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⦅T⦆HE CORK:スイスワインにおけるコルク VS スクリューキャップ

長年議論が続いていると伺うものの、コルクもスクリューキャップも一長一短ですから、どちらも用途に応じて使用すればよいと思います。

スイスでは、スクリューキャップはリサイクルが可能であること、そしてコルクによる汚染(ブショネ)がなく、ワインを安全に保存できる手段として注目されています。

そして、Chasselasとスクリューキャップは相性が良いので、長期熟成も可能です。

Vin bouchonné(コルク栓のワイン) :ブショネとは
ワインが、コルクに繁殖するカビの影響を受けてしまった場合、それによってトリクロロアニソール(TCA)に汚染されている可能性がある。
トリクロロアニソール(TCA)は、強いカビ臭、濡れた段ボール紙のような臭いで、ごく少量でも知覚させ、味に悪影響を及ぼす。

FOOD REPUBLIC•UPDATED: JUNE 8, 2015 1:31 PM EST

今回は、スクリューキャップと天然コルク、合成コルクについてご説明します。


1.代替クロージャ―:スクリューキャップと合成コルク

スクリューキャップや合成コルクは、(天然コルクの)代替クロージャーと言われています。

今、ワイン業界では、これらの代替クロージャ―の
酸素透過性、抽出力、熟成性能、消費者の受容性について、
研究が進んでおり、注目されています。

代替クロージャ―:スクリューキャップ

オープナーが無くてもひねるだけで簡単に開栓できるスクリューキャップは1960年代から市場に登場しました。通常はアルミで作製されます。
上述したように、スクリューキャップはリサイクルが可能であること、そしてコルクによる汚染(ブショネ)がなく、ワインを安全に保存できる手段です。
最近では、

スクリューキャップも天然コルクと同様に熟成機能を持つ

と結論づけられています。

また、スクリューキャップに酸素を透過するシールを張ることで、ある程度酸素との接触を可能とするスクリューキャップも開発されつつあります。
ただし、酸素との接触が少なすぎるスクリューキャップも存在していて、ワインによっては、アロマを低下させることがある点が懸念されています。

スイスワインでは、スクリューキャップとChasselasは相性が良く、Chasselasの二次的、三次的アロマを引きだすことができるため、多くの生産者がスクリューキャップを採用しています。


代替クロージャ―:合成(人工)コルク


合成コルク(synthetic cork)はプラスチック製で、天然コルクに似た見た目と抜き心地になるよう作られてたものです。
見た目が天然コルクと同様で、かつTCAで汚染されるリスクがない点が評価されました。
ただし、合成コルクのデメリットには、密閉性が低く、としては酸素通過性が高すぎるため、劣化のリスクが大きい点が述べられています。

この記事の番外編でも述べていますが、18か月を過ぎると劣化し、密閉が下がって空気が入ってきてしまうようです。

当然ながら、熟成させるワインには向いていません。

また、
・ 抜栓が天然コルクと比べて困難であること
・ 抜栓後に再び栓をするのが難しいこと
・ 化学物質の臭気ががワインに移る可能性があること
が挙げられています。


2.天然コルクについて

「コルクは空気を通すから熟成に良い」と言われることがありますが、これは厳密には間違っています

天然コルクの最も大きなメリットは、ワインに接触する酸素の量を一定に保つことです。

A. 天然コルクの仕組み

瓶詰め時にコルクが圧縮される際に、コルクに含まれる空気が加圧されることでコルク内部の気圧は6~9気圧に上昇します。
瓶の内部とコルクに圧力不均衡が生じることとなりますが、こちらはコルクと液面上部の空気の層が徐々に均等化することで解消されていきます。
そして、均等化した後は、天然コルクは密閉性が高く、空気の影響は受けないとされています。

つまり、

ワインに接触する酸素の量は、加圧されたコルク内空気だけ

なのです。

具体的には、一般的な44mmのコルクには推定3.5mlの酸素が含まれています。

B. 天然コルクの製造方法について

天然コルクは、18世紀にワイン醸造の科学が確立されて以来、ワインボトルに使用されてきた標準的な栓です。

1製造工程:煮沸する

収穫されたコルクの皮

乾燥させたコルクを平らに積み重ね、少なくとも1時間煮沸する。
→ 煮沸によって、個々のコルクの細胞が完全に膨張し、密な
  「ハニカム」細胞構造になる
→ コルク板はより平らに、より滑らかに、より柔軟に
→ 板の体積は約20%膨張する

2製造工程:休息期間を設ける

3週間、しっかりとコルク板を休ませる。

3製造工程:切り揃える

サイズに合わせてカット

休息期間の後、適切なサイズに切り取られたコルク板は更に、板の長さに沿って短冊状にスライスされる。
→ 各ストリップの高さは完成したコルクとほぼ同じ
→ 深さ(長さ)は最終的なコルクの幅より少し深い
→ コルクの木目はコルクの縦に沿ってではなく、コルクを横切る。

4製造工程:打ち出す

コルクの打ち出し

鋭利な円筒形のカッターにより、所謂「コルク」としてでコルク板から打ち抜かれる。

5製造工程:消毒する

選別されたコルクは様々な方法で洗浄・消毒される。
→ 最も一般的な方法は、過酸化水素水溶液でコルク栓を洗浄
→ 新しい方法では、マイクロ波やオゾンを使用


(番外編)コルクによって、ワインの酸素の侵入量は異なる

3年間かけて、コルクの性能を評価した研究が2007年に発表されていました。

Oxygen transmission through different closures into wine bottles

Oxygen transmission through different closures into wine bottles, Lopes, et al. 2007, Faculté d’Oenologie de Bordeaux, Université Victor Segalen Bordeaux


ざっくりと結論だけお伝えします。

  • スクリューキャップ:
    瓶詰めの際に酸素が入るが、それ以降は、酸素の侵入はほぼ見られない。

  • 合成コルク:
    18か月を過ぎると密閉性がなくなり、酸素を著しく通してしまう。

  • 天然コルク:
    最初の6-9カ月の間に、加圧されたコルクに含まれた酸素をワインに提供する。

  • 天然コルク:
    最初の6-9カ月を過ぎると、酸素の侵入はほぼ見られない。
    (研究期間は36カ月)

  • 天然コルク:
    品質が良い方が酸素を通さない。

質の高い天然コルクの特徴に「酸素を通さない」があるなら、スクリューキャップは悪くないのでは、が、私の個人的な感想でした。

この研究は、
ワインの化学的性質と酸素の発生源の研究がより進めば、
ワインが瓶内で適切に熟成ために必要な最適酸素量を決定することが
可能になる
という点で、未来への期待が大いに膨らみ、大変面白いと思います。

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