教育エビデンス:振り返りの効果
一生懸命学んだことを私たちはなぜ忘れてしまうのでしょうか?今回は学習の定着に関する研究を行っている認知学者が復習に関する複数の研究を統合したメタ分析文を紹介します。授業の最後に、何を学んだのか生徒自身に振り返りをさせた場合と、させなかった場合で、どのくらい学習定着に差が出るでしょうか
キーテーマ
復習・定着・記憶・実験
結論
授業の終了時に、今日学んだことはなにか生徒自身に振り返りをさせると、短期的にも長期的にも成績向上に効果がある。
実験デザイン
振り返りに関する2000強の論文のシステマティックレビューを行い、条件を満たす49の実験(n= 5,374)の効果量を整理した。振り返りが記憶にもたらす効果を調べる49の実験のうち、57%が大程度または中程度、37%が小程度の効果であった。
留意点
一般的に、メタ分析は出版バイアス(ポジティブな実験結果の方が出版されやすいこと)に留意する必要があります。本分析に最終的に使用された研究データは96%が先進国のデータです。
エビデンスレベル:メタ分析
編集後記
授業の最後に数分間、生徒自身に復習させるというコストのほとんどかからない方法が、教員数を増やすなどの膨大なコストのかかる施策以上(教員数増員が学習にどの程度効果があるのかについては別途論文をご紹介します)の効果があるというのは示唆深い発見だと思います。著者のおすすめの質問は「今日学んだことで10年後にも覚えておきたいことは?」だそうです。小さい子どもから成人まで応用可能な振り返り、ぜひ取り入れてみてください。
文責:識名 由佳
出典
Agarwal, P. K., Nunes, L. D., & Blunt, J. R. (2021). Retrieval practice consistently benefits student learning: A systematic review of applied research in schools and classrooms. Educational Psychology Review.
doi.org/10.1007/s10648-021-09595-9
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