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そこに愛

好きな食べ物を聞かれた時に、お子様ランチとこたえることが多い。あとは、たこさんウインナーも好き。

と、答えているのは、もうお酒も飲める、形式で言えば" オトナ"のわたしである。

好きな食べ物として挙げる、とはいえ、別にオムライスがすごく好きとか、ハンバーグがすごく好きとか、ウインナーが特別とか、そういうんじゃなくて、もちろん好きだけど、味が最高に好きとか、そういうのじゃない。

「好きな食べ物」の「好き」が、よく食べたい、とか、味が好きだ、とか、最後の晩餐にするなら、みたいな意味が含まれている「好き」であることはよくわかっているし、もちろん味も見た目も大好きだし、でもそれ以上に、わたしはお子様ランチとか、タコさんウインナーの概念がすきだ。

オトナ が、子ども のために、好き嫌いが多くて、家の食事では嫌いな食べ物も出てきてイヤな気持ちになってしまう"お子様"のために、楽しく美味しくご飯が食べられるようにとがんばって考えた、というその背景がたまらなく愛おしい。
まっすぐなウインナーも、丁寧に切れ込みを入れる。焼く前に足はできないけれど、フライパンの上で焼いたらその切り込みが開いてタコの足みたいになるんじゃないか?っていうそのアイデアが、ほんとうに愛おしい。

でも野菜も食べて欲しいからって、お子様ランチにはケチャップが使われていたり、申し訳なさそうに端っこの方にパセリがいたりする。見た目に気を遣って、旗が立っていたり、とにかく徹底的な見た目の配慮が、あまりにも大人の仕業でかわいい。お子様、のためにこんなにがんばれる大人がかわいい。

誰かのために考えられた食べ物が好きだ。食べ物に問わず、花束とか、お手紙とかもうれしい。
バレンタインデーの前日に作られた本命チョコとか、母親が受験前につくるカツ丼とか、お父さんが土曜日に作るカレーとか、バイトから帰ってくる恋人に、駅に着く時間を聞いて、ちょうど良い時間から揚げはじめるフライとか、そういう背景とか、誰かへの誰か、が明確にわかるものが愛おしくてたまらない。金曜日の夜のスーパーで、安くなっているビールもかわいい。

東京には、大人のためのお子様ランチが食べられるお店があるそうだ。大人が、かわいい見た目のご飯を大人にも食べて欲しい、童心にかえってほしいと考えたメニュー。なんてやさしいんだろう。

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