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【重要】四国化工機ほか1社事件

概要

 徳島に本籍を置く食品充填機等の製造・販売を行う企業から、東京に本社を置く子会社の食品機械メーカーに出向を命じられた設計業務従事者Aが、出向後にうつ病を発症し、復職後に再発し、その後の自宅療養中に縊死したのは「業務起因性の疾病」によるものではあるが、「出向元及び出向先に安全配慮義務違反はない」とされたものである。

経過:
 出向元は自社で行っていた機械設計を出向先に移管したため、Aは出向を打診された。幼い子供を抱える共働き世帯で老齢の親もおり出向は困難だと返答したが、上司から前向きな返答を求められ了承し、出向した。
 出向先で担当設計の期日が迫ってくるため早く終えてほしいと告げられたため、出向元で作業したほうが効率が良いと申し入れ、出向元で作業し、そのご出向先に帰社したが、病院でうつ状態と診断された。出社時に異常を感じた出向先の上司は、Aを地元に帰宅させた。出向から13日間の残業時間は43時間であった
 Aは地元で3か月間自宅療養し、その後出向元に復職し、主治医の指示に基づき残業なく勤務していたが、状態が悪化して再度の自宅療養を行い、その後自宅で縊死した。

注意点

 業務起因性と安全配慮義務違反は異なるものである。
 本件は、単身赴任、家庭の状況、出向期間を踏まえると出向命令により強い心理的負荷があり、出向先の業務も強い心理的負荷がかかったことは明らかだとして、Aのうつ病発症及び縊死に業務起因性が認められた
 しかし、出向元の人員選定は不合理ではなく、Aが出向を受諾したことから配置転換権の濫用とは言えず、出向命令の内示方法も違法ではなく、Aに既往歴がないことから、出向命令の安全配慮義務違反は否定された。復職後にフォローアップ面談を行っていないから安全配慮義務違反とは言えないとも解された。
 また、出向先の業務指示は負荷の大きいものだったが、上司はAの申し入れに基づき過重な業務指示を修正し、適切な業務調整を行っていること等から精神疾患発症の予見は困難だったとして出向先の安全配慮義務違反も否定された

 すなわち、精神疾患の発症に業務起因性があっても、安全配慮義務は果たされている場合もあるということになる。
 職場では万全の配慮がなされていたとしても、業務起因性の精神疾患を発症して自殺する可能性があります、という恐ろしい判決である。
 自分の命は自分で守るしかない。


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