廻る その2
17年前―
「優くん、いつまでもお母さんを守ってあげてね。ずっとそばにいるからね。」
俺のおばあちゃんが最後に遺した言葉。俺の家は母子家庭でおばあちゃんが毎日働きに出ていたおかんの代わりをしてくれていた。本気で「おばあちゃんが大好きな人」でギネスに載れると思っていたくらいおばあちゃん子だった。その俺にとって、おばあちゃんの死は、地球がひっくり返るくらいのこと。毎日泣いては、おばあちゃんを探し回って、
「ずっと一緒におってくれるって言ったのにおばあちゃんの嘘つき!」と言っていた。
その頃からお化けが見え始めるようになった。おばあちゃんがくれた贈り物やと思ってるけど、一回くらい会いにきて欲しいな。そう思いながら、仕事に行く前、仏壇に手を合わせる。仏前に置いてある二枚の写真に呟く。
今日も見守っててや。
形見の時計をつけた手で玄関のドアを開けた。
「本日の案内人はこの方です!」
「どーもー!『とんとん拍子』の原山です!よろしくお願いします!」
「本日の心霊スポットはこちら!県内でも、本当に出ると言われている廃墟にやってきましたけれども、原山さん、どうですか?」
「もうそこに何体か見えてますよ。」
「えぇ!」
お決まりのオープニングトークをかまし、ロケが始まった。実際は何にも見えてない。感じてはいるが。
ディレクターからカメラを渡され、若手アナウンサーと廃墟に向かう。(ここはほんまにおるやつや。)廃墟に足を踏み入れ、とれ高を作るために,ほんまは五分で回れる廃墟を進む。
ドンドン!
壁を叩くような音が建物に響き、アナウンサーが思わず抱きついてきた。
「今の聞こえましたよねぇ!だから言ったんですよぉ。ここほんとにヤバそうだって。」
「大丈夫です、もっと先進みますよ。」
階段を上り、二階の広間を歩く。ふっと見ると、遠くの方に明かにこっちを見ている霊が一体。そちらにカメラを向ける。
「〇〇さん。あそこにこっち向いてるの一体ますよ。」
「ひぃ!」
だんだんと近づく。(これは絶対にカメラに納めんと…)柱の奥。男性の霊。ちらちらこっちを見ている。
「じゃあ行きますね。」
「えぇ!ちょっとはやいですよぉ!」
徐々に近づく。
(いつ来んねん…)
カメラがまわっていることを確認する。その瞬間。
「うわぁぁぁぁぁ!」
目の前に現れたお化けの顔を見て、俺は思わず声が出た。
「か、川島ぁ!?」
「は、原山ぁ!?」
つづく
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