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干支の漢字「亥」をモチーフに2019年賀状をデザインしてみた。

毎年、あくまで趣味レベルながら年賀状を作るようにしている。

今年も同様にして「亥」をモチーフにデザインを自ら行ってみた。このデザインをする過程でほぼ無意識的に取り組んでいるプロセスがあるのだがこれまで明文化したことはなかった。

今回、ちょうど何人かの友人がデザインを気に入ってくれたことや、最終的な完成系よりも過程に興味を持ってくれる人がいたこともあり、それらをあえて言語化・抽象化してみれば、来年の取り組み時、または全く別の活動においても役に立つ(ひょっとしたら他の人にとっても?)可能性があるのではないかとふと思い、ここに記してみようと思う。(何気にnoteを使うのも初めてだ)

ざっくり以下の流れで書いてみる。

本エントリーの内容

・背景:デザイナーでもない自分がなぜ年賀状のデザインを始めたのか
・コンセプト:デザインをどの様な方針で行ったのか
・今年のデザイン:どういったプロセスでデザインをしたのか(写真多め)
・総括:改めてなんで年賀状をデザインするのか

背景:デザイナーでもない自分がなぜ年賀状のデザインを始めたのか

始まりは大学3年の時。ヨーロッパを40日間単身バックパックして、色んな国々の人たちと知り合った。帰国後、旅先で助けてくれた、話しかけてくれたお礼に何か日本的なものを送りたいなと思ったことがそもそもの始まり。

ただ、ただ年賀状を送るだけではつまらないなと思い、せっかくなので何かもっと日本的にできないかと、記憶が定かではないがとりあえず筆を使って書いてみようと思い立った。(振り返れば、筆自体は日本に根ざしている訳ではないが。まあ雰囲気である。)正確には使ったのは筆ペン。習字に関しては小学校時代に「止め」「払い」を授業で習ったくらいの素人だが、若さと勢いだけはあったのか、とにかく送りたいという気持ちで取り掛かった。

コンセプト:デザインをどの様な方針で行ったか

※「コンセプト」という言葉は非常に抽象度が高く解釈の幅が広い魔物的なワードなので避けるべきかもしれないが、自分としては「ベクトル=方針、方向性」という意味でここでは捉えている。

とりあえず筆ペンを使い、当時2011年の干支の「うさぎ(卯)」を書いてみよう、と思って色々書いてみた所、下記の様な、なんとなくうさぎっぽい形に着地したので採用したのを朧げに記憶している。

ここでの取り組みは今改めて振り返ると、後付け的ではあるが、
「独自性」と「普遍性」の掛け合わせと捉えられるのではと思っている。

どういうことかというと、
・欧米の人から見た「独自性」=ここで言う東洋の「漢字」(筆感)

・世界の誰もが理解し得る「普遍性」=ここでいう「動物」
の掛け合わせ、という感じである。

この考え方は「日本」という固性の強いプロダクトや資産を多く有する国にとっては重要な考え方だと勝手に思っている。例えばで言えば、「ベイビーメタル」。「少女アイドル」という日本のニッチなマーケットを「ハードロック」という全世界にファンが存在するジャンルに掛け合わせたことで世界的に裾野を広げた。「独自性」という軸(=言うなればコンパスの針)を中心に据えつつ、どう外側のリーチ(=コンパスの外の円書く方の針)を広げていくか。そんなイメージが想起される。

結果的に、このデザインを海外の友人達がとても気に入ってくれたのもあり、翌年、さらに翌年と同様のコンセプトで続けてみた。

※昨年の「戌」については干支の漢字が困難だったため「犬」にて実施。

当時から既に早くも8年が経過したのだが、一貫して「干支の動物」と「漢字(筆ペン)」の掛け合わせでここまでやってきた。そんな中数種類が溜まった頃から「なんとか12種類の干支をこのコンセプトでやりきってみたい」「きっとやりきった時の全干支デザインを眺めるのは言い知れぬ達成感につながるはず」という自我が芽生えてしまった。いずれにおいても年末のみ、数日間の内に取り掛かり終えるという意識のもとに取り組んでいる。

今年のデザイン:どういったプロセスでデザインをしたのか(写真多め)

前置きの駄文が長くなってしまったが、今年のプロセスを簡単に。

❶対象物(漢字)を見る・調べる
今年の干支「亥」という漢字を見たり、成り立ちや、意味を調べる。
あくまで基礎情報としてのインプットだが、書いているうちに思いもよらずインスピレーションのヒントになることも。

❷対象物(動物)を見る・調べる
文字通り、「猪」の写真を見る。とにかく色々見る。(うりぼうかわいい)

❸干支の漢字(=「亥」)をとりあえず宛てもなく書いてみる
見栄えを気にせず、とにかく自由に色んな方向に書いてみる。この時はどう猪に見えるかはそこまで意識しない。ただ書いているとなんとなく「鼻」を特徴的にしていくと「猪」っぽくなる感覚を得る。

この特徴点を探すという作業は、全行程の中でおそらく圧倒的に重要だと思う。なぜなら、僕らが、他人を他人と区別できるのは、その人ならではの特徴(鼻でも口でも目でもなんでもいいが、様は「差別性」)があるからである。同様にして当たり前だが、「猪」として認識してもらうには、「猪らしさ」を尖らせることが不可欠である。言わずもがな、差別性をどう磨くかは、広告においてもエンタメ(例えばキャラクター作り)においても重要さは変わらぬと考える。

ちなみに筆ペンは、パイロットの「小筆 軟筆 直液式」を愛用している。何年か前に色々なペンを試したのだが、最もこの筆が書きやすいと感じた。

❹ 対象の動物の特徴(猪の鼻)を意識して漢字(「亥」)を書いてみる
色々筆ペンを遊ばせてみた結果、猪の特徴はやはり「鼻」だなという所がなんとなくわかったので、より鼻を意識して色々と書いてみる。なんとなく「型」みたいなものが見えてくる。

❺「型」を意識して、ひたすら精度を上げる。
あとはひたすら、自分が理想の着地点と想定する書き味が出るように何度も書いてみる。理想としたのは、漢字の「亥」の余韻を残しつつ、「猪」っぽく見えること、である。

この写真である程度フィニッシュまで近い感じはしていたのだが、一筆分(3〜4画目)実際よりも多いことに気づく。。

❻「型」を意識して、ひたすら精度を上げる。(微修正)

一筆分、少なくした形で着地点を探す。
個人的には、最後右下の一画をどう収納しようか、色々問答した。当初は最後の2画を同じ様な縦への流れを意識して書いていたが、やはり漢字の「亥」の最終画の角度=右斜め下への動きが気になった。何度か書く上で斜め右下への漢字の動きを出しつつ、「猪」の前足と見せる妥協点が見出せたのでうまい具合に着地できた様に思う。(次写真参照)

❼ Photoshopにて組み合わせ・微修正
最後は、いくつか書いた中で、ベストな見た目かなと思える筆致のあるパーツをPhotoshopで組み合わせ。
※本格的な書道ではないので、一筆書きには別段こだわっていない。(書道の精神からしたら超反則なのは承知している。。)というよりもなかなかベストなパーツを一筆で書き上げる技巧もないため、photoshopで最も良いと思うパーツを組み合わせている。あくまでトータルでの見た目を優先。

以下、完成版。

個人的には、今まで書いてきた中でも割と上手くいった方ではないかと勝手に自己満足している。デザインだけに関してはおそらく計2日、総合で7−8時間位かと思われる。

ちなみにだが、ずっと一人で進めていると必ず思考が客観性を失ってくるので、1日おいて改めて俯瞰する様にしてみたり、友人や同僚の意見を聞くなどしている。客観性を維持しつつ進めることは何においても非常に重要なプロセスだと思う。

総括:改めて年賀状をデザインする意味とは

あくまでこれは自分にとってだが、この年末限定の創作活動は最早自分にとって欠かせない習慣のようなものである。

正直最初はどういった形でデザインが着地するかは全く見えていないのだが、何かしら色々な方向に書いてみる中で、対象の動物へと似せる形が徐々に見えてくる(自分の中でのブレークスルーが起こる瞬間)が最も楽しかったりする。

年賀状自体は、昨今デジタル・SNSの進展もあり、若い人を中心に年々書く人も減ってきている様に思う。全くそれを自分は悪いとも思わないし不可避な流れだと思う。

極論言えば、年賀状をわざわざ書くという行為も、人間の根本的な生命活動においては無意味である。別にやらなくても生きてくことに支障はない。

ただ、やはり、自分はこの年末、この1年自分を支えてくれた・関わってくれた人たちの顔を思い浮かべつつ、言葉を紡ぐ時間がなんだかんだ好きなのである。(少なくとも今は。)そうしたやり取りの中で、自分で生み出したデザインがちょっとでも喜んでもらったり、会話の種になってもらうことには大した技巧でなくとも嬉しく思うのである。

きっとまた来年以降も、苦悩しながらも楽しみつつ、やり遂げるのであろう。残りあと3年は。

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