっきも書いたように、せっかく自作コンピを作るんだからってことで、市販コンピで実現できない選曲をしようとは心がけてる。↑に挙げたテーマのなかで分かりやすいのは「特定個人のオールタイムベストの場合」かな。

レーベルを跨いだ選曲だったり、他人名義の曲に客演したものを引っ張ってく選曲はオフィシャルのベストだと出来ないから、そういう選曲は積極的に取り入れるようにしてる。

あとはちょっとしたサプライズ。いわゆる隠れ名曲なんかを入れるのはもちろんだけど、洋楽のなかに日本人の英語詞曲をこそっと混ぜてみたりとか、逆に大ネタ曲をあえて選曲に組み込んだりとかそういうこともするかな。

この辺の感覚は、フリーソウルのコンピやオルガンバーのテープの影響だと思ってる。

具体的な選曲手順

選曲手法については単純で、itunesのプレイリストを使って候補曲を並び替えてるだけ。昔はこんなのなかったから面倒だったけれど、最近はなにかと便利になったもんだ(笑)

ちなみに選曲は二段階+仕上げ一段階の合計三段階。

最初は収録時間を気にせずプレイリストに選曲候補を全部ぶち込んで、ある程度いい感じになるように曲順を組み替える実験をしてみてから、もう一つ別のプレイリストをつくって最初の候補曲のなかから絞り込みを実施。

何度かプレイリストを聴いて、違和感なければいったん選曲は終了。この段階で9割の収録曲が決まる。

その後、実際のコンピのラフが出来てから、全体の流れや収録時間を考慮して最後にもう一度微調整をするって感じ。ただ、この選曲ってのはそれなりに奥が深くて苦労することも多い。。。

その場のノリと勢いとお酒の力である程度押し切れるDJプレイではなくて、シラフのとき(飲んでるときも多いけど)のリスニング用途だから、曲の並びの違和感がとても気になるからさ。

ミックスじゃなくコンピの体だからBPM(曲のテンポ)も基本いじらないようにしてるんだけど、これが実はとても大きな縛り。BPM合わせられないだけで途端に選曲の幅が狭くなっちゃうんだよね。

だから、めちゃくちゃ好きでコンピにも入れたいんだけど、前後の曲がうまく見つからなくて入れられてないっていう「積み曲」が山ほどある。。。

波形編集ソフトを使った曲間調整

さて選曲が固まったら次はいよいよ音源ファイル作り。

音源ファイル作りは昔からACID Proっていう老舗の波形編集ソフトを使っている。最近だと11まで出てるみたいだけど、僕が使ってるのは20年以上前に出た4。

いまだにこんな古いの使い続けてる人あんまりいないと思うけど、別にビートメイクしてるわけじゃなく曲間とボリューム、それから時々BPMの調整をしてるくらいだから、これで充分なんだよね。

プレイリストでリストアップした曲を順にトラックとして取り込んで行きながら、前の曲のフェードアウトや曲の入りのタイミング、それからボリュームを調整する。別にパソコンの機能で調整してるとかではなくて、モニタヘッドホン使って自分の耳を頼りにしたアナログ手法での調整だ。

ちなみに場合によっては編集で曲の一部をカットしたり、展開を変えたりなんて言う作業をしたりもする。要はトム・モウルトンが昔オープンリールのテープでやってたようなことを、ソフト上でやってるというわけ。

ハウスや古いディスコ系の曲で1曲が長いときによくやる作戦だけど、それ以外でも元曲のフェードアウトのタイミングが早過ぎて次の曲との曲間繋ぎが不自然になるときに、もう1ループ余分に付け加えてフェードアウト時間を伸ばしたりなんてこともしてる。

もっともエディットするときは極力違和感がないように心がけてるから、よっぽど原曲を聞きこんでる人じゃないと多分気づかないと思うけどね。

アナログ音源のクリーニング作業

選曲中にアナログ音源やいわゆる盤おこしのデジタル音源があった場合は、ACIDに取り込む前に一度SOUND FORGE Audio Cleaningというソフトで曲をクリーニングすることもある。

ノイズを除去したり、軽くエフェクターをかけてみて周囲の曲ときちんと馴染むようにするのがクリーニングのメイン作業。このクリーニングがうまくいかないほど盤質が悪いレコードの曲は残念ながら選曲対象外になって、盤質良いレコードを買うまで「積み曲」の仲間入りだ。

最近はとても便利になったので、盤質そこそこのレコードを使えば素人レベルのクリーニングでもチリプチノイズはわりと綺麗に取れる。このソフト導入前は、古い音源についてはCD化されるまでコンピ収録が出来なかったけれど、その制限が緩和されることで選曲の幅が広がった。

ちなみに最近知ったんだけどSound Clonerって機能もかなり便利。

これは「楽曲の特性を他の曲に反映させる機能」で、要はEQとかをオートでいじってくれてる機能なんだけど、繋げてかけるとマスタリング的に違和感がある2曲をスムーズに繋げるのに役立つ。

さっきも書いたけれど、その場のノリで押し切れちゃうDJと違って、コンピだとこの辺の細かい処理が重要なんだよね。

最後は結局、自分の耳が頼り

こうして各種ソフトを駆使して音楽ファイルが出来た後は、実際に自分の耳で全体を聴いて違和感がないかを確認する。

音質・音量・曲間タイミング・フェイドアウト処理なんかが主なチェック項目で、部屋のコンポと通学時のイヤホン両方で聴いてみて、より違和感がない流れになるように全体を調整していく感じだ。微調整を含めてだいたい10回くらいファイルを作り直す感じかな。そこまで調整して、ようやく自分でそれなりに納得できるものが完成する。

作り始めてから完成までの期間は早いと数日だけど、長いときは間に長考期間を挟んで数か月。上手くキマらなくてイヤになるときもあるけれど、そんなときはちょっと時間をおいてまた作り直せばいい。あくまで趣味だし、別に納期が決まってるわけじゃないからね。

自分で言うのもなんだけど、手間暇かけてるだけあって完成度はそれなりに高いはず。少なくとも商業目的で作られただけの寄せ集め市販コンピに比べてデキが良いことは間違いない。

まぁ自己満だけどさ。でも、こうやって自分が楽しめることが一番大切なんじゃないかな。


さてさて、そんなわけで今夜はずっと書こうと思っていた僕の自作コンピの作り方についてまとめてみた。かなり長くなったけれど、こういうノウハウを紹介している人もあんまりいないと思うし、興味ある人は参考にしてもらえるといいかな。

サブスク全盛期のこの時代に化石みたいなことしてる自覚は自分でもあるけれど、昔からこのやり方が好きなんだから仕方ない。

ちなみに今もこれを書きながら最近作ってるコンピのバランスを確認中。だいぶ仕上がってきてるから、今夜と明日の通勤で違和感なく通して聴ければ完成だ。無事に仕上がるといいんだけれど、どうなることやら。

でもこうやって試行錯誤を繰り返すのも楽しいんだよね、趣味だから。

十年二十年先の音楽業界がどうなってるかは分からないけれど、新譜の販売がなくなって全部サブスクのプラットフォームでしか聴けなくなるとかそういうことがない限り、僕はコンピ作りを続けていくはず。あくまで自分が楽しむためにね。

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