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人を愛し、人と生きる

「心理学界の三大巨匠」と呼ばれているのはフロイト、ユング、アドラーの3人ですが、その一角を担うアドラー心理学では「子供をホメてはいけない」という独特な教育論が説かれています。

その理由は「賞賛を与えてしまうと、子供はそればかりを期待して行動してしまうから」だそうです。要するに「子供を自己承認欲求の奴隷にしてはいけない」ということですね。

アドラー心理学は日本でそれほど評価されていないマイナーな心理学だったのですが、2013年にアドラー心理学を題材にした『嫌われる勇気』という本が出版されて大ベストセラーとなったのをきっかけに一気にメジャーになりました。

「他人から嫌われることを恐れず、勇気を出して自分が本当にやりたいと思うことをやろう」という論調は「他人の顔色ばかりをうかがって自分の個性を殺してしまう日本人」のハートに強く響いたのかもしれません。

私自身、8年ほど前にこの本を読んだ時にはその革新的な学説に感動して「子供が生まれたらぜひこの教育論を実践してやろう」と決意を固めたものです。

ところが今・・・やんちゃ盛りの3歳の息子を目の前にして、このアドラー心理学は「育児の現場では使えない」ということが骨身に染みて分かったのです。

厚紙のパズルを苦労の末に完成させた息子は目をキラキラ輝かせながら「パパっ、これ見てっ!」と指差します。もう全身から「僕をホメてっ!」というオーラを発していますので、まさかこれをホメないわけには行きません。

だからその期待に応えて、私は息子の頭をナデナデしながら「スゴイっ!君は天才だ。パパも嬉しいよっ!」と全身全霊でホメてあげるのです。

頭の片隅でアドラー先生が「やれやれ、困った親御さんだ・・・」と溜息をついているのが見えるような気がしますね(苦笑)。

でも、「ホメること」はそんなに悪いことなんでしょうかね?

アドラーは「ホメるという行為の背後には、相手を自分の思い通りにコントロールしたいという大人側の自分勝手な欲求が隠れている」と断じますが、私個人に限定すればそんなつもりは一切ありません。ただ単に私は「息子の笑顔が見たいだけ」なのです。

その部分を「コントロールする意図があるじゃないか」と指摘されればそうなのかもしれませんが、ホメずに泣かせるのが正しいことだとはどうしても思えないのです。

「自分の存在価値を誰かに認めて欲しい」という自己承認欲求は全人類に共通する「根源的な願い」です。この欲求を否定して、我々の社会生活は成り立ちません。

西洋占星術の観点で言えば、獅子座の人は「世界中の人から拍手喝采をされたい」と常々思っていますし、山羊座の人は「権力者(または年長者)から有能な人間だと認められたい」といつも願っています。

私のような乙女座の人間は「ミスの少ない丁寧な仕事人」と言われたがっていますし、天秤座や魚座の人は「君のことを心から愛しているよ」と誰かに告白されることをずっと夢見ています。ちなみに、天秤座に月があることを俗に「シンデレラムーン」と言いますが、この慣用句からも天秤座に月を持つ人が「どれほど異性に愛されたがっているか」が感じられますよね?

水瓶座の人ならば「君は他の人とは違う個性的な人間だ」と周囲に言われたくていつもウズウズしているのです。

そんな彼らの切なる願いを踏みにじってまで「教育論的に良くないから、そんな安っぽい自己承認欲求は捨てなさい」なんて言えるでしょうか?

アドラー心理学は「課題の分離」と言って、自分と他人の問題を明確に分けて考えようとします。だからアドラー心理学のことを「個人心理学」なんて呼んだりもするのですが、私たちが社会的な動物である以上、「他人との相互依存関係」から逃れることは絶対にできません。

自然の摂理として、私たち人間は「他人からの賞賛をどうしても必要とする生き物」なのです。

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