遠藤卓 SUGURU ENDO

1997.11.11 埼玉県川越市出身 早稲田 文化構想 文芸・ジャーナリズム論系 …

遠藤卓 SUGURU ENDO

1997.11.11 埼玉県川越市出身 早稲田 文化構想 文芸・ジャーナリズム論系 卒 2023年4月よりワーホリ(YMS)ビザでイギリス試住 将来の夢は、物書き。

最近の記事

イギリス素描#4(ベトナムトランジット)

紫煙噴く西貢河の混沌へ我という賽転がさむ いざ 私はすぐさまATMで500000ドン下ろした。これは一見、恐ろしい桁数に見えるが、日本ならば野口氏を三人も招けないのだから、奇妙であった。先に断っておくが、私は吝嗇家ではない。わざわざ海外まで来て三千円弱しか換金しないのは、財布の紐のすこぶる固いしみったれのように思われるが、ここは越南、ベトナムである。物価は日本の約4分の1。たかが一夜のトランジットで福澤氏をお連れしている私が、いかに気前良く刹那を楽しもうとしているかがこれで

    • イギリス素描#3(ベトナムトランジット

      南風越えなカエサル手繰る発着場 19:30、VN303便は定刻通りにホーチミン・タンソンニャット国際空港に到着した。私にとって約八年ぶり、2カ国目の海外である。1度目は17才のときに修学旅行で行ったオーストラリアだが、あの時の記憶はほとんど残っていない。私は昔から興味のないものに対して、とことん覚えが悪く、悲しい哉、生涯一度きりしかない初海外という特別な体験すらその中に包括されてしまっていたのである。だが、今回のはまるで違っていた。学校行事とは違い、自ら望んだ行動であるが故に

      • イギリス素描#2

        もう暫し 夜に越されじと飛ぶ鳥の窓に映るは 暮れの空際 私を乗せるベトナム航空VN303便は、成田国際空港を出発し、ベトナム第二の都市ホーチミンにあるタンソンニャット国際空港へと向かった。 Tan Son Nhat————なんとも可愛らしい名前である。語感もすこぶる良く、一瞬で覚えてしまった。 だが、元はといえば約100年前、ベトナムがまだフランスの植民地であった頃に建設された飛行場に端を発しており、日本軍の仏印進駐後は海軍航空基地へ切り替わり、挙げ句の果てにはベトナム戦争勃

        • イギリス素描#1

          世にも慣れ 知の倦怠に耐えかねた男の向かふ 英吉利もあらん どうしようもなく今の生活を壊したい時がある。それは、必ずしも抑圧された状況を変えたいという対立的な意味合いではなく、現状の居心地が良い余りに、このまま花を咲かすことを置き去りに畢竟枯れていくのではないかという不安ゆえであったりする。 家族もいる、親友たちもいる。生まれ落ちたこの国で、何不自由なく、今のままでやっていける自信がある。 それでも、何かが足りない。このままでは、何かが駄目なのだ。 私はいつだって成長して

        イギリス素描#4(ベトナムトランジット)