telekiness 3話


#創作大賞2024 #漫画原作部門 #少年マンガ #少女マンガ #青年マンガ

「お前ら4人!
 ノーコンの遠久!
 爆発の鷹峰!
 才能無しの明賀!
 効率無視の火森!
 お前らは基礎的な技術どころか精神的な所からやり直しです!」
「「「「はァ~」」」」
「聞けやお前らァ!!」
 金堂の怒号に対してやる気のない落ちこぼれクラス、4thである。
 4thというのは、カプセルという念力による道具の操縦能力における順位、上から順番に1st、2nd、3rd、4thと成績順に振り分けられたレベル分けの最下位のことである。
 地球にはカプセル適性というものがあり、適性がないとカプセルによる念力は使えない。なので地天学園、カプセル適性のある者のみが招集され訓練を受けることができる。施設へと来られるだけでも世間的には羨ましい事なのだが、その中にも落ちこぼれは存在するというわけで。
 俺は無事に4thクラスとして早速落ちこぼれの仲間入りをしていた。
「まず遠久の場合!
 お前は球速は早いがコントロールが悪い。これは相手を追いかけまわして当たり判定を確実なものにするカプセルの特性を全く生かせていないことになる。
 普通の武器ならまずもって避けたものや当たらなかったものは無効だが、カプセルは相手を追いかけて攻撃する。これはコントロールがないと絶対できない事なんだよ」
「……」
「次に鷹峰。お前もコントロールが悪い。お前の場合は念力量が大きすぎるがそれをコントロールできていないんだ。爆発しかしないカプセルなんてクソの役にも立たねぇよ」
「……」
「明賀。お前は鷹峰の逆だ。念力量が極端に少ない。それでも適性検査で適性ありに判定されるぎりぎりのラインで念力量がある方だ。だからお前はここにいる。弱い念力でカプセルを動かせるようになるために頭使わなくちゃならねぇのがお前の場合だ」
「……」
「火森。あんたは一番タチが悪い。念力量にもコントロールにも問題がないし実力もある。それでも根本的に俺ら教師がこの地天学園で絶対に生徒に教え込まなけりゃならない部分をあんたは犯してる。
 鷹峰、例えば銃が日本あるとする。その2つで人一人を倒す場合、最短で倒す方法はなんだ」
「2人が一本ずつ銃を持って相手を狙う」
「そうだ。銃が2つあるなら両方でもってドタマかち割るのが一番早い。
 それが火森の場合はどうだ。無駄なアシスト。奪える球を奪らない。狙えば当たる球を味方に投げさせる。
 完全に遊んでやがる」
「遊んでるだなんて、人聞きの悪い」
 火森がふふふと笑った。
「それが問題なんだよ。
 異星間の交流の発展によってカプセルが開発され俺たち人間は念力が使える人間と使えない人間に別れることになった。しかもカプセルは銃刀とは扱いが違う危険性の低い武器として扱われている。ここで困る人間ってのが、出てくるだろう」
「困る人間?」
「そうだ。カプセルを使えない……つまり俺たちのことを超能力者か何かに見えている一般の方々だ。異星間の親善のためにカプセルが使用されなくなるということは現時点の地球ではありえない。しかし自分達には使えない力を持った得体のしれん奴らがカプセルを好き放題使っていたら、怖いだろう。
 火森のようにバリエーションにとんだ戦闘パターンを持っているというのは実力がないとできんことだ。バトル漫画やなんかなら大いに盛り上がるだろうが、最短で相手を倒せる方法があるのにそれをしないのは遊んでるのと一緒だ。市民の皆さんを恐怖に陥れてはいけない。
 カプセルは異星間の友好と警備やボディガードの為に効率的な手段でもって使われるべきなんだよ。
 というのがこの地天学園での教えだ」
「「「「へぇ~」」」」
「聞いてんのかお前らァ!!」
 金堂の怒号が響く。
 が、全国に地天学園のようにカプセル操縦士を育成する期間はいくつもあるとはいえ、大抵の奴らは3rdまでに収まっている。たった4人の落ちこぼれになってしまった俺たちにやる気など到底出るはずも無かった。

「4thでの授業はどうですか?」
「鷲尾!」
 授業後、2ndのはずの鷲尾が現れた。
「どうもこうもボロカス言われて終わりなんですけど」
「でしょうね。たった4人でしたしよっぽどのことでないと選ばれないでしょうから」
「ぐっ……」
 ぐぅの音も出ない。
「しかし鳥火星人も念力量が大きすぎて爆発事故起こしそうになってたんだろ。俺にカプセルの爆発を抑えろなんて無理じゃねえかな」
「あら、鷹のカプセルがあるじゃないですか」
「あれはあれで全力出さねぇと動かねぇんだよ。同じ4thには念力量が少なくて悩んでるやつもいてさァ」
「ありますよ」
「は?」
「だからありますよ。二人の念力でコントロールできるカプセル」
「ええ!?」
「貴方とその方で二人はプリキュアのメタモルフォーゼのように念力を使えばちょうどいい塩梅になると思いますけど」
「プリキュア見たことねーからわからねーよ。え!?いや、持ってんの!?そのカプセル」
「私は持ってませんが、そういうカプセルはあります。流通してたらとっくに追いかけてますが無いってことは鷹峰君のように家系で受け継がれている物なのかもしれません」
「ええ!?じゃあ駄目じゃん」
「私は一人で使うので探したことはありませんが、探してみなければどこにあるかもわかりません」
「でももしあったら……俺と明賀が相棒になれば念力はうまく使えるってことだよな」
「果たして二人で一人分の働きしかしないカプセル操縦士が雇われるかは不明ですが、そういうことになりますね」
「まじかよ、もしお前が見つけたら」
「譲りません」
「なんでだよ!そういう流れだったろ今」
「私はカプセルコレクターフェニックス……コレクションを他人に譲ったりなど絶対にしません」
「なんでだよ!!」

「玲央と梨央は二人でひとつ。先生、このカプセルの意味わかる?」
「うーん、何かなぁ」
 3rdの担任、水原は妙な双子に絡まれていた。
 双子の持つカプセルには二つの円で一つを描くメビウスのマークが描かれている。メビウスのカプセル。これが二人で一つの力を引き出す「双子の家系」の彼らのカプセルだった。
「探すつってもなぁ……一体どこをどう」
「あー!!タカミネ!!」
「お兄ちゃん!!」
「うぉっ!!あの時の……双子!?」
 鷲尾と別れてフラフラとあたりをうろついていた俺は双子に見つかった。
 腰回りに纏わりつかれてバランスを崩す。
 先に纏わりつかれていた水原がホッとした様子で去っていく。
 それよりも玲央が手にしているメビウスのマークのカプセルが気になった。
 特別なマークが入っているカプセルは、自分の鷹のカプセル以外に見たことがない。
「な、なぁお前らそのカプセル……」
「お兄ちゃん、このカプセルのこと、知りたいの?」
「い、いやまぁ……」
「じゃ、教えてやるよ。このカプセルは俺たち"双子のカプセル"。二人の念力で一つを動かす、二人で一つの俺達じゃないと動かせないカプセルなんだよ」
 玲央が自慢げにカプセルのマークを見せた。
「二人で一つの……って、それだぁー!!」
「えっ!?」
「ちょっとお兄ちゃん!?」
 まさしく鷲尾に説明されたばかりのカプセルだった。
 おもわず飛びつく。
「な、なぁ、そのカプセル、俺にちょっと貸してくれないか。確かめたいことがあるんだ」
「駄目だよ。これは貸したりあげたりしちゃ駄目だってママとパパが言ってたもん」
「頼む!ほんのちょっと実験する間だけでいいんだ」
「まぁそれなら……」
「玲央!ダメだってママとパパに言われたでしょ!!」
「ハッ。そうだった。駄目だよ。絶対駄目」
「かくなる上は……!千円でレンタルを」
「お待ちなさい」
 ボコッ。
 カプセルが俺の背後から頭にヒットした。
「まさか学園内にあるなんて……世の中狭いもんですね。でも高峰君、それはいけません」
「わ、鷲尾……」
 鷲尾が背後から現れた。
「私が鷹のカプセルを奪おうとしたとき、断固拒否したのはどこのどなたですか」
「お、俺……」
「自分のコントロールが上手くいかないからって子供からカプセルを取り上げようなど」
「いや借りるだけ……」
「駄目!!」
「絶対駄目!!」
 立ちはだかるように断固拒否を訴える梨央と玲央。
「あれ!?ちょっと待っ」
 ゴウッ!!双子が手を繋ぎ、掲げられたカプセルから念波のメタモルフォーゼが俺の顔面にさく裂した。
 ボロボロになった俺の顔面を見て双子がキャッキャしながら去っていく。
「大丈夫ですか鷹峰君」
「オウ……」
 こうして二人の念力で一つのカプセルを動かすメビウスのカプセルは、見つかりはしたものの手には入らず終いとなった。
 

 次の日。
「すまんな、明賀……」
「??」
 事情を知らない明賀にとりあえず謝っておいた。

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