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コンペ落選作品を無駄にしない為に。(その1)

(2017年3月)

competitionとは優劣を決める争い、競技会やコンテストという意味合いの英語です。それがカタカナ語となりゴルフ"コンペ"や広告"コンペ"として使われてきました。ゴルフはスポーツですから競技会として争って楽しむ物ですが、今のクラウド上でロゴマークやデザイン類の「コンペ方式」となると、同じ争いといってもビジネスですから遊びで楽しむとはいきません。これは、広告デザインに長く携わった筆者が、コンペ方式に一石投じ、なんとか解決策を見出すべく企画した提言コラムです。


1. 現在のコンペ方式の明暗(2017年)

コンペ方式のメリットは何でしょう?

まず依頼者側からみると、オンライン公募コンペは僅かなコストを投じて数十のアイディアサンプル、デザインサンプルが集まる事があります。これは小さな企業などでは感動すら覚えることでしょう。広告代理店でビックリする見積もりを出され断念せざるを得ない事例だったなら、起死回生、ようやく自社の案件に人が集まったと誇らしいでしょう。

受注者のメリットは何でしょうか?今まで新規の仕事がまるでなかった地方で、介護や育児、療養などで外に出て働けない人がオンラインのコンペに応募する。あるいは、デザイン業だけど会社の仕事はジャンルが偏っているので違う分野にチャレンジしたくて応募する。そういう「チャレンジ欲求」を満たす意味では機能しています。

ただ、確実に労働して収益を得る生産活動になっているわけではありません。一部のみが生産活動、商取引になる仕組みです。

逆にコンペ方式のデメリットは何でしょうか?

依頼者側視点では、オンラインの場合(公募ガイドなどでも)、応募者がプロと限らない、素人作りの制作会社の社内チェックをクリアできるレベルにもない物も提案されます。また、作品の質以外に取引の営業的な対応、サービス体制の質も様々で、普通のビジネス取引では考えられないような常識のない参加者もいます。著作権、薬事、景品表示、様々な法律をしっかり理解して提案している応募者かは確認出来ません。

そして一番の懸念事項は、ダンピングと当選確率の低下に対向するための「効率化優先」「ネタの使い回し」で誤摩化す応募者もいます。さらに、質が高く相応の料金をもらってデザイン等を固定客に提供しているような優秀なクリエイターからすれば、わざわざ「低価格で受注の可能性の薄いコンペ方式に労務をつぎ込む意味が見出せない」、つまり本当の企画力のある優秀なクリエイターへの依頼はかなり難しいという事です。

結果、数は集まっても満足いく提案がなかったというケースもありえます。

応募者視点のデメリットとしては、優秀なクリエイター程「プレゼンテーションを大事」にしますが、オンラインコンペ方式などは、十二分な打ち合わせと納得できるプレゼンテーションがそもそもありません。これでは、依頼者の「好き、嫌い」みたいな企業のマーケティング戦略とかけ離れた要因に左右されて採用決定される事になりかねません。

オンラインコンペに限らず、広告代理店も同じなのですが、「コンペを勝ち抜かないと収益にならない」という方式の場合、「顧客のセールスを向上させる」というような至上命題は二の次にされ、何より「案件落札」に照準がセットされてしまい、酷い場合はキーマンの好みだけに媚びてエンドユーザーへの戦略を無視した提案になりかねません。「顧客製品が売れなくても案件が取れて自社の売上になればいい」という短絡的な思考に陥りがちです。

またオンラインコンペの場合は、後だしジャンケン方式で先行提案者のアイディアの盗用も出て来ますし、グローバル展開の場合は単なるダンピング合戦でなく、物価の安い国の競争力に制覇されるという事が考えられます。

中には悪質な依頼者による詐欺まがい、個人情報奪取目的、労基法で社員を酷使できない逃げ道としての低報酬で過酷な業務を強要するような依頼もあります。

本来、一番最初のプレゼンテーションが、企業の事、製品の事、資料や聞き取った情報を何度も咀嚼し、ストーリーを組み立て、デザインアイディアをいくつも考え、ブラッシュアップしと、止まっているエンジンをかけるがごときパワーを必要としています。しかし現状は、この大変な作業に僅かな公開コンペ当選フィー(全員に配当される参加フィーではありません)だけで、落選者は多大な労力と作品と時間を無駄にする「生産性向上の方針とは逆回転」のベクトルのワーキングスタイルがコンペ方式なのです。

依頼者、応募者ともに「脱コンペ方式」を目指さないと発展は見込めないと考えています。

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つづきを読む(来週以降にお待ちください)→ 2.実は最良の選択でないのがコンペ方式

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