telekiness 2話
#創作大賞2024 #漫画原作部門 #少年マンガ #少女マンガ #青年マンガ
ライン別能力評価。
地天学園における能力の高さを表すものである。
一番上から、1st,2nd,3rd,最後に別枠の4th。1stは主に主席争いをやるような人間の称号で、大抵は2nd以下になる。
「今日は全員絶対出席しねぇといけねーダリィ授業を始めます。というわけでオリエンテーション、種目はドッヂボール~」
相変わらずの舐めた授業。
金堂の間延びしたコールでドッヂボールの組み分けが行われる。
なんでも学園内でのヒエラルキーとなる能力評価を付けるためにドッヂボールで能力を見るらしい。
「ねぇねぇお兄ちゃん、梨央たちはなんで同じチームなのかな?」
「お兄ちゃん弱そうだよ。明らかに腑抜けた顔してるよ。玲央たちは同じくらいの実力だと思われたのかな」
「んだこのガキども……」
右も左も同じ顔。違うのは性別くらいだろう。双子の子供の登場だ。
地天学園では基本的に高校一年時の学校での検査を受けてカプセル適正が判別されるが、家庭の事情や本人の希望次第ではもっと早くに適性検査を受けて学園に通うことができる。
鷲尾のような検査前から秘密裏に操縦士をやっているケースもあれば、この双子のように正式に子供の頃から訓練を受けるケースもあるという事だ。
「ガキじゃないよ。もう9歳だもん」
「オレたち10歳近く生きてるよもう。ピチピチのハタチだったお姉ちゃんがミソジのアネゴに進化するぐらいの年月生きてるよ」
なんつー例えだよ。
双子の舐めた絡みをブロックしていると、今度は金堂よりも年上であろう大人たちが現れた。
「こんにちは。同じチームみたいだね。俺は火森(ひのもり)、こっちは土岩(つちいわ)」
「どうも……」
「驚いてる?こんな大人が同期なんて」
「はァ、まぁ……」
「俺たちはボディガードなんだ。この国じゃ銃や刀は使えないから、カプセル操縦士としてもやっていくために再教育を受けに来たんだよ。ちなみに俺は36歳だよ」
「俺はまだ35だ」
「ボディガードって、思ったより大人なんすね」
「単なる弾除けとしちゃ若いぐらいなんだけどね」
「えっ」
「長生きしたいし頑張らなきゃね」
「えっ」
「君の名前は?」
「鷹峰望……」
「……鷹峰?」
「あ?はい」
金堂がカプセルをいくつも両手に持ち見せながら説明を開始した。
「ドッチボールに使うボールはカプセル。球は時間経過ごとに増やす。最大で6個。キャッチする時も投げる時も念力の使用のみが許される。もちろん念力で操縦するわけだからカプセルは狙った相手を追いかけて当てることができる。コントロール権を奪ってボールキャッチしねーとほぼ確実に当てられるぞ。あと野球みてーな球速が出ることもあるだろう。危ねーから首より上は反則でリタイアだ。念波攻撃はしてもいいがこれも危ねーから反則でリタイア。反則でリタイアになるとどうなるかというと4th行き確定だ。球の持ち時間はそれぞれ3秒まで。ここまでで質問のある奴は?いねーな。じゃスタート」
金堂がセンターラインで一つカプセルを投げる。
土岩がカプセルを引き寄せてキャッチした。相手より土岩の方が念力量が強いという事だ。
「よっしゃ!マイボール!」玲央のはしゃぐ声。
土岩がスイーッとカプセルを投げる。
相手チームの一人がボールキャッチしようとするが、土岩のコントロール権が強すぎてカプセルを奪えず、アウトになった。
「Aチームアウト。今度はAチームのボールから。ついでに2個目投入だ」
相手チームから2つのカプセルが飛んでくる。梨央がジャンプしてキャッチした。火森はボールを奪わず体の間近でのみ操作したのか、カプセルがグインと迂回した。そのまま通り過ぎてAチームの外野へカプセルが飛んでいく。金堂が何やら手持ちのボードに書き込んでいるのが見える。
梨央が投げたカプセルは相手チームの一人が野球のキャッチャーのように受け止めた。
「先生!あの人念力使ってない」
「反則じゃねーから続行」
「えー!!」
すぐに異議を立てるが速攻却下されていた。
相手の外野が投げたカプセルを味方が受け止めきれず取りこぼしアウトになった。相手の念力が球速に変わるタイプだったからだ。金堂がボードにメモを残していく。
「Bチームアウト。ついでに3個目のボール投入。ボール2個Bチームから、ボール1個Aチームから」
金堂が投げたボールをついに受け取った。
(コントロール、コントロール……)
意識し過ぎた念力は弱すぎてカプセルが相手に届くまでに落ちていき相手フィールドでコロコロと転がった。
「何してんだよタカミネー!!」
「ちょっとお兄ちゃん!!」
「悪かったなへたくそで!!!」
玲央と梨央の非難に開き直って叫ぶ。もちろん金堂のメモの手も進む。
いつの間にか味方ボールはゼロで相手ボール3になっている。
「引き寄せて奪う……」
呟いてボールを引き寄せようとしたが、誰かにグンッとカプセルたちが引き寄せられて逸れていく。火森だ。カプセルはそのまま土岩の手元に3つとも収まった。
あり得ない球速で3つとも土岩が飛ばしていく。相手チームは3人アウト。
「Aチーム3人アウト。4個目のボール投入。ボール全部Aチームからスタート」
4つ同時にカプセルが飛んでくる。
「キャンっ」
子犬の鳴き声のように梨央が吼えた。
顔面にカプセルが当たったらしく、赤く痕になっている。
「首から上は反則っつってんだろーがもぉ~。遠久、お前は反則で離脱。追加ボール5個目Bチームから。Bチームボール2個持て」
「はぁ~!?的が小さすぎんだろ!!」
「おめーがノーコンなんだよ!さっさと離脱しろや!!」
遠久と呼ばれた同い年ぐらいの少年がぶちぶち言いながら金堂のもとへ走って行った。
「ついに……来た……この複数コントロールの実力を……!!!」
「鷲尾!!」
相手チームに居た鷲尾がボール3個を土岩よろしく一気に飛ばした。
「って俺狙い!?!」
ここは念力量の多さを生かしてカプセルのコントロール権を奪い上手くキャッチしたいところだが、俺がそんなにうまくいくはずもなく。ぼこぼこにされて外野行きである。
「Bチーム1人アウト。追加ボール6個目投入。ボール2つAチーム、ボール4つBチームから開始」
このままでは確実に4th行きである。別枠で4th、ということの意味は分からないが、カプセル適性はあるが実践に向かない人間の掃きだめのようなクラスであることだけは自覚を持ってなんとなく感じ取れる。先ほどの遠久とかいう奴も反則なのだから4thだろう。
(俺みてーな奴が沢山いるクラスに落ちてたまるかってんだ!!)
「うぉおおおお!!!」
「!?!!」
「あいつ一気に!!!」
「おっと、凄いね」
行き交っていたボール6つを一気に引き寄せる。
「放て連弾!!唸れ俺の!!」
爆撃波――
ズババババババン!!!!カプセルが相手チームのコートで全て弾け飛んだ。
「痛ってェ!!」
「キャー!!」
「うわッなんだこれ!?!」
Aチームの悲鳴が続いた。
「あれ?」
「鷹峰、カプセル破壊で反則の上失格!!離脱!!!!」
「あれェ!?!」
(爆撃しちゃー不味いだろ!!俺!!)
「おめーらはどうしようもねぇな!!Aチーム6個ボールから始めェ――」
金堂の言葉に、隣に立つ遠久と顔を見合わせた。
「「……」」
「終了ー。土岩が一人残ってBチームの勝ち。じゃ、クラス分けを発表していくからよく聞いとけよ」
1stから順に名前が発表されていく。
最後まで残った土岩は勿論1st。鷲尾は2nd、双子はまだ子供ということもあってか3rdのようだった。
「えー、4th。遠久(とおひさ)、鷹峰、明賀(はるか)、それから火森」
「あれっ」
火森が小さく零した。
「今期の主任は俺だがクラスごとの担任はこれから変わる。俺は4th担任だ。これからは各クラスごとの担任に付いて行くように」
「あ、ひ、火森さん……一緒っすね」
「ちょっと計算違いだったかな。でもこれから、よろしくね」
「ハ、ハイ……」
4th判定が今一つ響いていない火森である。
(計算違い??)
彼の実力は本当は別なもんということだろうか。
「ああ……僕は念力なんて本当はこれっぽっちも向いてないのに……才能なんてなかったんだ……」
ぶつぶつ辛気臭いオーラに身を包まれて凹んでいるのは明賀哉太(はるか かなた)。ドッヂボールでは活躍しているところも見なければ何かやらかしている場面も覚えていないぐらい気配が薄かった。
「ちっ、俺はチビの顔面に当てちまったからかよ。あんなもんストライクゾーンが狭すぎだろうが」
違う意味でぶつぶつ呟いているのは遠久渉(とおひさ わたる)。ノーコンの上に不良チックである。
「ま、お前ら下手の掃きだめみてーなもんだ。気負わずに行けや」
「ちっ」
(し、舌打ち!!)
金堂の追い打ちに遠久が舌打ちする。
(つーか最下位クラスだよ……やっていけんのか、俺ェ?!)
入学から一週間。ついに災難の訪れである。
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