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ヨーロッパの古いジャズをクラブジャズとして聴いていた頃(長文記事)

大学に入学してしばらく経った2003年頃から6~7年くらいは、とにかくヨーロッパのジャズをよく聴いていた。フィンランドのファイブ・コーナーズ・クインテットが1枚目の10インチをリリースしたのが2003年、ニコラ・コンテがブルーノートからアルバムを出したのが2004年。

あの頃が今やもう20年も昔のことなんだと思うと感慨深い。。。

昔ライムスターの宇多丸さんもラジオかなにかで言ってたけど、20年って言ったら、90年代のヒップホップ黄金期から見た70年代だからね(笑)


クラブジャズとリアルジャズ

当時は須永辰緒さんや小林径さんとそのフォロワーを中心にド直球のオーセンティックなジャズをクラブプレイする流れがあって、なかでも人気だったのがヨーロッパで50~60年代に録音されたハードバップスタイルのジャズ。

アメリカ本国のジャズと比べて良い意味で淡泊というかスッキリしていてメロディーラインもオシャレ、それでいてソロもさほど長くなく曲の長さが5分以下のものが中心だったからDJプレイに都合が良いと持て囃され、界隈では結構な人気になっていた。

一方でいわゆる正統派のモダンジャズ愛好家の間でもこの当時はヨーロッパのジャズを聴くのが流行っていて、2000年代中期は欧州ジャズの廃盤シーンが非常に盛り上がっていた印象がある。

一時期はとんでもない値段でレコードが取引されていたことにもあったけど、数年後には主要な作品のほとんどが再発されたこともあり、ブーム自体が徐々に鎮静化されていった。

この頃に一部のジャズDJやコレクターの間でバイブルになってたのが、ジャズ批評別冊の「ヨーロッパのジャズ・ディスク1800」。

ジャズ批評だから正統派のジャズファン向けの本ではあるんだけど、表紙をみても分かるようにダスコ・ゴイコビッチやレンデル=カー、コメダにステファン・アベリーンと当時クラブ界隈で話題になった盤も多く掲載されていてた。どれも当時は(今もだけど)高額盤だったけれど、眺めてるだけでも楽しいから、この本自体が一時期はかなり高値で売られてた。

まぁ実際のところは「クラブ界隈で話題になった」というよりも、この本に載ってたような盤のなかから、クラブプレイに耐え得るレコードをDJやバイヤーがうまくピックアップして若者に広めたってのが正直なところなんだろうけれどね。

一部の自主盤やサントラ系を除くと、2000年代中盤にかけてクラブ界隈で人気だったヨーロッパジャズのレコードの大半は、1998年に出たこの本に既に掲載されている。

EPブームと和ジャズブーム

一通りのレア盤が発掘~再発され、ある程度ヨーロッパジャズの全貌が見えてきた後に流行ったのがヨーロッパジャズのEPと和ジャズ。

これもクラブ側は完全に後追いなんだけれど、ブームの最中に出たジャズ批評のEP特集を見ると、当時クラブ界隈で大人気だったデンマークのジャズ・クインテット60周りの紹介にかなり多くのページが割かれているから、おそらくクラブ系リスナーの購読もかなり意識されてると思う。

ちなみに僕はこの辺りだと、アクセン=ペデルセン=ロストヴォルドによる一番人気のSketchとアクセンとロストヴォルドのデュオ、それからTop Jazzのアクセン・トリオ×2種類とジャズ・クインテット60×2種類、さらにはジャズ・クインテット60のDebut盤を所持していて、これは僕のコレクションの中でもちょっとした自慢だ。めちゃくちゃ高かったけど(笑)

LPも一時期はオリジナル盤で結構いろいろ持ってたんだけど、再発時に手放しているものも多いから、いまも手元にあって自慢できるのはコメダのBallet Etudesとクリスチャン・シュウィントのLPくらいかな。

クリスチャン・シュウィントに関してはまだ騒がれまくる前だったから運よく某店の廃盤セールで¥12,800でゲットしてて、たぶん僕のレコード人生一番のラッキーがコレ。

ちなみにこの頃のジャズ批評には同じくクラブ層を意識したと思われるものに、10インチと和ジャズの特集号もあった。

ただ、和ジャズなんかは本が出たあとにユ○オン主導で一気に再発が進んだので、どちらかと言うと廃盤の紹介というかリイシュー盤の先行マーケティングのような意味合いが強かった気がする。

直接の広告宣伝ってわけではないけど、それまでどマイナーで、このときに紹介されるまで一部マニア以外ほぼ誰も知らなかったような盤が1〜2年の間で軒並みリイシューされることになったからね。

その頃は既に自分のなかで少しジャズ熱が冷めはじめてたんだけど、この和ジャズの流れでジャズ離れが一層加速したのをよく覚えてる。なんでもそうだけど、ブームに商売が見え隠れしはじてると途端に冷めちゃうんだよね。

あの頃聴いてたジャズを選曲してみた

さて、その後の僕は辺境AOR〜コンテンポラリー・ハワイアン〜シティポップ周辺に3〜4年どっぷりハマった後、全ての音楽を並列に聴くようになり今に至る。5年前に結婚してからはレコードを買うこと自体も激減して、旧譜関連についてはほとんど買ってない。

ただ、別に過去に聴いてた音楽が嫌いになったわけじゃないし、今もときどき思いだしたように聴くことはある。前に思い出したように当時聴いていたヨーロッパジャズのコンピを作ったことがあるんだけど、先日ふと思い立ってその続編を作ったので両方アップしておこう。

最初に作ったやつがデンマークをはじめとした北欧系メインで、今回のはUK系の曲がメイン。タビー・ヘイズが3曲もあるけど、録音時期も収録アルバムも違うし、まぁそこはご愛敬ということで(笑) この手の選曲をしたのは久しぶりだけど、まぁ悪くはない気がする。

少しだけ50年代の曲が混ざってるけど、ほとんどが60年代の曲。

当時を知ってる人は懐かしく思うだろうし、知らない人にも新鮮なんじゃないかな。このあたりの欧州ジャズは軒なみ再発されていて、今はサブスクで聴けるものも多いけれど、一応サブスクでは聴けないものも少し入ってたりはするから、新しい発見があるかも。

  1. Helsinki At Noon / Christian Schwindt Quintet (RCA Victor / Finland / 1966)

  2. Report From Cairo / Nick Ayoub Quitet (RCA Vitor / Canada / 1964)

  3. To Iskol'hof / Bent Axen = Bent Jaedig 6-5-4-3 (Debut / Denmark / 1960)

  4. Se Você Disser Que Sim / Edison Machado e Samba Novo (CBS / Brazil / 1964)

  5. Harvey's Tune / Sahib Shihab and The Danish Jazz Radio Group (Oktav / Denmark / 1965)

  6. B's Waltz / Bent Jädig (Debut / Denmark / 1967)

  7. Crazy Girl / Krzysztof Komeda (Metronome / Denmark / 1963)

  8. Perhaps / Bjarne Rostvold's Trio (RCA / Germany / 1963)

  9. Around 3/4 Time / Jazz Quintet 60 (Metronome / Denmark / 1962)

  10. Time Check / Group Six Players (KPM / UK / 1967)

  11. Wampoo / Bjarne Rostvold (Odeon / Denmark / 1966)

  12. My Little Cello / Oscar Pettiford And His Jazz Groups (Debut / Denmark / 1960)

  13. Pink Tenor / Gunnar Ormslev (Jazzvakning / Iceland / 1983)

  14. Fin Sikt Över Havet / Staffan Abeleen Quintet (Phillips / Sweden / 1966)

  15. Coisa No. 7 / Moacir Santos (Forma / Brazil / 1965)

  16. Minha Saudade / Vitor Assis Brasil (Forma / Brazil / 1966)

  17. Zabelé / Flora (Odeon / Brazil / 1968)

  1. Half A Sawbuck / Tubby Hayes Quintet (Fontana / 1962 / UK)

  2. Fly Me to the Moon / Pedro Biker (Sonet / 1966 / Denmark)

  3. Jazz A La Quarte / Jef Gilson Big Band (SFP / 1965 / France)

  4. Cinderella's Waltz / Don Menza (Saba / 1966 / Germany)

  5. Boom Jackie Boom Chick / Paul Gonsalves Quartet (Vocalion / 1964 / UK)

  6. Last Minute Bossa Nova / Vic Lewis And His Bossa Nova Allstars (HMV / 1963 / UK)

  7. Nassi Goreng / Lars Gullin - Åke Persson (Phillips / 1957 / Netherlands)

  8. Tupa / Paul Gonsalves and Tubby Hayes (Columbia / 1965 / UK)

  9. Stephenson's Rocket / Emcee 5 (Columbia / 1962 / UK)

  10. Circeo / Sergio Fanni And His All Stars (Cetra / 1960 / Italy)

  11. Dainaya / Paris Jazz All Stars (Riviera / 1966 / France)

  12. Tan Samfu / Don Rendell = Ian Carr Quintet (Columbia / 1966 / UK)

  13. Night In Tunisia / Dino Piana Quartet featuring Gianni Basso (Cetra / 1960 / Italy)

  14. Meu Fraco É Café Forte / Franklin (Odeon / 1968 / Brazil)

  15. Cleopatra's Needle / Ronnie Ross (Fontana / 1968 / UK)

  16. Johnny's Birthday / The Diamond Five (Fontana / 1964 / Netherlands)

  17. Oh, My! / Tubby Hayes & The Jazz Couriers (Tempo / 1958 / UK)


ちなみに今回僕が選曲したものを聴くことでジャズの格好良さに気づいて、同じような雰囲気の曲を探してもなかなか見つからないのでご用心。

山ほどある欧州ジャズからコレクター達が良盤をピックアップして、そのなかからさらにDJが直観的に踊れる曲を選んだ中からとっておきの曲を編纂しているわけで、こんなに直感的にかっこいい曲は野良で探してもそう簡単には見つかるもんじゃないです。

僕自身、当時聴き始めの頃に廃盤レコード屋の店主に何もわからないながら、「〇〇みたいなジャズが好きなんですけど、ありますか」って聞いて「そんなの簡単にはないし、あっても凄いレアで君が買えるよう値段じゃないよ」って失笑されたことがあるので。

まぁ、でもそういうことも含めて、良い思い出かな。

つらつらと書いてたら長くなっちゃったけれど、良かったら是非この機会に聞いてみてくださいな。

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