見出し画像

【toxic leadership・職場いじめ・離職】Exploring employee turnover intention: the impact of toxic leadership and the mediating roles of cognitive distraction and workplace bullying in the organizational landscape


Abstract

本研究は、自動車産業における有害なリーダーシップToxic Leadershipが離職意図に及ぼす影響を調べた。主な目的は、有害なリーダーシップ (TLB) が従業員の離職意向 (ETI) に及ぼす直接効果を評価し、その認知的混乱 (CD: Cognitive distraction) と職場いじめ (WPB) の媒介効果を明らかにすることであった。分析の結果、有害なリーダーシップ (TLB) が離職意向に与える統計的に有意な直接効果が示された。また、職場いじめと認知的妨害の間接効果も示された。したがって、退職意図を減じるために、有害なリーダーシップへの介入に加えて、媒介要因への対処の必要性も裏付けられた。


Introduction

有害なリーダーシップ Toxic Leadership

  • 有害なリーダーシップToxic leadershipは、虐待的行動、搾取的慣行及び部下の福祉の顕著な無視によって特徴づけられる (Asghar et al., 2019)

  • 有害なリーダーシップを示すリーダーは、個人的利益に執着し、組織の枠組み内で部下の福祉に対する関心が著しく欠如している (De Clercq et al., 2020)

  • こうした有害なリーダーシップは否定的な感情や意図を引き起こし組織内の職場いじめや従業員の福祉に悪影響を及ぼし、退職意図と直接関連がある (Seyed et al., 2020; Zhou et al., 2021)

職場いじめ Workplace Bullying

  • 一方、職場のいじめは、同僚、マネージャー、下位の従業員によって行われる虐待、軽蔑的な発言、からかい、嘲笑、社会的交流からの排除など有害な行動が持続的に発生することを指す (Gupta et al., 2017)

  • 職場いじめは、従業員のコミットメントと満足度に影響を及ぼし、破壊的な結果、敵対的職場環境、パフォーマンスの低下を引き起こす要因とされいる (Noopur, 2021)

離職意向

  • 自動車産業における離職は、収入、精神的健康、メンタリングプログラム、倫理的環境、公平な意思手続き、仕事の自律性、リーダーシップ行動など複数の要因が影響を及ぼす (Brouwers & Paltu, 2020)

認知的混乱 Cognitive Diturbance

  • 認知的混乱は従業員の離職意図に大きな影響を及ぼす

  • しかし、認知的混乱研究の問題点のために結論が出ていない

有害なリーダーシップ形成の歴史的観点

  • 産業革命時代に効率と生産性最大化のために従業員の福祉より管理と規律を優先する権利主義的リーダーシップスタイルが促された

  • テイラー主義のような管理理論は人間の側面の無視が多く、有害なリーダーシップ形成が継続

  • 20世紀後半から21世紀初頭にかけて企業の競争が激化した

  • 一方で、企業の労働問題が有害なリーダーシップの問題を指摘し始めた

  • それでも、強い権力や競争と短期的な結果を従業員の福祉より優先する組織分かは、有害なリーダーシップをはぐくみうる

  • ミレニアム世代やZ世代を含む若い世代は支援的なリーダーシップを優先し、有害な職場環境を離れる傾向がある

  • 先行研究は有害なリーダーシップ、いじめ及び認知的混乱を独立に調査している

  • しかし総合作用の調査は少ない

  • 職場いじめ及び認知的混乱の媒介効果の特定はいくつかの理由で必要となる

  1. 有害なリーダーシップが従業員に及ぼす直接効果を超えた潜在的態様を明らかにできる

  2. 職場いじめと認知的妨害の媒介効果を明らかにすることで、離職を減らすための具体的介入を開発できる

研究仮説

  • 従業員が仕事の動機を失ったり不満を感じると組織を離れる傾向が強まる

  • 独裁的なリーダーシップは労働者の辞職に決定的な影響を及ぼす (Soqair & Gharib, 2023)

仮説1-3:有害なリーダーシップは退職意図、認知的妨害、職場いじめに正の影響を及ぼす

  • 職場いじめによる敵対的環境が従業員の心理的健康に否定的影響を及ぼす (Rasool et al., 2019)

  • 職場いじめのある職場はフラストレーションや不安など否定的感情を助長して失礼な行動を引き起こす

  • そして失礼な行動を職場いじめとすると従業員の離職意向の予測因子となる (De Clercq et al., 2020; Rasool et al., 2021)

  • また、職場いじめは従業員の離職意図を高めて仕事満足度を低下させる (Chen et al., 2019)

仮説4:職場いじめは退職意図に正の影響を及ぼす

  • Gupta et al. (2013) は上司からの認知的な妨害や不必要な仕事の中段がタスクの質に負の影響を及ぼし認知的妨害に影響を及ぼすことを示した

仮説5:認知的妨害は退職意図に正の影響を及ぼす

  • 研究では一貫して、有害なリーダーシップが従業員の離職意図に有意な影響を及ぼすことが示されている (D De Clercq, 2020; Azeem et al., 2020)

  • (Farghaly et al., 2023) は、有害なリーダーシップが従業員の離職意向に及ぼす影響のモデレータを示した

  • Van Prooijen & de Vries (2016) は、有害なリーダーシップが組織の陰謀信念を助長し、仕事の不安定性と離職意図を高めることを示した

仮説6:職場いじめは有害なリーダーシップと退職意図関係を媒介する

仮説7:認知的妨害は有害なリーダーシップと退職意図の関連を媒介する


Method

sample and participants

自動車業界377名の従業員
20-60歳、女性30.24%、職歴0-20年
既婚者59.16%、ディプロマ21.14% ※インドの調査※

測定内容

  • ①有害なリーダーシップ (Paltu & Browers, 2020; Soqair & Gharib, 2023)

  • 10項目、5件法のリッカート尺度

  • 「リーダーシップによるタスクの一貫したモニターと管理がどの程度自律性を制限していると感じますか」

  • 「リーダーシップチームが特定の個人をひいきにしたり不当な扱いをする程度はどれぐらいですか」

  • 「リーダーが従業員の福祉を無視して個人的な利益のために従業員を利用する頻度はどのぐらいですか」

②職場いじめ (Mehmood et al., 2024)

  • 「職場で同僚の努力を妨害する個人の頻度はどのぐらいありますか」

  • 「同僚や上司からの不当な批判を観察または経験した頻度はどのぐらいいですか」

  • 「職場での言葉によるいじめを経験または観察した頻度はどのぐらいですか」

  • 「職場での同僚との関係にどの程度満足していますか」

  • 8項目の5件法リッカート尺度

③離職意図 (Ofei et al., 2023)

  • 「割り当てられたタスクを完了する能力をどのように評価しますか」

  • 「チームメンバーと協力して集団目標を達成する能力をどのように評価しますか」

  • 「チームに対してイニシアチムを示し革新的なアイデアを提供する頻度はどのぐらいですか」

  • 「チームに対してイニシアチブを示し、革新的なアイデアを提供する頻度はどのぐらいですか」

  • *コメント:離職意図を測定できていない*

  • *コメント:調べると、Turn over intention scale6 (TIS6; Bothma & Roodt, 2003) を元にしていた。項目は公開されていなかったが、サンプル項目は「どのぐらいの頻度で仕事を離れようと考えますか」「どのぐらいの頻度で仕事を探しますか」であるため、論文に記載されたサンプル項目が誤っていることが分かった。したがって、論文の信ぴょう性も低いだろう*


Results

サンプルの適切性と球面性の検定

因子分析のサンプルの適切性評価のためのKaiser-Mayer-Olkin テストは0.879

測定モデルと弁別的妥当性

  • 因子負荷量を0.7以上と定めた結果、職場いじめ7項目、職場いじめ7項目、有害なリーダーシップ6項目、認知的妨害5項目、離職意図4項目に分かれた

  • まず、因子負荷量は先に述べた通り0.70を超えた

  • Cronbach's alphaは0.70を超えた

  • 平均分散抽出 average variance extractはすべての印紙で0.50を超えて構成概念の収束を確認した

  • また、弁別的妥当性を検討するためにHerterotrait-Monotrait (HTMT) correlation ratio (Henseler et al., 2015)を使用した。その際の域値はHenseler et al. (2015) を参考に、0.90未満としたところ、すべての構成要素のHTMTが0.90未満であり、弁別的妥当性が示された

構造方程式モデル

  • 全ての仮説検定は有意であることが示された

  • 従業員離職意図と有害なリーダーシップの間に関連

  • 有害なリーダーシップは職場いじめと関連

  • 有害なリーダーシップと認知的妨害に関連

  • 職場いじめと離職意図に強い関連

  • 認知的妨害と離職意図の間に強い関

  • したがって、有害なリーダーシップ行動 toxic leadership が組織のダイナミズムに影響している

  • 最後に、職場いじめを介した有害なリーダーシップから離職意図への効果は標準化β=0.137、認知的妨害を介した有害なリーダーシップから離職意図への効果は標準化β=0.047であった。

  • したがって、職場いじめ・認知的妨害を介した間接的効果が認められる

  • *コメント:ただし、これがすべてというわけではなく、二つの媒介要因が認められたにすぎない点は注意*


Discussion

  • 有害なリーダーシップが従業員の離職意図に直接影響を及ぼすことは先行研究を裏付けるもの

  • また、有害なリーダーシップが従業員の集中力や注意力に影響を及ぼすことお、職場いじめを介した離職意図を形成することも先行研究を裏付ける

  • *コメント:リーダーシップスタイル研究の面白い点は、逆の因果関係を想定しにくい点である。例えば、職場いじめや認知的な妨害がリーダーのあり方を変えると思いにくいため、この因果関係が比較的強く主張できる*


References

  1. Asghar MZ, Gul F, Hakkarainen PS, Zeki Taşdemir M. Validating entrepreneurial intentions questionnaire to assess the impact of entrepreneurship education. Egit ve Bilim. 2019;44(197):383–99.

  2. Azeem MU, Bajwa SU, Shahzad K, Aslam H. Psychological contract violation and turnover intention: the role of job dissatisfaction and work disengagement. Empl Relations Int J. 2020 Jan 1;42(6):1291–308.

  3. Bothma, C. F., & Roodt, G. (2013). The validation of the turnover intention scale. SA journal of human resource management, 11(1), 1-12.

  4. Brouwers, M., & Paltu, A. (2020). Toxic leadership: Effects on job satisfaction, commitment, turnover intention and organisational culture within the South African manufacturing industry. SA Journal of Human Resource Management, 18(1), 1-11.

  5. Chen HT, Wang CH. Incivility, satisfaction and turnover intention of tourist hotel chefs. Int J Contemp Hosp Manag. 2019 Jan 1;31(5):2034–53.

  6. De Clercq, D., Azeem, M. U., Haq, I. U., & Bouckenooghe, D. (2020). The stress-reducing effect of coworker support on turnover intentions: Moderation by political ineptness and despotic leadership. Journal of Business Research, 111, 12-24.

  7. Farghaly Abdelaliem, S. M., & Abou Zeid, M. A. G. (2023). The relationship between toxic leadership and organizational performance: the mediating effect of nurses’ silence. BMC nursing, 22(1), 4.

  8. Gupta, R., Bakhshi, A., & Einarsen, S. (2017). Investigating workplace bullying in India: psychometric properties, validity, and cutoff scores of negative acts questionnaire–revised. Sage Open, 7(2), 2158244017715674.

  9. Gupta, A., Li, H., & Sharda, R. (2013). Should I send this message? Understanding the impact of interruptions, social hierarchy and perceived task complexity on user performance and perceived workload. Decision Support Systems, 55(1), 135-145.

  10. Henseler, J., Ringle, C. M., & Sarstedt, M. (2015). A new criterion for assessing discriminant validity in variance-based structural equation modeling. Journal of the academy of marketing science, 43, 115-135.

  11. Mehmood S, Rasool M, Ahmed M, Haddad H, Al-Ramahi NM. Role of workplace bullying and workplace incivility for employee performance: Mediated-moderated mechanism. PLoS One. 2024;19 (1 January):1–21. http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0291877

  12. Noopur, Burman R. Role of perceived HRM toward workplace bullying and turnover intention: mediating role of resilience and psychological health. Asia-Pacific J Bus Adm. 2021 Jan 1;13(4):433–51.

  13. Ofei, A. M. A., Poku, C. A., Paarima, Y., Barnes, T., & Kwashie, A. A. (2023). Toxic leadership behaviour of nurse managers and turnover intentions: the mediating role of job satisfaction. BMC nursing, 22(1), 374.

  14. Priyadharshini, A., Kumari, D. A., & Venkatesan, C. (2024). Exploring the Impact of Power Harassment on Turnover Intentions among Teaching Faculty: A Study of Workplace Bullying on Employee Retention.

  15. Rasool SF, Maqbool R, Samma M, Zhao Y, Anjum A. Positioning Depression as a Critical Factor in Creating a Toxic Workplace Environment for Diminishing Worker Productivity.Sustainability. 2019;11(9):2589.

  16. Rasool SF, Wang M, Tang M, Saeed A, Iqbal J. How Toxic Workplace Environment Effects the Employee Engagement: The Mediating Role of Organizational Support and Employee Wellbeing. International Journal of Environmental Research and Public Health. 2021;18(5): 2294-2311.

  17. Seyed Hasan H, Ebrahim Hajipour AK, Darikandeh A. The mediating effect of organizational culture in the relationship of leadership style with organizational learning. J Hum Behav Soc Environ. 2020;30(3):279– 88.

  18. Al Soqair, N., & Al Gharib, F. (2023). Toxic Workplace Environment and Employee Engagement. Journal of Service Science and Management, 16(6), 661-669.

  19. van Prooijen, J. W., & de Vries, R. E. (2016). Organizational conspiracy beliefs: Implications for leadership styles and employee outcomes. Journal of business and psychology, 31, 479-491.

  20. Zhou, X., Rasool, S. F., Yang, J., & Asghar, M. Z. (2021). Exploring the relationship between despotic leadership and job satisfaction: the role of self efficacy and leader–member exchange. International journal of environmental research and public health, 18(10), 5307.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?