家電
「ねえ秋人ー?」
「何ー? 麻衣どうしたの?」
「ドライヤー壊れたんだけどー」
「またー? コンセント挿さってませんでしたみたいなオチじゃなくて?」
「ちゃんと挿してますー。馬鹿にしないでくださーい。」
「分かった分かった。ごめん。」
「もういいからとにかくきてー。」
「はいはい。ちょっと待って。」
「ねえ秋人、見てよこれ。」
「ほんとだ。全然風出ない。」
「でしょー。」
「でしょーじゃないよ。麻衣、もうドライヤー壊すの何回目?」
「今年に入って半年間でもう3回・・・。てか、壊したくて壊してるわけじゃないもん。そういう体質なだけだもん。」
「困ったちゃんだなまったく。まあそこまで高いもんじゃなかったからいいけど。」
「えへへ・・・。今週末電器屋行って新しいの買お。」
「OK。あとで下調べしよう。」
「えーめんどくさい。」
「んなこと言うな。ただでさえ麻衣は優柔不断なんだから。麻衣が電器屋に長居すると売り物が壊れかねない。」
「えーちょっと言い過ぎー。さすがにないでしょ。」
「ごめんごめん。でも前テレビ見に行った時、麻衣が近づくと一斉に画面にノイズ混じり始めてたじゃん。忘れたとは言わせないよー。」
「うー・・・。確かにそうだったけど・・・。」
「だから、下調べして麻衣が電器屋に滞在する時間を1秒でも短くするの。OK?」
「・・・分かったよ。ちゃんとやりますよ。」
「うん。それでよろしい。」
「ちゃんとやるから、その代わりなんかお菓子買ってよ。」
「分かった分かった。300円までな。」
「遠足かよ。」
「ただでさえお金に余裕ないのに、あなたが壊したドライヤー買わなきゃいけないんだから、そんなに無駄遣い出来ないの。」
「それはごめんなさい・・・。でももう一声なんとかならない?」
「・・・500円。」
「もう一声。」
「もうだめです。」
「分かったよ。」
「ほんとうちの家計カツカツなんだから。」
「はいはい。でも500円はなんとしてでも捻出してもらうからね。」
「分かった分かった。約束は守るよ。」
「絶対だよ。」
「はいはい。」
「じゃあそうと決まれば早速ドライヤーを選んでいきますかね。」
「なに? 急に乗り気じゃん。食い意地はってんな。」
「ふん、言ってろ。あ、ねえねえこれなんてどう? 値段の割に風強そうだし、デザインもいい感じだよ。でもデザインで言うとこっちの方が好きだな。秋人は? どれがいい?」
「・・・・・・・・・」
「あーあ、また壊れちゃった。」
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