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僕の細道(本編)⑧ 信夫文字摺り

ここの話はちょっとややこしい

その昔、中央から派遣された源融ってプリンスが身分を隠し村娘に手を出し、ねんごろになったが「また来るわ!」と言って帰って行っちゃたわけ

待てど暮らせど来るわけないわなあ

で、この地方には昔から石に模様刻んで
布を当てその上から草花をこすって染める技法(文字摺り)っていうのがあり
その石をながめて、さめざめ泣いていたら
石の表面に愛しい融ちゃんの顔が映ったという

娘は待ちくたびれて病に臥していたら融ちゃんから

『陸奥の しのぶもぢずり 誰ゆゑに みだれんとおもふ 我ならなくに』

という歌が届いたとか

そんでもってこの石が有名になっちゃて近在からたくさんの人が来て騒いだりイタズラをするもんだから
村衆はじゃまになって崖の上から蹴っ転がしちゃった

そこを歌に名高い信夫の文字摺り石を訪ねて来た芭蕉は石がなくてガックリ!

半分土に埋まっている状況だったとか
その後、村衆がこりゃマズイと掘り起こしたのがこれ

(写真)

デカイ!

簡単に転がせる石でなないし半分埋まっていたら掘り出すの大変だったでしょうな~

そんで芭蕉が詠んだ句が

『早苗とる 手もとや昔 しのぶ摺り』 芭蕉

昔は文字摺りしていた手が今は早苗を植えています

まっ、皆で思いを込めて歌い上げてきた歌枕も現実はこんなもんだわなって感じ
諸行無常ということですね

ところが話には続きがある

この融君は実際に現地へ行くことを免除された「遥任」だったとか
嵯峨天皇の皇子だしね

じゃあ、この話は何??
。。。それが歌枕なり。

ところでここの受付のおばちゃん、

やたら親切、笑顔いっぱいでいろいろ教えてくれたんですが

「よく見て行きなよ、今じゃ、石が綺麗だよ。除染したから!」

。。。他府県のオイラ達は笑えない!

『夏の宵 しのぶもぢづり ゆめ枕』 無精

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