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【散文】フラクタル

不完全さや矛盾についての文章を書いてみました


晴れた空から下を覗くと人間界が見える。
人間は今日も支離滅裂で、素頓狂な行動ばかりとっている。
彼らはそれでも自分たちのことを「統一的」だとか「合理的」だと思っているらしい。

そんな不一致さが幼稚で浅ましく見える時もあるのだが、長い目で見ると社会が進む原動力となっているようだ。
彼らは自分たちの子供の自由さを見つめて、そこに愛を感じる。
果てなき創造性と発想力に驚き、不完全さに嫉妬する。

本当は自分たちだって、論理的になりきれず、まだ創発を失っていないのに、さもそうでないかのように振る舞っている。
それこそが証左であるのに、彼らはそれに気づかない。
そんな未熟さが愛しいというのは、彼らが子供たちを愛するのと同じ感覚なのだろう。

もし彼らが完成されてしまったら、全ての滑稽さが亡くなると同時に、無味乾燥さが生まれるだろう。
それが何を意味しているのかと言われたら、つまりのところ、現状が良いということなのだろう。

あっちへ行ったり、こっちへ行ったりと、そういうことを繰り返してここまで来た。
面白いのは、一人を見たって、全体を見たって、それが変わらないことだ。
程度の差こそあれ、そういう力がいつも彼らには備わっている。

空から見たら彼らにも分かるはずだろう。
だからこそ、彼らには地にいてほしい。
道半ばでいて欲しい。
それこそが魅力であって、それこそが多くを熱狂させる味になるのだから。

このことには気づかずに、どうか支離滅裂でいてほしい。

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