あなたの「世界」は、目の前の一つだけじゃない
櫻いいよさんによる、世界は「 」で満ちているを読みました。
げみさんが描いた美しいカバーイラストが目を引く青春小説。
でも、思春期の子供を持つ私にも響いた小説でした。
あらすじ
中一の由加は、仲のいい家族のもと、涼ちゃんという親友にも恵まれ、毎日が楽しくてしょうがなかった。
でもある日を境に、周囲から完全に孤立してしまう。
そんな中、幼馴染だったのにいつからか距離ができてしまった、ゆう君に引き寄せられていくのだった。
でもゆう君もかなり複雑な事情を抱えているようで・・・
感想
中学生という多感な時期、「学校に行くのが楽しくてしょうがない」由加に、「こんな毎日だったら良いね〜」という気持ちと「いやいや、でもそうはいかないでしょ?」という気持ち、両方起きた。
そして案の定、由加は手痛い裏切りを受けて傷つく。
昨日までの楽しい日々が、足元からガラガラと崩れていくのだ。
実は私自身、中2の時似たような状況になったことがある。
私の場合、友人Aの好きな人に関しての話題を親友だと思っていたBに言っていたら、それが全部他の女子グループに「○○がこんなこと言ってたよ」と筒抜けになっていたのだ。
ただ付け加えると、その友人Aはかなりオープンで、好きな人にクッキーを作ったり告白したりしていて、みんな知っていたのだけど・・・。
ともかく、私は「秘密をベラベラ喋る子」として孤立した。
でもそれはきっかけの一つにすぎなくて、きっと何かしら気に食わなかったんだろう。
親友だと思っていたBは、私のことを友達とすら思っていなかったのだから。
3年になりクラス替えがあってその子たちとも離れたけど、クラスで孤立する苦しさはとてもわかる気がした。
さて由加は、子供の頃は仲が良かったのに、今じゃ完全に学校から孤立していて距離を置いていたゆう君に、親近感を覚えて近づいていく。
まあ・・都合良いっちゃ都合良くも思えるけど、自分が同じ立場になったことによって、違う見方ができたとも言える。
本当は自分では思っていなくても、周囲の人間が悪く言っていたら自分も距離を取ってしまうこと、あると思う。
大人だってよくある。
それなのにイジメはダメだとか、矛盾したことを平気で言っていたりする。
由加はなんとなく周囲に流されていた自分を変えるのだ。
でも「周囲に期待するな」と飄々としていたゆう君が、実は大きな傷を抱えていることがわかる後半。
大人になりつつもまだ子供のピュアさを持つ思春期。
家庭環境の苦しさから、無気力になったり荒れたりする子供は多い。
長女が中学生だったころ学校が荒れていて、問題を起こしている生徒がけっこういた。
先生たちも苦心していたけど、家庭に問題がある場合、学校だけの対処じゃどうにもならない。
未成年のうちは、どうしたって親に依存せざるを得ないから、苦しいし惨めな思いを、反抗や無気力な態度で表していたりするかもしれない。
由加やゆう君のように、色々なことで傷つき、悲しい思いや孤独感を抱えているティーンエイジャーはたくさんいるだろう。
コロナ禍で逃げ場所もなくなり、さらに増えているかもしれない・・・。
もし最初の由加みたいに、世界は「愛」に溢れていると信じたまま、大人になれたらどんなにか良いだろう。
でも現実は、そんな人こそ少ないだろう。
学校や家庭が全てに感じて、そこでつまづくと全部がダメな気がしてしまうかもしれない。
でも「全て」に思えたその世界は、一つの小さな世界に過ぎない。
だから、一つの世界でつまづいても、決して自分がダメなんだと思わないでほしいな・・。
今、由加やゆう君みたいな人に出会えていなかったとしても、一歩踏み出したその先の世界には、「感動」や「出会い」もたくさん待っているはずだから。
そんなことを強く思いました。
ちなみに
私の話の続きですが・・・
中二の時のことがきっかけで勉強に励んで、彼女らよりランクの高い高校に合格することができた。
そして中学卒業から7年後くらいに偶然友人Aに会った時に「あの時はごめんね。仲間はずれにしたこと、ずっと謝りたかった」と言われた。
彼女自身が、別に本気で秘密にしていたことではなかった事柄を、仲間はずれにする口実にしたことが後ろめたかったのだろうと思う。
でも彼女以外とはそれっきり。
ただやっぱり、この出来事はその後の私の人生の教訓になった。
そしてこのことがあってからは絶対に、噂話や聞いた話はしないと誓い、実行しています。
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