#26.「変わらなさ」を皮肉まじりに／Olivia Rodrigo - deja vu
おはようございます。さて、みなさんは最近デジャヴを覚えたことありますか？ 日本語では既視感と言いますね。一度も経験したことがないはずなのに、なぜか経験したことがあるように感じられる感覚のこと。
たとえば、一度も来たことがないはずの場所を訪れたとき、「ここって昔来たことがあるような気がする……」、みたいな。
おそらくはきっと過去の経験を忘れているとか、過去の似たような経験を思い出しているだけなんだと思いますが。わたしは、あまりそういうデジャヴは感じないのです。単に鈍いだけなのかもしれませんけどね。
今朝は2023年1月18日のX（旧Twitter）へのツイートを、大幅加筆修正したものです。
考えてみれば人間って同じようなパターンを繰り返しますよね。だいたい本人の行動や仕草や好みなんてものは、短い期間に急激に変わるようなものではないので。
もちろん、あらゆるものに例外はあるので、清楚で真面目なみんなの憧れの的だった女子生徒が、ある日突然ヤンキーと付き合いだしてからは女番長にまで成り上がった、みたいなことも世の中にはないわけじゃない。これは違う話のような気もしますが。
とにかく、好きな音楽の傾向ならば、それまでEDMばかり聞いていたけど、ある日を境に突然、常磐津を歌い出すみたいなことはあまりない。いちごのアイスが好きで、そればかり食べてる人が、次にチョコミントアイスを食べる確率は低い……。
これは恋愛においても同じようなことが言えそうです。以前の恋人とどこに行き、何を食べて、どんな音楽を聴き、どんな会話を交わしたか……。そのような行動は、たいてい次の恋愛でも似たようなことを繰り返します。バリエーションがやたらとあるわけないし。
これは恋愛に限らない。いろんな経験を重ねながら年齢を経ると、嗜好や行動や習慣だって少しずつは変わっていくこともないわけじゃないし、以前の恋人や恋愛経験が、その後の行動や嗜好を変えていくことだってあるよね。
けれど、全体としては似たようなことばかり繰り返すんじゃないかな、というのがわたしの持論（というほどのものでもないけど）。根本的な人間性とか性格みたいなところは、そうそう変わらないし。
逆に言えば、そういう「変わらなさ」みたいなものが、その人をかたちづけるのだろうけど。これは自分以外の人から見れば、自分の特徴というか行動パターンみたいなものとして認識されてしまいそうです。
Olivia Rodrigoの”deja vu”は、元恋人のそういった「変わらなさ」を皮肉まじりに歌っています。
Olivia Rodrigo - deja vu (Official Video)
この曲の主人公である女の子は、恋人の男の子と別れたんだけど、その元恋人の男の子に新しい恋人ができたのを知る。元恋人が新しい恋人と過ごす時間は、私と同じように過ごしているんでしょと、主人公の女の子が皮肉混じりな感じで歌っています。
たとえば、主人公の女の子は元恋人とドライブに行った先でイチゴのアイスクリームを二人でひとつのスプーンで食べるようなデートをしていた。元恋人の男の子はきっと新しい恋人と同じデートを繰り返しているんでしょという感じで。
そして、主人公の女の子は元恋人の男の子に言い放ちます。新しい恋人といる時に私のことを思い出す？ デジャヴみたいに、と。もちろん、主人公の女の子の目の前に男の子がいるわけもないので、主人公の女の子のひとりごととして。
でも、わたしは思うんだけど、この感覚が許されるのはせいぜい二十代前半くらいまでですね。たとえば三十にもなって、元恋人に私のことを思い出した？ とひとりごとを言うのは、それはそれで未練がましい気がします。二十歳くらいならわかるけど、みたいな。
まあ、ある程度の大人になったら、「変わらなさ」を逆手にとって、髪型をモヒカン刈りにしておくとかアフロヘアにふくらませておくとか、そんなふうに相手の意表をつく手もありそうです。
それで昔の恋人に偶然に出会ったとき、ずいぶんと変わったなあ、みたいに思われれば、それはそれで面白いかもしれない。
と、ここまで書いてて唐突に思い出したんだけど、今年１月にこの記事の元となったツイートを書いたあとに、この曲の内容に刺激されたというか、影響を受けた短い小説を書いたのです。もしよければ、お読みいただけると嬉しいです。最後にちゃっかり宣伝したけど。
・エブリスタ｜水月羊｜チョコミントアイスをなんのためらいもなく
※ひつじのはなし｜Good Morning! Musicは、水月羊（the Maverick Black Sheep）が大胆不敵にも音楽（主に洋楽）エッセイを書こうという目論見と試みです。洋楽の曲を聞いての感想や解釈のエッセイ、コラムとなります。気になった曲の歌詞の意味はそれぞれ訳してみてください。また違った見方ができるかもしれません。
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