見出し画像

Suisuiが【 宮川慶子 】に22の質問をインスタライブ-後編-

こちらは、2023年1月20日(金)にInstagramのライブ配信で開催された美術作家の宮川慶子へのロングインタビューの文字版アーカイブです。
音声データから文字起こしをした後、文章として読みやすいように編集しています。
ちょっと長いので記事を前編・中編・後編に分けて掲載しております。

前編はこちら
中編はこちら

作家活動について

⑲今までの作家活動の中で特に記憶に残っている出来事はなんですか?

【Suisui】
次の質問です。今までの作家活動の中で、特に記憶に残っている出来事はなんですか。

【宮川慶子】
他のインタビューや、質問された時にも毎回も同じことを言ってしまっているのですけど。これは本当に死ぬまでずっと自分の心の宝物なんだけど。
学部の卒業制作は、自分的には100パーセントやりきったと思って、いざ卒展に出して教授から講評で褒められると思っていたら、ボロクソ言われ終了。
大学院受験では、怖くなさそうな先生だっていう理由だけで藝大を受けて、面接時に「このケバケバはなに?」と作品のことを言われて。まあ当然落ちて。そりゃ落ちるなと(笑)

家で寝転がって「なんもなかったな」と思ってたらある日、携帯電話に青森県立美術館から電話があって、「奈良美智さんが卒業制作を良いって思ってくれたから奈良さんプレゼンツで青森で個展しませんか」って。そしてその翌月に奈良さんと会えたこと。

奈良さんは、自分が幼い時にすごく素敵だなって思えた作家さん。絵を描くこととか、立体だとか、インスタレーションもやっていて、彼によって表現の面白さを知れた。自分が制作をしていく上でのベースとなるような方だったんで、その人が自分の作品をたまたま見て、たまたま呼んでくれるっていう、そんなことありえないと思っていたから本当に嬉しかった。これがあるから、今も続けていられるんだと思ってます。
これが自分の作家の中で一番記憶に残っている。


個展初日、奈良さんと
(青森県立美術館 八角堂, 2014)

【Suisui】
それはおっきいですよね。その奈良さんのプロジェクトも毎年あるわけじゃなくって、たまたま慶子ちゃんが学部卒業して展示してる年だけあったんだよね。

【宮川慶子】
そう、それ以降プロジェクト自体は3回続いたけど、奈良さんがプレゼンツしてんのはその一回だけ。
あと同い年で集めたいっていう理由があったみたいで、私が浪人してたら年齢が違うから除外されてたから、本当にたまたま全て合致した。


個展「わたしがわたしとあなたのためにお祈りしているとき」展示風景
(青森県立美術館 八角堂, 2014)


【Suisui】
その奈良さんに評価してもらってた時の作品っていうのは、今とは違う作風だったってことですよね?

【宮川慶子】
あ、それはね、まだ続いてて、真っ白い毛みたいな繊毛を描き続けるやつ。当時自分はずっと立体をやっていたので、入学してから1番自分の身近な素材が絵具よりも粘土だったので、キャンパスの上に粘土を貼って繊毛を描き続けてたんだけど。
今は粘土じゃなくて、絵の具の方がしっくりくるので、繊毛の表現をアクリル絵の具に置き換えてやってます。なので、全くなくなったわけではない。


「あなたのなかを歩いていると」部分拡大
2014

【Suisui】
なるほど。ありがとうございます。


⑳慶子ちゃんにとって作品制作と展覧会はどういった役割をもちますか?

【Suisui】
続いて、そんな慶子ちゃんにとって、作品制作と展覧会はどういった役割を持ちますか?

【宮川慶子】
他者との関わり。会話みたいな感じです。これ以外にないですね。

【Suisui】
なるほど、てことは作品を作ることがあり、そして、他者と関わりができるっていうのは、それが展覧会ってことですか?

【宮川慶子】
自分の考えを他者に一番直接的に伝える方法が、展覧会だと思っている。会話以上に自分の考えてることだったり、伝えたいことを伝える手段。

【Suisui】
展覧会すると、見てくれた人から感想だったり、何か言葉だったり、フィードバックがあるかと思うんですけど、それも結構重要?

【宮川慶子】
あー、もらったら嬉しいけど、自分の声での対話じゃなくて、自分の作ったものを他者が見ることが、その人の中に情報が入って記憶に残るわけだから、それで対話として成立していると思っている。別に作品を見て直接こう思いましたってのを耳で聞いたり、それに対して返事をすることを対話とは思っていない。

【Suisui】
なるほど。そうですね。


㉑アーティストとして1番大切にしていることはなんですか?

【Suisui】
では次の質問。アーティストとして、1番大切にしていることはなんですか?

【宮川慶子】
正直であること。世界は嘘だとか、見栄だとか、自己中心的なものにまみれているから、一番正直であること。正直じゃなかったら、作品じゃなくて単なるエゴになってしまうと思っています。

【Suisui】
慶子ちゃんが思う、正直じゃないってどういうことですか?

【宮川慶子】
正直じゃないっていうのは、それこそ自分の意思に反したことをやっているってのもそうだし、見栄だとか強がるとか。あとなんだろうな、相手をけなすだとか、自分が何者かになりたいだとか、自分を見栄え良く見せようだとか、そういうのじゃなくて。もう一切、そういうことじゃなくて、自分と正直に対話して、それを形にできるっていうのが正直なことだと私は思っています。

【Suisui】
なるほど。

【宮川慶子】
たとえそれをやり続けて、いわゆる成功したって言われるような道に行かなくても、作家って名乗るんだったら、正直にやり続けて死ぬのが最高の作家だと思っている。

【Suisui】
ありがとうござます。


㉒今後の展望や、やってみたいことはありますか?

【Suisui】
では、最後の質問です。今後の展望や、やってみたいことはありますか。

【宮川慶子】
今後の展望はじっくり何年もかけてじっくり描いた大きな絵の個展をしたいです。展望っていうか、夢ですね。あと、もう1つ…あの、もう欲にまみれてて前の質問で答えた内容はなんだって感じな欲にまみれた答えなんだけど、本とか絵本の差し絵めちゃめちゃやってみたい。私以外の人が書いた言葉の横に自分の絵を添えてみたい。

【Suisui】
なるほど。添えられてほしい。

【宮川慶子】
その人の言葉の影になるというか、一緒に走ってみたい。伴走みたいな。影になって一緒に走りたい。めっちゃ憧れ。仕事ください!

【Suisui】
自分の絵本とかじゃなくて、誰かの差し絵…誰かのに寄り添うような絵のお仕事がやってみたいってことだね。

【宮川慶子】
自分の絵本や詩だと結局今やってる作品と一緒だから、そうじゃない。
誰かの言葉をじっくり拝読して、そのための差し絵を描くのでもいいし、自分が今までやってきた活動の中にある作品を使ってもらえるんだったら、全然使ってもらいたいのですが、どうすればいいですかっていう感じです。


「selfportrait」
2022


【Suisui】
宮川慶子に差し絵のお仕事ください!

【宮川慶子】
よろしくお願いします!

【Suisui】
もし、出版社の方とか、詩人の方とか、小説家の方とか、慶子ちゃんとその作品にシンパシーを感じる方がもしいたらいいね。

【宮川慶子】
憧れだよね。

【Suisui】
うん、わかる、私も憧れてる。ちっちゃい頃から本の表紙とか、詩や物語とかの差し絵とか。
慶子ちゃんの差し絵の本や表紙の本が出たらすごい素敵だなと思うので、叶うといいな。

【宮川慶子】
叶うといいな。

【Suisui】
ちなみに、ちょっと話が戻るんだけど、大きな絵をじっくり何年もかけて描いてそれを展示する個展をしてみたいっていうのは、例えばその大きさっていうのはどれくらいを想定していますか。

【宮川慶子】
あー、大きさは130号とか150号ぐらい。何枚も連結させたいな。
なかなか環境的に難しいんですけど。
今は自分の手元に収まるサイズのものをちょうどいいと思って去年から続けていて、そうしたらまたおっきいものを…自分の手に負えないものを描きたくなってきて。自分が対応できないような存在を扱いたい。それは、自分が対応できるようになりたいとか、そういうことじゃなくて、自分が対応できないような大きいものと、自分が対応できるようなちっちゃいもの…つまり自分が完結させないといけないものを、両方やりたいなって思い始めてきて。

自分が手に負えないものをやりたいなっていう欲が湧いてきた。


「なにげないみんな」
2022
写真

【Suisui】
今、環境的にできないっていうのは、それだけのおっきな絵を描くスペースがないってこと?

【宮川慶子】
そう、スペースもないし、全部横に置いて遠くから見れる環境になくて。本当に見るんだったら、写真に撮って、パソコン上で合成させて見るみたいな、そういうことになってくるから…でもそうであっても作っちゃおうかな。ただ保管とかもね、難しいですよね。

【Suisui】
保管も大変ですよね。

【宮川慶子】
だけど大きい作品を作りたいな。

【Suisui】
150号をいくつも連結するってこと?

【宮川慶子】
そうですね。大学院の修了制作も繊毛のような表現でそれは真っ黒だったんだけど、3枚連続して作っていて。別に3枚じゃなければいけないって理由じゃなくて、大きなの画面を作りたかったから。
分割もできるし、作品の風景の中に自分も溶け込むような。

【Suisui】
色々耳がいっぱいあって、消えていく感覚と一緒で、作品の中に埋もれて自分自身が吸収されていきたい?

【宮川慶子】
うん。

【Suisui】
なるほど、新しい大きい作品を、もう1回その繊毛のやつを描きたいの?それとも、今のみんなシリーズ?

【宮川慶子】
どっちもやりたいかもしれない。
名もない生きものたちが大きなキャンバスや街の大きな広告とかで写真を埋め尽くしたい。

【Suisui】
確かに。渋谷のスクランブルのところの広告が「誰この人」みたいな人たちでジャックされるっていう。

【宮川慶子】
そう。誰?みたいなもの、人外の人たちとか、謎の雑草とかでいっぱいにしたい。
花屋さんでピカピカのバラじゃなくて、よくわかんないけどしっかり名前あるのに名前ないって言われちゃってる花とかね。街全体ジャックしたい。今そんな気持ちかな。


おわりに

【Suisui】
どうでしたか?質問を受けて。

【宮川慶子】
自分の考えを言葉にするのはいいね、脳がクリアになる。

【Suisui】
また計画が立てば、誰かアーティスト引っ張ってきて、私と慶子ちゃんで質問するインスタライブやりたいね。

【宮川慶子】
そうだね、やりたいね。

【Suisui】
知りたいなって思ったアーティストさんに、もしかしたら声をかけるかもしれません。
では、ありがとうございました。

【宮川慶子】
ありがとうございました。


▼宮川慶子 HP

▼Instagram

▼Twitter


▼Suisui HP





前編へ戻る?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?