企業分析にオススメの10冊を紹介するよ 〜会計からファイナンス、企業価値評価まで~
今回はタイトルのとおりですが、企業分析におすすめの本についてです!
これから企業分析をやってみたい、決算書をもっと読めるようになりたい、分析できるようになりたい。そんな方々はこの記事をぜひ読んでみてください。
具体的には会計、ファイナンス、企業価値、Valuation関連の本を紹介していきたいと思います。
改めてですが、この記事をぜひ読んでいただきたいのはこんな方々。
・P/LやB/Sはだいたい分かる、読める人
・企業分析をもっとできるようになりたい人
・ファイナンスや企業価値評価も勉強したい人
P/LやB/Sは読めるようになったけど、そのあとどうすればいいか?何を勉強すればいいんだろう?と迷う人におすすめの内容になっています。
この記事を読むと以下の内容について、参考になる書籍が見つかるかもしれません。
・P/L,B/Sを使った実際の分析方法
・会計とファイナンスの関係性
・ファイナンスや企業価値評価の基礎
・株式投資や企業分析に応用できる収益予測
なお、これから紹介する本は全て実際に私が読んだ本なので、感想やポイントを紹介していきます。
■はじめに
本を紹介する前に、少し企業分析についてお話をさせてください。
自分は大学で簿記を勉強したのですが、簿記を勉強してもP/L,B/Sの構造は分かるけど実際の決算書などは読めない状態でした。
就職してから企業分析について勉強する必要性があり、色々な本を読みながら実際の決算書やP/L,B/Sを見て企業分析について調べてきたのですが、特に冒頭でも書いた、P/L,B/Sは分かるけど実際の分析までどうすればいいか分からないという部分が苦戦した記憶があります。
そんなことで、今回はおすすめの本をまとめてみようと思った次第です。
いよいよ本題に入りますが、まず簡単にこれから企業分析を勉強するうえで重要なポイントをお伝えしたいと思います。その後に合計10冊の本を紹介していきたいと思います。
さて、企業を深く理解するには、まず過去の財務データを分析することが重要です。特に①時系列の変化を見る、②他社と比較して違いを探すの2つが意識するポイントかなと思います。
縦比較(時系列)と横比較(他社比較)というイメージです。
上の2つに加えて、様々な角度や切り口から企業を見ることで、変化や違いを探していきます。例えば、利益率やROEなどの指標を使って比較したり、P/LとB/Sの項目を使って色々な組合せから見ていきます。
あとは業界構造やビジネスモデルなどの情報も組み合せて、例えば「回転寿司のスシローの強みはxxxで、業績データでも他社と比較してROAが△△△となっている」的な分析ができると面白くなると思います。
—————— 20200518 追記 ——————
分析と言えるレベルではありませんが、縦比較と横比較のイメージをしてもらえるような例を紹介したいと思います。
縦比較(時系列)のイメージ
横比較(他社比較)のイメージ
————— 追記 ここまで —————
企業分析をする際にも、定性データ(経営戦略や事業構造、ビジネスモデルなど)と、定量データ(業績や決算データ)が繋がってくると一段と企業の理解が深まりますし、分析する面白さも倍増するのかなと個人的には思っています。
この企業のビジネスモデル、事業戦略、マーケティングの結果として、業績の数字がこうなっているのか!なるほど!という発見ができると思います。
このあたりは大手町さんの会計クイズやファイナンスラボが得意な領域かもしれません。
あとは、少し応用ですが、財務分析はあくまで過去のデータでしかなく、過去から現在までの分析です。
将来予測において、業績などを予測するためにはまず収益構造や過去の動向を理解することが必要ですし、それが理解できると過去のトレンドや傾向(あとは外部要因とか色々ありますが)から将来予測ができたりと、財務分析が基礎となって、本当に様々なことができるようになります。
ちょっと長くなりましたが、これから紹介する本は、上に書いたようなことを学ぶのにおすすめの本です。
具体的なプロセスとしては、まずは会計を理解し、ファイナンスや企業価値という概念を理解して、将来予測や企業価値評価(valuation)を学ぶ、というプロセスでそれぞれのフェーズごとに書籍を紹介しています。
(将来予測についてはおすすめ本やサイトなどが他にも多くあるので、また別記事で詳しく紹介しようと思います)
①会計士とアナリストの視点でみる! 財務分析マニュアル
■収益性分析、安全性分析、成長性分析など財務分析の基礎
■業界ごとの財務分析など実例も多い
■XBRLで財務データを取得してexcelでのデータ分析も紹介されている
前半は利益率系がたくさん出てくる収益性分析や、BSの安全性分析など色々な視点での分析が解説されています。
次に「アナリストによる財務分析の実際」というテーマで、実際に分析するときにどんな指標を使ったり、どのデータを見て分析しているのか書かれています。
さらに通信業界や医薬品業界など業界構造を踏まえながら、実際の企業データでの分析が詳しく解説されていて、実際の財務分析がかなり具体的にイメージできる内容です。
②グロービスMBAアカウンティング
もう少し会計の部分を勉強したい方にはこちら。
■ROA、ROEなどの指標を基礎から解説
■会計クイズのようなPL、BSから企業を判断する問題もあって実例が多い
キリンと伊藤園のP/L、B/Sを比較して違いを分析するなど、とても具体的な説明が多いです。
そのほかにも違う業界の企業比較(トヨタ、日清食品、キーエンス、キヤノンなど)をROE、ROAから分析するなど実例を使った比較分析が豊富な本。
特に面白かったのは、会社名を隠した1番から6番までのP/L、B/Sデータ(数字のみ)が並んでいて、選択肢には会社名(伊藤忠商事、イトーヨーカ堂、武田薬品、トレンドマイクロ、JR東日本、リコー)があり、どの会社が何番かを当てるクイズ。まるで会計クイズみたいで面白かったですね。
③あわせて学ぶ 会計&ファイナンス入門講座
次に会計からファイナンスや企業価値評価(Valuation)を勉強したい人向けの本を紹介していきます。
■会計とファイナンスの基礎から理論株価の算出まで
■分かりやすい&数字を使った説明で実務的
■excelで手を動かしながら勉強するのがおすすめ
会計から次のステップとしてファイナンスや企業価値を勉強したい人におすすめ。
まず会計のPL、BS、CFがどのようにファイナンスと関係しているのかを説明して、徐々にファイナンスを勉強していく本です。
ファイナンスを学んだら企業価値の基礎という流れになっています。
④企業分析シナリオ
■財務分析から企業価値まで網羅されている本
■やや企業価値やファイナンス寄りの内容
■定性分析(競争戦略や5Force分析)をどのように企業分析に使うか=将来予測の基礎も解説
この本の特徴は、財務分析やファイナンスの解説はもちろんですが、第2章の「定性的分析と財務データの関連付け」で競争戦略や5フォース分析、バリューチェーン分析などの定性的分析と、今まで見てきた財務データなどの定量分析の関係性や両者をどのように見るかについて書かれています。
なかなかこの定性的分析と定量分析について書かれている本は少ないので、その繋がりについて勉強したい方にはオススメです。
ただ、注意点としては定性的分析の詳細については、戦略系の本を読んだ方が詳しく書いてあります。あくまで「財務分析との関係性」という視点で書かれているので、説明自体は簡略化されています。
⑤入門ビジネスファイナンス
■④の企業分析シナリオよりも計算例が多くexcel向き
■実例や実際の計算もあり、そのままexcelが作れる部分も多い
■ファイナンス実務の入門書としてもおすすめ
ファイナンスや企業価値評価の基礎としてかなりおすすめです。
フリーキャッシュフロー、資本コスト、CAPMやベータなど企業価値評価に必要な各論ごとに章立てされています。実際の数字、計算も多いのでぜひexcelに入力しながら読むことをオススメします。
⑥バリュエーションの教科書
バリュエーション(Valuation)とは企業価値評価のことで、ファイナンスの知識を使って理論的な企業価値を算出します。
企業価値が算出できれば、理論的な株価も算出することが可能です。また、M&Aでの買付価格や売却価格を算定するのに使うことができます。
■企業価値、M&Aについて入門から実務までを解説
■株主価値について知るならまずこの本
■アクティビストの事例も詳しく解説
バリュエーションの本に関しては、入門から専門書までで記事が1つ書けるのでまた今度書きたいと思いますが、とりあえず最初に読むとしたらこちら。
株主価値とは何か?という基本的な内容から実際の計算まで解説されています。
先程も書いた通り、株主価値の算出は理論株価の計算やM&Aの買付価格などで使用されますが、最近よくニュースで見るアクティビストの戦略を知る上でも重要な知識となります。
なぜならアクティビストは上場企業に提案をすることで株価を上昇させて利益を狙う戦略です。例えば、株主還元を強化することを要求したり、事業再編などを要求しています。
それらの提案の根幹にあるのは、「企業価値を向上させる提案である」ということです。現経営陣よりも私たち(アクティビスト)の考える案の方が企業価値が高くなり、株価が上がります。だから私たちの案に賛同してください。と他の株主(機関投資家や個人投資家)に呼びかける戦略です。
これらアクティビストの実例がこの書籍でもいくつか出てきているので、それら実際の案件を通して企業価値とは何か?を学ぶことができる本です。
⑦外資系アナリストが本当に使っているファンダメンタル分析の手法と実例
こちらは個別株の分析に興味ある人にはとてもオススメです。
プロのアナリストが株価をどうやって分析しているかを日本M&Aセンターとセブン銀行で解説していきます。細かい分析方法は投資家ごとに違うけど、ベーシックな予想方法はこの本で理解することができます。
■実際の分析方法が細かく実務的に書かれている
■日本M&Aセンターやセブン銀行を実際に分析
■売上や利益の将来予想についても解説あり
⑧外資系投資銀行のエクセル仕事術
将来予測という部分に興味がある方はこちらもおすすめ。予想PL、予想BSをexcelで作成したものを財務モデルとか言ったりします。
■モルガンスタンレー出身の熊野さんが分かりやすくモデリングを解説
■⑪の本よりも単純化したPLで収益予測の基礎を勉強できる
■実際にexcelで手を動かしながらモデルを作るのがおすすめ
もっと具体的にモデリングを知りたい人にはこちらの2冊。
⑨エクセルで学ぶビジネスシミュレーション超基本
1冊目は同じく熊野さんの本で、よりモデル作成にフォーカスした内容です。
20200518 追記
ちなみに著者の熊野さんが最近noteとTwitterを始められたのでこちらも要チェックです。
Excel初心者でもショートカットを覚えながらモデリングや収益予測について勉強できます。自分も熊野さんのセミナーに出会うまでは大学生レベルのexcelスキルでしたw
あと、他にもモデリングの動画やnoteが最近ふえてきて、とても勉強になり嬉しい限りです。こちらもいずれ紹介していきたいと思っています。
————— 追記 ここまで —————
⑩外資系金融のexcel作成術
こちらは財務モデルの考え方について理解することを重視している感じです。企業分析から財務モデルをどう作成するかについても触れています。
以上10冊になります!
なかなか初心者向けとは言えない本かもしれませんが、excelを作ったり決算書の数字を使って計算したりして、本を読みながら手を動かすことが重要なのかなと思います。
自分も最初は本を読んで、なるほどなるほどと理解したつもりでしたが、結局手を動かしてからの方が定着は良かった気がしています。
ぜひ読んでみての感想などあれば、コメントやTwitterのDMで絡んでもらえると嬉しいです!
企業分析の勉強法や疑問、他のおすすめ書籍はないか?などの質問もぜひお待ちしてます。
企業分析参考note,ブログ
最後に、noteなどで見つけた企業分析としていいなぁと思った記事を少しご紹介させていただきます。(上から目線っぽくてすみません…!)
共通しているのは、どれもただ決算の数字だけを見ているのではなく、きちんと数字を分析したうえでビジネスモデルや業界分析などの定性分析を踏まえた分析ができている点です。
今回の記事と同様にビジネスモデル、企業の戦略、将来予測に関するおすすめ本をまた紹介したいと思いますので、ぜひお楽しみに。
参考記事①
参考記事②
参考記事③
参考記事④
参考記事⑤
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