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自己投影。

芸人さんというのは、自分を魅せることに長けていると思うのです。これは、自身を客観視する能力が高いからだと思います。自分がどう見えているかを分析して、その"見え方"をネタに落とし込んだり、それに見合ったキャラクターを創ったりされています。筆者は、芸で自己を見せるのが漫才で、自己で芸を見せるのがコントだと考えています。



今回は【コント編】

男性ブランコさんを取り上げて、どのように自分を生かしているか見ていこうと思います。
取り上げた理由その1は勿論好きだからで、その2は役割を固定しないスタイルにこだわりを感じたからです。平井さん曰く、台本を作った後に配役を決めるとのこと。つまり、着想の段階ではAとBが居る世界で、お二人がA/Bに上からスポッと入るということ。AとBに"自分"のエッセンスを加えて唯一無二の人物を創り出している。これが興味深くて仕方がないのです。

前置きが長くなりましたが、参りましょう。。



❶配役:ボケ

男性ブランコさんを語るにあたって、ボケの多様さはやっぱり外せません。私のコントの概念を変えてくれたほどですから。


キングオブコントの印象から、ボケ担当は平井さんみたいになっちゃってますが、そうではないですよね。浦井さんボケのおもしろさを布教したいです。ヘジホジ観てからは尚更です。

浦井さんのあの感じを生かした、何とも言えない魅力的なキャラクターが誕生するのです。ナチュラルで品があって純粋潔白でちょいと毒っけのある奴。普通に見えてヤバい奴。見方によっちゃ狂気すら感じます。絶妙なんですよこれが。浦井さんから溢れるオーラがそのまんま役になっている。(浦井さんがヤバいってつもりじゃないんですけど、ですけど…)

言うなれば、淡々とした可笑しさ。浦井さんがボケの時は、そのストーリーが丸々ボケになっていると思います。彼が居る空間が空気ごと可笑しいみたいな。すごく思い切った構成だけども、臆しない浦井さんと、彼という像に委ねる平井さん。二人の関係性が見てとれます。

あんなに表現豊かなのに、ボケる時には表情が無くなるんですよね。その真顔というか悪気のない顔というか、やりますよ感ゼロでかましてくるのがオモロすぎる。何言うとんねん!が通じない雰囲気を出してて、コイツをどう(対処)すんのかなーと思ったところに、平井さんの"言葉"によるツッコミ。この相性が素晴らしいのです。


お待たせしました、平井さんボケのお時間です。もうこれは言わずもがなですが言います。身一つで、言葉一つで、こんなにおもしろいのかと。”全身でボケる”とはよく言ったものだ(初耳だ)。お二人とも表現力抜群なのですが、浦井さんはどちらかというと”所作でボケる”。表情や手指の動きや身体の向きなど、きめ細かな表現がお得意。
平井さんはというと、全・身ですね。立ち方から"その人"を表す。言葉と所作をわざと合致させない。動きは多く大きく速く。人ってこんなに動けるんだぁ、としばしば思います。だって0コンマの間に他人の2秒分くらいは動いてますよきっと。

彼という人のおもしろさを濾したものが男性ブランコのコントだと信じています。そのネタ/その場限りのキャラクターのはずなのに、どれも等身大。でも毎回扮しているので、映るのは平井さんではありません。だけど平井さんです。Aと平井さんが互いに歩み寄って丁度いい頃合いで一つになった感じ。書きながらラーメンズの片桐さんが過ったのは、きっと偶然ではない。

キャラクターを作る時って大抵、何かしらの形でモデルがいてそこに上乗せだの妄想だのすると思うのですが、男性ブランコが創り出すものってそうじゃないと思っていて。未だないモノばかりなのです。それは、どれも彼の中に居るモノだからではないかと。多重人格という意味ではなくて、彼の要素一つ一つが未だ居ぬヒトを形作っていると思うのです。これがワンパターンじゃないのが恐ろしいとこなのですが。


❷配役:ツッコミ

ボケの多彩さのせいで霞んでいるかもしれませんが、男性ブランコのツッコミはこれまた味があります。

声質や語り癖も含めて、浦井さんのツッコミはたっぷり目に聞こえます。分かりやすいようにしてある(している)というか。ジェスチャーや表情でも伝えて(訴えて)きます。漫才の時に見られる困り顔なんか特に。"ちょっと変わった奴に付き合ってるお友達"感が満載です。感というか、実際に、、うん。

「ツッコミじゃなくて感想と助言」という見解にも納得がいきます。否定しない・キレない・突き放さない。理想の上司像やないか。そもそも漫才の作り方が「合いの手を入れてもらう」スタイル(ツッコミ側に本がない)らしいので、なるべくしてそうなっているのでしょう。どんな球も受け止めて緩やかに返してくれるという安心感が、あのふんわりとした空間と自由な世界観を支えているんだろうなと思います。


対して、平井さんのツッコミは速いんですよね。間をキュッと詰める。今、口からぱっと出たような。本当にやりとりの最中に紡いだ言葉のような。浦井さんと比較すると、勢いのある強めのツッコミ。投げ捨てる、一蹴する、といった感じ。浦井さんボケでは全体のテンポがやや緩やかになるので、鋭さを入れるというか締めるというか、そういった意識もされているのかもしれません。

全面的に言葉に依存したツッコミで、臨場感とインパクトがある代わりに、若干分かりにくい。ご、語弊の無いように言うと、周囲が直ぐには追いつけない(まだ語弊あるな)。なので彼は伝えるために繰り返し、言い換え、一語一言はっきりと発します。妙なたどたどしさをも醸し出して、映っているキャラクターの印象づけがなされるという塩梅。

しかしまあ、平井さんは平井さんなんですよね。ボケの時は言ってもまだ「入ってるな」を感じられるのですが、ツッコミの時は地に足ついてますもんね。より境界が分からない。とりあえず『1パーセント』『小うどん』は観ていただきたい。

平場でのツッコミも好きです。俯瞰的で的確な返しといいますか、妙に冷静になって落ち着いたトーンで溢れる言葉がセンスいいんです。最近だと、平井さんの激ヤバ度を知らしめるライブで、顔から腕まで赤くなっている写真に誰かが「生アイアンマンやん!」と投じたのを「いや生アイアンマンてなんやねん、アイアンマンは鉄やから生てないやろ」…この切り返しを、是非とも学ぶべきである。何がって、えげつないエピソードがバンバン出されて自分がヤバヤバ言われている空間で、頭一つ抜けた見解で正論でツッこんでいること。それはそれ、彼は彼、なのだろう。。


思い付きで書き始めたのですが、この分析楽しすぎました。お付き合いいただきありがとうございました。


皆様の明日が美しく彩りますように。

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