『金持ちジュリエット』◇◆

ロミオが棺を覗き込むと、ジュリエットはただ眠っているようだった。頬には赤みが差し、豊かな金髪はつややかだ。

しかし彼女が目を開くことは二度とないのだと悟り、ロミオは絶望した。

「愛しい人、今すぐ君のもとへ!」

ロミオは懐から短剣を取り出すと、自分の胸に突き立てた。

血しぶきを浴びるジュリエットの白い肌。

棺に覆いかぶさるように倒れたロミオの胸からどくどくと血があふれ、ジュリエットを赤く染めていった。



鮮血がどす黒く変わったころ、ジュリエットは目を開けた。

「ああ、なんてこと」

血だまりから身を起こし、ジュリエットは顔を歪める。

「くくく、ふふふ、あーっはっは」

ああ、ロミオ。とうとう私だけのものになった。

運命の恋の演出料、私には安いものだった。あなたの両親も友人も修道僧もみんな、買収して私の駒。そうしてあなたの歓心を買った。全部、お金で買ったのよ。

ジュリエットは冷たくなったロミオの顔を捧げ持ち、青白い唇に接吻した。

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