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Waxpoetics JAPANが面白い

2008〜2016年までの間、隔月発売されていたWaxpoetics JAPANという雑誌の存在を数年前に知った。

いわゆるブラックミュージック系の雑誌だからリアルタイムで読んでいても良さそうなものなんだけど、この時期の僕はヨーロッパの古いジャズにどっぷり浸かった後にハワイアンAORやシティポップを聴きまくってた頃だったので、タイミング的にスルーしてたっぽい。

当時は雑誌もジャズ批評やスイングジャーナルをメインに追ってて、柳楽光隆さんのJAZZ THE NEW CHAPTERも少しチラ見してスルーしてたくらいなので、まぁ当然と言えば当然かもしれないけどね。

ちなみにJAZZ THE NEW CHAPTERは後にロバート・グラスパーに興味を持った時に揃えたので今は手元にある。

海外雑誌の翻訳版という面白さ

で、いくつか興味を持った特集号を古本で買って読んでみたんだけど、なるほど前評判どおりとても面白い。前にも書いたことあるけど海外で書かれた本やインタビューの邦訳って変なフィルターがかかってないから好きなんだよね。

このWaxpoetics JAPANもUS本国で出てたWaxpoeticsからインタビューや特集をレイアウト含めそのまま引っ張ってきたものを中心に編纂されてるので、全体に雰囲気がとても良い。同じブラックミュージック専門誌でもbmrなんかだとこの感じはなかなか出せないと思う。

ただ、ところどころ入ってくる日本人ライターが日本のミュージシャンへインタビューする記事はちょっと蛇足かな。せっかくなんだから、全部本家の記事でいけばよかったのにと思う。まぁこの時期はBLASTもremixも休刊になっちゃってたから、その受け皿的な意味合いもあったんだろうけどさ。

ちなみにGROOVEは2015年休刊だから、まだ発行されていた時期。クラブミュージックに興味をなくしてた時期だったから僕自身はもうほとんど読んでなかったけどね。

ヒップホップ以降のブラックミュージック専門誌

それからこのWaxpoetics JAPANがもう一つ優れてるのは、いわゆるヒップホップやR&Bの専門誌ではなく、ブラックミュージック全般の専門誌だということ。しかもただのブラックミュージック専門誌ではなく、「ヒップホップを通過した世代向けに書かれたブラックミュージック専門誌」になっていて、この部分がこの雑誌最大のアイデンティティになってる。

ヒップホップ系のミュージシャンは当然多く取り扱われてるけれど、それ以外でもジョージ・クリントン(Pファンク)やマイゼル兄弟あたりのレアグルーヴ以降再評価され人気の高いミュージシャンの内容濃いインタビューがあったりして、すごく読み応えがあるんだよね。

なかでも特に気に入ったのは"ダンス・イシュー"としてまとめられたデリック・メイが表紙の19号。

表紙からも分かるようにデリック・メイ、セオ・パリッシュ、トム・モウルトン(!)、ロン・ハーディー、URと錚々たる面々が取り上げられた一冊で、僕が好きなところど真ん中の面子による高濃度の特集記事が組まれてる。

単なるヒップホップ/R&B雑誌だったら絶対取り上げない顔ぶれだと思うけど、「ヒップホップを通過したブラックミュージック好き」としては大変に興味深い内容でとても楽しむことができた。

ちなみにこの"ダンス・イシュー"は次号でも続編が組まれてて、そちらではラリー・レーヴァンにフランソワ・ケヴォーキアンにニッキー・シアーノというニューヨーク寄りの面々が取り上げられてるから、気になる人は合わせて読んでみるといいかもしれない。

もう一つオススメなのがPファンク特集が組まれた22号。総裁ジョージ・クリントンのインタビューはもちろんだけど、いっしょにブーツィー・コリンズのインタビューも載っていて、これがJBとの出会いから始まりPファンクに至るまでを追っていく内容でかなり面白い。

さらにはロード・フィネスがDITCと自身のキャリアについて黎明期から語るインタビューもあり、極め付けにフィネスのソノシートまで付いているからかなりお得感が強い。

他にもサン・ラが取り上げられてる号があったり、ウータンの特集号があったりと、初期〜中期にかけての誌面はとにかくクオリティが高い。

後期はさすがにネタ切れしてきたのか、ちょっと内容がヒップホップ色強くなってきて結局NWA特集の44号のあと休号になっちゃったけれど、20号台の真ん中くらいまではだいたいどの号を買っても面白いから、90年代以降の感覚でブラックミュージックを掘り下げたい人にはおすすめだ。


そんな感じで今朝は雑誌Waxpoetics JAPANの話。まだ読んでない号にも気になるものがあるから、折をみて集めていこうと思う。

ちなみにサムネに写ってるマガジンラックはamazonで買った山善の組み立て式薄型ラック。値段のわりに雰囲気が良いから雑誌好きにはオススメだ。僕はクローゼット脇のスペースに置いてみたけど、薄いから折れ戸とも干渉せず、デッドスペースの有効活用に成功した。

今回紹介したWaxpoeticsは表紙のデザイン性が高いからただ置いてるだけでもなんとなく絵になるし、誌面の内容的にも申し分ない。ブラックミュージック好きでまだ読んでみたことないって人はぜひ一度手にとってみると良いと思う。

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