telekiness 1話

あらすじ
地球と火星との間で共同開発したカプセル。これは適性があれば念力が使えるようになる新しい武器だ。
そのまま動かす「操縦」見えない力を出す「念波」この二つでカプセルを使用することができ、カプセルを使う者たちは操縦士と呼ばれている。プロは梵天、アマは地天と呼ばれる。
地天学園という育成施設で世間の「念力反対派」や元から超能力が使える「カプセル反対派」他の使用禁止されている武器であれば適性が高いはずの「他の武器の許可を求める派閥」等と向き合っていく。

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 人の有する五感が人に、超人的な力をもたらす。
 知覚、聴覚、視覚、味覚、嗅覚。
 しかしこれらを超越する新しい力が普及し始めた。
 念力。目に見えず、音も無く、匂いもしない。即ち超能力!

「この球は通称“カプセル”という。ボタンを押してカプセルを開いてみろ。中にも小さい玉があるだろう。これが俺たちカプセルに適合する人間と化学反応を起こすんだ」
 担任の金堂が手の中のカプセルを生徒達に見せる。
 カプセルと呼ばれているのは、手の平サイズの球体だ。中央に割れ目があり、ボタンを押すとサザエさんのOPの果物のように開くのだ。芯にある小さな玉がカプセルを超能力の道具に変えている。
 球体を開かなくても念波は使えるが、この芯が無ければこのボールのようなカプセルはうんともすんとも動かせやしないのだ。
「例えばこれを浮かして動かしたい。そうすると……ほら」
 カプセルは金堂の手を離れ、スイッと空中を泳ぎ回った。
 教室に、おおっと小さく歓声が湧き上がる。
「それだけじゃない。中にある球は俺たちの力量次第で見えない念波を出すことができる。ビーカーの中の水を見てみろ」
 実験台の上には、水の入ったビーカーが置いてある。
 ビーカーの真上にカプセルが移動する。カプセルの中心から、水面の中央を棒状に念波が突き破った。
「念波はカプセルの使い手によって差がある。短くて太い念波しか出せない者もいれば、細くて強い念波を使える者もいるし、車のハイビームのように三角状の念波が出る者もいる。これは完全に個人差だ。そしてこれを応用すると……」
 カプセルがシュルルルッと素早く回転し始めた。
 ビーカーは真ん中からパカッとふたつに割れ、中の水はパシャッと弾けた。
「強い念波は使い手の意志によっては物を破壊することもできる。カプセル本体は打撲用途になるが、念波を組み合わせて使うことで用途が広がり実用性も高まるんだ」
 実験台の上に広がった水をタオルで拭き取りながら金堂は続けた。
「カプセルってのは、簡単に言えば超能力のようなもんだ。しかし、この鉛筆を見てみろ……」
 今度は実験台の上に一本の鉛筆を置き、念を込めるように両手の平を鉛筆へ向ける。
「鉛筆よ、動け!……ハァッ!!」
 何も起こらない。
「と、いう風にだな、俺たちの能力はあくまで、化学反応を利用して作られたカプセルに適合しているから生まれる物であって、俺たちが超能力者と言うわけではないってことだ。カプセルが使えるからといって、調子に乗らないように。カプセルがなければ俺たちは無力な人間だ」
 シュポッとカプセルが金堂の手の内に戻り、元通りに閉じた。
「カプセルは通常複数個を同時操作して使う。カプセルは購買に売っているから、増やしたければ自分で買え」

 念力は目に見えない。音もしない。強い念力の使い手によれば遠くからでもコンクリートをも打ち砕き、その先にいる対象を攻撃することができてしまう。見えないので、避けることができない。光線銃の方が汎用性が高いが、それに匹敵する、相手に感知されない、凶器を持ち逃げしたのか念波で証拠が残っていないだけなのか判別がつきにくい新しい武器として暗躍を極めた。危機を感じた人間達はカプセルに適合する人間達を国家が管理することにした。
 学校で適性検査を受けさせて、適性のある人間を招集管理するのだ。
 同級の三木と話しながら俺は手の中のカプセルを転がした。
「鷹峰、それどーしたんだよ」
「親父に貰った」
「ええーっ良いなぁ!変わったカプセル!」
「本当はサンタに貰ったんだけどな」
「それはもう親父だろうが」
「しかも形見なんだよ」
「いや重ッ……」
 親父は俺が生まれる前に死んだらしい。鷹のマークのカプセルは、俺が子供の頃に「お父さんが欲しい」とサンタにお願いして「お父さんの形見です」という手紙を添えて送られてきたものだった。つまり送り主は母親になるのだが、つい最近部屋の大掃除をするまですっかり忘れていた。
 「カプセル操縦士」の中でも、プロの操縦士は梵天(ぼんてん)、アマの操縦士は地天(ちてん)という。俺は操縦士見習いの地天というわけだ。
 地天の奴らはカプセル操縦士育成機関である「地天学園」に通う。学園と言っても学校に通うわけじゃない。あくまで育成機関としての施設だ。
「つってもこれ、全然反応しねーんだよ。不良品じゃねーかな」
「カプセルに不良品もクソもねーだろ。ロボットじゃねーんだから。お前が操縦士として不良品じゃねーのか」
「ンなわけあるか!ほれ、これが普通のカプセル」
 鷹のカプセルをバックパックにしまい、地天学園で入手できる普通のカプセルを取り出す。
「ン念力ィ~~~……」
 ボン!
 念力が暴発するのがわかった。
「やっぱお前ができねーんじゃねーか!ほんとに適合者なのかよ!」
「うっせ!学校の検査で招集かかるんだから俺はすげーんだよ!」
「ほんとに地天学園でやっていけてんの?お前……」
 自分でも絶句せざるを得ないので、返事のしようがない。
 
 
 念力の使えるカプセルが流通しだしたのは20年弱前。
 カプセルの芯となる小さな玉は、ある星の生き物であれば全員が適合者として念力を使えるらしい。
 ある星というのは、鳥火星(ちょうかせい)という体の節々から鳥を感じる人間とさほど変わらない姿をした生き物が統べる星だ。
 カプセルに適合する人間をわざわざ検査し招集をかけるよりも、鳥火星人を地球に呼んでカプセルを操縦させた方が圧倒的にコストもかからないし手早いが、それはできない理由があった。
 鳥火星人は結婚して子供を作るとき、抱き合って溶解するのだ。言葉の通り、雄が雌の身体の一部に溶け込んで消えて死ぬ。消えた雄は雌の腕に鳥のような羽となり残る。バツイチ、バツニと結婚を重ねている鳥火星人の雌ほど、孔雀のように煌びやかで多くの羽を纏っている。
 人間が鳥火星人と交わるとどうなるのかは知らないが、その交配方法が危険視されて鳥火星と地球ではカプセルの輸入や輸出、研究開発などを共に行う友好的な間柄でありながら生物同士の接触は殆ど禁じられていた。万が一にも好意的な間違いが起こって人が死んだり死なせたりすると異星間の関係に傷が入る。地球に鳥火星人が居るのが見つかったら即ニュースになって星に強制送還だ。
 では他の安全な星の生き物から適合者を探す手はないかというと、土金星も水游星も木管星も地球と同じ適合者はいるが鳥火星人のように全員が念力を使えるわけでなく、つまりは地球人は鳥火星との親善の道具としてカプセルを取引し、地球の新しい武器として使用しているという事なのだ。
 
 
『緊急速報です!鳥火星人と思われる男が大量のカプセルを誤って輸送車から放出。カプセル開発センターに到着したと勘違いしたことから引き起こされた事故と思われます。鳥火星人の念力は地球人のものとは桁違いの大きさで爆発の危険性があります。警察は周囲の住民らに近づかないよう呼びかけています』
 地天学園に行くところだった。
 信号待ちの街のエキシビジョンでニュースが流れだした。
「爆発の危険性……ですって」
「怖いわよねぇ」
 夕方の買い物帰りか、奥様方の噂話も耳に入る。
 カプセル開発センターは地天学園の中にある研究施設だ。
(ってか、地球に鳥星人、入れねーんじゃねーのかよっ)
 星と星の間を異星人同士が行き来しているのは想像に難くないが、地球内部での輸送まで異星人が入り込んでいるなんて思いもしない。
 しかも映像を見る限り、監視カメラの記録によると爆発の危険性というより明らかに"爆発している"。
 念力は目に見えない。しかし周囲の物や空気、全てが無味無臭のそれを具現化するのだ。
「よーお。鷹峰、お前、もしかして毎日地天学園に通うつもりか?」
「コンドー」
「先生をつけなさい、先生を」
 コンビニの袋をひっさげた金堂に背後から声をかけられた。
「学園つったってただの念力者育成機関だぜ。今回の招集から一週間、通い詰めてんのなんてお前だけだ」
「アンタも毎日いるだろうが」
「俺は教師だからな!毎日いねーとあぶねー奴だよ逆に」
 冒頭の講義を受けて一週間。俺は上手くカプセルを操縦できない自分を正すために、というか「念力者って凄い奴!天才!」っという称号を得るために学園に通い詰めていた。
 しかしながら結果は暴発。爆発。爆散。
「ちょっとここでやってみろや、そんで上手くできたら今日お前学園休め」
「はァ!?嫌だよ!つーかできるかどうかなんて担任のアンタが一番知ってんだろ!」
「いやいやこういうのは根詰めすぎる方が良くないんだって。才能あるのなんて上位の2%……いや1%いたらいい方なんだから、ちょっとぐらい実力に粗がある方が普通なんだよ。ほれ、念波出してみろ」
 ポイっとカプセルを投げられる。
 受け取り切れる高さで投げろや!
 近くで投げた割に高すぎるカプセル。取れない。ヤバい。
 つい念力を使ってしまった。
 ボンっ!!
 通常通り。暴発。爆発。
『鳥火星人の念力は地球人のものと違い爆発の危険性が――』
「ねぇさっきの、見た!?」
「念波、爆発してたんじゃない!?」
「もしかしてニュースの男って――」
「ってオイ!逃げやがった!!」
 信号は青になり、金堂は一足先に現場から逃げていた。
『周囲の住民への聞き込みによると、開発センター付近の信号でも先ほどカプセルの爆発が観られたという事で』
「ボンッ!ってねぇー。いや、音なんて聴こえないわよ。でもわかるじゃないですかー」
「空中の高いところだったから、どんな人がやったのかまではわかりませんでしたけど」

「オイ!アンタのせいで俺ァ無事犯罪者扱いだよ!」
「お、来たか。皆勤偉いな。しかしちょっと脅しただけじゃお前の真面目は変わんねーな、こりゃ。あとあの件は別に犯罪じゃねーよ」
「真面目で来てんじゃねーんだよ!俺は上手くなりてーの!」
「そんなことより先生、授業はしないんですか」
 先に来ていた鷲尾萌結瑠(わしお もゆる)が手を挙げた。
「ぶっちゃけお前らみたいな真面目ちゃんがいなけりゃ俺、オリエンテーションの招集日以外授業しなくてもいいんだけどね……」
「授業を開始してください」
「鷲尾、お前は鷹峰と違って才能あるから授業は必要ねーんだイダダダやりますやるやる」
 ビーッと鷲尾のカプセルが数個、金堂に向かって念波を集中砲火する。
「じゃあカプセルを水平に複数個空中に浮かせる訓練だ。水平にな。バラバラは駄目。ハイじゃあ始め」
 俺も鷲尾もユラユラとカプセルを浮かせながら複数個を同時に操作する辛さに耐える。
「つってもなー、こんなんばっかじゃ天才の足元にも及ばねーぞお前ら。15,6年前物凄い操縦士が居てなぁ……その人は大量にカプセル使うタイプじゃなかったけど、念波もカプセル操縦の一撃の重さも一級品だったんだよ」
「金堂先生、今の私は水平に近い状態にできていると思われますか」
「いやまあ、水平だろ。これできない鷹峰の方が普通はヤバいからね。水平にした状態で円にして回してみろ」
「ハイ」
 鷲尾が複数のカプセルを円状にくるくると回す。
「う……うぉぉおおおお!!!!」
 一方の俺はというと。
 パパパパパン!!!浮かせていたカプセル全てが念波を暴発させて地面へ転がり落ちていく。
「鷹峰お前……強すぎだろ」
「うっ……いやでもほら、一個だと」
 ドボッ。
 金堂のみぞおちに一つ、カプセルがヒットした。
「帰れ」

「鷹峰君」
「鷲尾」
 さっきの今で金堂は職員室へ帰ってしまった。帰宅する際、鷲尾に話しかけられる。
「私、見ちゃいました。貴方が持ってる珍しいカプセル」
「珍しい??あー、コレか」
 鷹のマークのカプセルを取り出す。
「あ!それ!それです!」
 興奮したようにパッと顔を輝かす鷲尾に悪い気はしない。
「一週間前……このカプセルを見かけてから"裏"の世界では早くも価値上昇。一番に手にした者には有り余る財貨が入ってくるというお宝モノ!」
「……え?これってそんなに凄いの」
「凄いですよ。地球には普通のカプセル以外にも特別なカプセルがいくつかあって、その全部が判明しているわけではありませんがこれはその内の一つだと思われます」
「マジかよ。そんなにスゲーならオークションでもやって一山当て……ってこれ親父の形見なんだった」
「お父様の」
「ああ。だから売るわけにはいかねーな」
「なるほど。でしたら力ずくで行かせていただきますね」
「はぁ!?!」
 いくつものカプセルがいつの間にか宙に浮いていた。
 ビーッッ。ビーッ。ビーッ。全てのカプセルから念波が俺に向かって放出される。
 細くて強いタイプの念波なのだろう。当たると勿論強さに応じた痛みが襲う。
「うわっ……と」
 教室を出て逃げの一手を打ってみるものの、カプセルとは宙に浮き更に追跡も可能なのだ。カプセルの後から鷲尾がゆったりと追いついてくる。
 カプセルがいくつか前方に回り込み、退路を断たれた。
 縦にも横にも全てをふさぐ壁のように鷲尾がカプセルを配置する。これは念波を使うまでもない。
 ドドドドドドド!!!!
 カプセルがいっぺんに俺をボコボコに殴った。
 思わずコロコロと落としてしまった鷹のカプセルを鷲尾が拾い上げる。
「それではこれは頂いていきます……私は操縦士と認められる検査をしたのは今回が初めてですが、以前から特別なカプセルを集めるコレクターとして名を馳せていたのです。その名はフェニックス……それではまた、ここで会いましょう」
「待てコラァ!」
 スタタ……と走り去ろうとするフェニックスもとい鷲尾に叫ぶ。
 鷲尾は俺にぶつけたカプセルを回収せずにその場を去ろうとしたのだ。
 カプセルというのは、適合者であれば誰でも操れる。
 例えば、他人がさっきまで使用していたカプセルとか。
 例えば、他人が手に持っているカプセルとか。
「んのやろォ……」
 俺はカプセル操縦士としては大抵の奴より"下"だ。それでも一つだけは負けないもんがあった。
 それは念力量だ。『鳥火星人の念力は地球人のものと違い爆発の危険性が――』『鷹峰お前……強すぎだろ』アナウンサーと金堂の声を思い出す。
 行く手を阻む壁を作るためにも、大量にカプセルを使った鷲尾は正解だ。でもその全部を「奪り合い」したとしても俺が勝つ。
「全部……動け!!」
 地面に落ちているカプセルを全弾鷲尾に向けて放つ。
「わわっ。私としたことが」
 自分が攻撃に使ったカプセルが今度は自身に向けて飛んできたのを見て鷲尾が慌ててコントロール権を奪おうと加勢する。
 グググッと俺達の間でカプセルが右往左往する。俺が圧倒的優勢。
「わっ。わっ。参りました」
 鷲尾がペコリと頭を下げる。
「とでも言うと思いましたか」
 スコーン。
 俺の念力が抜けたカプセルが俺の頭を強打した。
「待て!せめて鷹のカプセル置いてけ!」
 鷹のカプセルのコントロール権だけは取られまいと今度は鷲尾の手に念力を集中する。
 が、そうだった。このカプセルは不良品よろしく反応が悪いのだった。
 鷲尾は鷹のカプセルを離さない。
「いい加減手ェ離せ!!」
「嫌です!貴方こそ諦めて……」
「元々俺んだろうがそれ!」
 今度は念波を出さずにグーッと鷹のカプセルを上昇させる。
(え!?!動かせた!!)
 空に浮かぶカプセル。宙吊りになる鷲尾。
「なッ……あれ!?このカプセル、私の念力が利きません!!」
(俺の念力もいつまで持つか……それに、念波が爆発したら鷲尾は怪我する)
「鷲尾!危ねぇ!手ェ離せ!!」
「この状況で手を離したら落ちて死んじゃいます!コントロールは私がします!鷹峰君は念力をやめてください」
「そしたらその玉持っていくだろうがおめーは!」
「お話になりません!!キャアアア手が!もう限界です!!」
「オイイイ!!絶対手離すなよ!!絶対だぞ!!」
 空に浮かぶカプセルと、カプセル一つに全体重を懸けている鷲尾。
「オイ!鷲尾!そのリュックの中身、何だ!?」
 ハッとして鷲尾が背負っているリュックの中身を質問する。
「何って……全部カプセルですけど」
「しめた!そしたらお前、リュックのカプセル風船みてーに操縦しろ!そしたら安全に降りられる!」
「今はそんなの無理です!それどころじゃありません!」
 ヌル……ッとカプセルを掴む鷲尾の手が落ちかける。
「もう……駄目ッ……」
 一か八か!!
「怪我しても恨むんじゃねーぞ!!」
 鷲尾のリュックに念力を集中する。
(浮け!!全部!!)
「キャアアア!!もう落ちます!」
 鷲尾が気球替わりのリュックを背負ったままフワッと落ちてくる。
 ガクンと高度を失う身体を抱きとめた。
「え?お前ら何してんの?」
「「ウワッ!!!」」
 金堂がまたしても背後から現れた。
「あ!カプセル!」
 地面に降り立った鷲尾の手からバッとカプセルを奪い返した。
「あれ?お前そのカプセル……」
「やはり先生も知っていましたか」
「知ってるも何も……いや、15、6年前の話をしただろ。"鳥シリーズ"っつってな、鳥人並みの念力量を持った超人的な操縦士が居たんだよ。その為に"大きすぎる念力"でもまともに操縦・念波発動できるように"念力を抑える"ように作られたのがその鳥のカプセルだよ。"特別なカプセル"って言やぁ聞こえはいいが、大抵は開発した時に携わった操縦士の特性に合ったカプセルが各家系に受け継がれてるだけのこった。鷹峰の場合は念力量が大きい家系なんだろう」
「俺……いつも念波が暴発して」
「そんじゃあそいつァお前のために誂えられたもんだと思っとけ」
「俺のための……」
 ぐっと鷹のカプセルを握りしめた。
 確かに、念波は出なかったが念力のコントロールはよく効いた。だからあそこまで空中上昇したのだ。

 翌日。
 今度は教室でなく施設へ向かう途中で鷲尾に出会った。
「鷹峰君」
「鷲尾。鷹のカプセルは狙ったってお前には使えねーぞ」
「鷹峰君こそあのカプセルをきちんと使いこなせるんですか?昨日は私から奪い返すどころか空中に浮きまくりでしたけど」
「ぐっ……」
「というような世間話は置いておいて。昨日の鳥火星人の輸送事故をご存知ですよね」
「ご存知も何も犯人扱いされたからな。それがどうしたよ」
「なんと犯人は星に戻ると罰処分が待っている可能性があるだとかでこの学園内を逃げ回っているそうです。カプセルを使おうにもあちらの方が念力量が大きすぎてカプセルのコントロール権が取れないので地球人では捕まえにくいんだとか」
「ほーん。そりゃ大変だな」
 カプセルは銃やナイフといった殺戮用の武器とは違いこういう事態によく用いられるモノだった。それが相手が異星人だから効かないのだ。
「そこで鷹峰君の出番です」
「は?」
「昨日の話からしてあなたの念力量ならもしかすれば……ホラ行きますよ。犯人の隠れそうな場所をリサーチしておきました」
「やらねーよ!てかできねーよ!昨日のだって全部たまたま上手くいったんだっつーの」
 鷲尾に腕を掴まれてずりずり引きずられていく。
「しっ!あの階段裏……人が来れば逃げやすいし何もなければ隠れていられる。倉庫やトイレなんて探すよりこういうところが一番なんですよ」
「つーか本当に居所を当ててんじゃねーよ!どうすんだよコレ!」
 こんなことになるならカプセルの輸送ぐらい護衛に護衛を重ねておけよという話である。
 しかも本当に居た。
 カプセルが大量に入っているであろう袋を一つ引っ提げて階段裏の様子を窺っているようだが、俺達がいるのは彼の後ろなので丸見えである。本当にこんなんで一晩中逃げ続けられたんだろうか。
「私が行っても良いのですが、一つ問題点があります」
「なんだよ」
「鳥火星人の念力量による爆発です。私が彼を捕まえたら、カプセルが爆発していないのが監視カメラ等に映ったり周囲に現れた人に撮影される恐れがあります。つまり私が彼に危害を加えたことがばれてしまう」
「なるほどな。俺なら……」
 力いっぱい念波を出せばほぼ100%、暴発する。しかも相手は地球人の念力の弱さを知っているだろうから、念力同士のバトルになったとしても全部相手がやったことにすればいい。俺がやったとバレずに捕まえたという功績だけ得られるって寸法だろう。
「オイ、あんた!」
「!!!!」
 気が付いた犯人がとっさに逃げようと走り出す。と同時に数個カプセルを浮かせて行ってしまった。
 浮いているカプセルの場所を通ろうとする。爆発の嵐。
「イダダダ!盾にしてんじゃねー!」
「危なかったです」
「待てこのッ……」
「あ、鷹峰君それは」
 俺は鷹のカプセルを取り出して反対の腕で持ち手を支えた。
「オラァァ!!」
 いつものコントロールの意識なしに100%のつもりでカプセルから念波を放った。"強すぎる念波を抑えるカプセル"なら、遠慮なしで最高出力出せればまともな攻撃ができるはずなのだ。
 ドウッ!!と周囲の木々がなぎ倒され土が削れ階段はバキバキとひび割れた。
 強すぎる念波をモロに喰らった犯人は、地面にノビていた。
「何してんだお前ら」
「「ウワッ!!!」」
 金堂がまたしても背後から現れた。
「金堂先生。件の犯人を捕獲致しました」
「え?コレ犯人なの?」
「私のリサーチによれば間違いありません」
「いやでもコレお前……なんかしたろ。ノビてんじゃん完全に」
「鷹峰君がやりました」
「オイ!!え!?俺のせいかコレ!?」
「お前異星間の友好が……コレ……んなことしてただで済んだらいいけどな……。まぁ犯人は縄ででも縛って、お前は上からの処分下るまで職員室で待機だな」
「ええええ!!!」



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