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廻る その1


「これは、実際に僕が体験した話なんですけど…。」
「はいカットー!」


今日も一日が終わった。最近は霊感がある芸人として、夏の風物詩の番組に呼ばれることが増えている。小さい頃から、人には見えないものが見えて、何回もお化けを見てきたけど、そろそろ話のネタがなくなってきた。このままじゃ、霊感がある芸人としても、テレビに出られなくなる。
「おい、原山!いやぁ、今日の話も怖かったわぁ。お前、最近よう呼ばれて、ようやく飯食うて行けるようなったんちゃう?よかったなぁ、ほんまに。お前いろいろあったもんなぁ。ほな、お疲れ!」
「いやぁ、まだまだですよ。お疲れ様です。またよろしくお願いします!」
翌日も、心霊スポットのロケがあったから、そのまま家に向かった。家に帰るまでの道でも何体ものお化けを見る。


「うぅぅぅぅぅ」

「あ、もうそういうのではびっくりしないんで。大丈夫です。」


 お化けにも慣れすぎて、普通に話しかける癖がついてしまった。大概のお化けは俺が驚きもせず話しかけると、スーッとどこかに消えてしまう。

(えーっと、かぎは…  あった。)

ガチャっとドアを開けてすぐ「もうそこおんのわかってるから、帰ってー。」と言って家に入るのも日課。何年か前から、家の中にも入って来るようになった。正直うっとおしい。シャワーを浴びて、冷蔵庫に入ったビールを片手に、明日のスケジュールの確認。

(もうそろそろ寝よか。)


俺は、翌日の心霊スポットのロケが、俺の人生で二番目か三番目にランクインするくらい重要なイベントになることを知るはずもなく、すぐに眠りについた。   

つづく

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