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フィードバックの出し方:何事も適量に・・・

フィードバックなんて多ければ多いほどいい。細やかなアドバイスをを都度たくさんもらえることは上達への近道だ!なんとなく正しそうな気がしますよね。しかし、どうやらそう単純なものでもなく、フィードバックも多すぎるとかえって定着を妨げるという研究があるんです。本日は効果的なフィードバックの出し方を含め、「適度」なフィードバックの量についてお伝えいたします!

キーテーマ

フィードバック・定着・記憶・実験

主題・結論

過剰な量のフィードバック(一回の試みごとにフィードバックを出す)は適量のそれ(2回に一回フィードバックを出す、前半だけフィードバックを出す、等)と比べてタスクの長期定着に支障を及ぼす。

実験で見つかった特に効果的なフィードバック方法:練習前半の試みにおいてフィードバックを出し、練習後半ではフィードバックを減らす(あるいは全く出さない)。

例:子供が野球の素振りを100回行う時
素振り一回ごとに100回アドバイスをしてあげる<<<最初の50回だけアドバイスをしてあげる

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実験デザイン

*論文内では複数の実験について触れていますが、読みやすさのために要約しています!

実験に協力する学生を集め、各自約200回の反復練習を通してとある複雑な腕の動作を記憶するタスクに取り組んでもらう。
反復練習の間、各学生の前にはパソコンのスクリーンが設置されており、学生が動作を反復するごとに正しい動作、先ほどの生徒が行った動作、及び正しい動作と行った動作の違いの度合いを表す数値が表示できるようになっている。

生徒は複数のグループに分けられ(本当は複数の実験にわたって様々なグループが試されています)、グループごとにフィードバックの頻度が調整される。

グループ1 (対照群):200回すべてにおいてフィードバックを与えられる。
グループ2:前半100回のみフィードバックを与えられる。
グループ3:後半100回のみフィードバックを与えられる。
グループ4:10回ごとに、直近10回の動作の平均動作に対するフィードバックが与えられる。
・・・等々。

練習後、動作の短期定着度、及び長期定着度が測定された。

結果、ほとんどのグループがグループ1(すべての試みでフィードバックを与えられた対照群)より高い定着度を記録した。特に前半のみフィードバックを受けたグループ2においてその傾向が顕著だった。一方、後半のみフィードバックを受けたグループ3は対照群と成績はあまり変わらなかった。

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まとめ

細かいフィードバックは前半でたくさん出してあげて、後半では控えることが効果的。

前半部分のフィードバックは正しい動きを把握するために有効なものの、後半部分のフィードバックはむしろ本番におけるフィードバックの依存度を高めてしまったり、練習中の集中力を阻害してしまうのではないか、と考察されています。

留意点

今回の実験では動作を覚えるタスクだったため、異なるタスク(数学の問題を解く、英単語を覚える等)にあてはまるかは実証されておりません。

この実験における「短期記憶」とは反復練習直後の定着度、「長期記憶」とは反復練習をしてから数日後の定着度を指します。

エビデンスレベル:観察研究

編集後記

丁寧に指導していたつもりが、本番でのフィードバックへの依存を引き起こしているかもしれないなんて、目も当てられませんね・・・指導者にも多少の雑多さは必要なのかもしれません。

冗談はさておき、昨今広まっているICT教材によって、今までは物理的に難しかった「生徒一人一人に対するタスクごとのフィードバック」が実現可能になってきています。できることが増えるにつれて、なんとなくよさそうだからやる、ではなく、効果的だからやる、を開発者・利用者が両者ともに意識することを求められていますね。

文責:山根 寛

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Schmidt, R. A. (1991). Frequent augmented feedback can degrade learning: Evidence and interpretations. In Tutorials in motor neuroscience (pp. 59-75). Springer, Dordrecht.

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