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宇宙の彼方に/M.S.S Project「嘆きの華」を聴いて

 初めてのライブ参加は2018年3月のこと。横浜アリーナは広くて舞台はちょっと遠くて、けれどピカピカのサイリウムがたくさん見えた。こんなにも仲間がいる、ひとりじゃない。限られた時間をめいっぱい楽しんでいたら、アンコールで気球が飛んだ。楽器を演奏しながら、ペンライトを振りながら、彼らを乗せた気球が会場を一周する。キラキラの4人が前を飛ぶあの光景を、わたしは一生忘れない。

 それからは夏も冬もライブに通った。地方の友だちの元に遠征したり、反対に来てもらったり、真ん中の東京で集合したり、ツアーと一緒に旅をした。知らない場所を観光できるし、会場限定のグッズもあるし、どこに行っても楽しかった。

 ひとつ、待ち望んでいたことがあった。音楽だけのライブが見たい。わたしはマイクラ実況のオープニング曲でMSSPのことを知ったから。彼らの作り出す音楽が大好きで、それで勝負する姿が見たかった。だから、2020年のZeppツアー開催は心の底から嬉しかった。チケットもたくさん、持っていた。

 2020年2月27日、名古屋公演の中止。ライブが、エンタメが、止まっていく様を目の当たりにした。チケットがただの紙切れになることを思い知った。誰も悪くないけれど、やるせなくて悔しかった。そんな中、MSSPは無観客ライブを決めた。

 客席には誰もいないけれど、カメラの向こうのわたしたちへ届けてくれた。舞台だけでなくフロアも駆け回り、明るく楽しく元気づけてくれた。その優しさに何か返したくて、結果的にスパチャ1億円を達成して。ずっとずっと続いてくれ、と泣き笑いで祈っていた。

 あれから4年。MSSPは事務所から独立し、FBが社長になった。eoheohが曲を作り、きっくんは美しいまま40代を迎え、あろまほっとの誕生日が明かされたのは大事件だった。変わらず明るいMSSPも、裏では大変なことが多くあったのだと思う。

 わたしはすっかり社会人になった。仕事が忙しかったり、他の趣味を見つけたり、正直に言えば、MSSPに割ける時間は少なくなった。ライブ全通が当たり前の大人や、多忙なのに漫画やイラストを描き続ける大人をよく見かけていたけれど、自分はそうなれなかった。あの頃遊んでいた友だちとも、もう連絡を取っていない。嫌いになったわけじゃない、ただ時間の経過で変わってしまっただけ。

 ライブで見る彼らは、変わらずキラキラしていた。ライブハウスの重低音はいつもワクワクする。キレが増すパフォーマンスに、のびやかな歌と、格好良いギターソロ。ゆるーいMCも大好きな4人のままだ。MSSPがMSSPで居てくれることが、いつも、とても嬉しい。

 MSSPは疲れたら戻って一息吐ける、安心できる実家のようで。だからずっとステージに居てほしい、居てくれると思っていた。最前線を走り続ける彼らに対して、とても失礼で傲慢な話だ。「自分のペースで付いてきてね」と言ってくれることに甘えていた。毎日動画を出す、新曲を作り続ける、ライブをやる、どれも努力なしでは続かないことを知っているのに。

 夢中になって何かを追いかける楽しさを教えてくれたのは間違いなくMSSPで、かけた時間、出会ったひと、ライブの思い出、全てが宝物だ。それはこれからも、走り続ける彼らを追うたびに増えていく。武道館もその先も、キラキラの彼らを見ていたい。

 わたしたちは一億の星たちであり続けたい。だから少しだけ、拙いけれど文字に残しておく。いつまでも進んでもらうために。何の力にもならないかもしれないけれど、願うことはひとつ。

 わたしたちの帰る場所、永遠であれ。

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