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無人島にも春がきた あつ森日記#2

 適応障害と診断されて2ヶ月目。薬を変えたり増やしたり、実験のように過ごしている。睡眠に難ありで、何故だか同じ時間にきっかり目が覚める。それで元気に活動できれば良いのだけれど、身体を起こせず天井を眺めていることもある。また昼くらいに眠り、夕方に起きて夜を待つ。その繰り返し。時間だけが無情に過ぎていく。もどかしいけれど、致し方ない。

 起きている時間は、ほとんど島で過ごしている。いつの間にか4月になって、北半球の無人島には桜が咲いた。島を歩けば、ひらひらと花びらが舞っている。現実でも、少し窓を開けてみると、冷たい空気は遠に去っていた。まだ冬物を片付けていないし、電気ストーブも出しっぱなしだけれど、春の匂いは無条件にうれしい。

 あつ森にはエンディングがある。歌手のとたけけを自分の島に呼び、ライブを成功させること。そのために橋を掛け、土地を売って住民を増やし、島の評判を良くしていく必要がある。スローライフなゲームなので、橋の場所を決めたら出来上がるのは翌日、という風に現実の時間がかかる。引きこもりの身としては、待つのが苦しい時もあるけれど、明日に楽しみが続くのは有り難かった。

 そうして、とたけけが歌ってひと段落。エンディングを迎えても、家具の収集や植物を育てるなど、できることは色々ある。その中でも、今作のメイン要素"島クリエイター"がエンディング後に解放された。これは自分で崖を削ったり、川を埋めたり、島自体の形を変えられるもの。わたしは、ちょっとだけ崖を整えたかった。ほんとに、ちょっとだけ。

 地獄を見た。微調整のつもりが、触りたくない崖まで崩れていく。戻したい、余計なところが埋まる、また削る、違うそこじゃない。元来の不器用さも相まって大パニック、いい大人が泣きながら崖工事をする羽目になった。とりあえず何とか自分を納得させて終了した。すべてを壊す覚悟がないと、始めてはいけなかった。反省。

 最近は花壇を作った。崖をいじった当初の目的でもある。柵を立て、種類別に分けていく。決まった色を隣に置けば、珍しい色の花が咲くことがある。他には、フルーツの木をたくさん植えて、果樹園に見立てたり。小学生の頃遊んだDS版のどうぶつの森でも同じことをしていたから、なんとなく懐かしい。

 島は綺麗になり、住民とも仲良くなった。暖かくてやさしい場所。それでも、時間が過ぎるのは怖い。ゲームばっかりして、と怒られたことを年甲斐もなく思い出す。うまく眠れない、お腹も空かない、生きるのは難しい。けれど、いつか。いつか思い出になれ、と祈っている。

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