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「研究」という言葉に騙されない

「教育に関するスゴい論文を一分で紹介する」をコンセプトとした「スゴ論」。学術研究の最先端を幅広く発信したい、という思いでチーム一同取り組んでおります。今回は、こうした研究を発信していくものとして、スゴ論が目指すべき役割とは何か、という点について皆様と考えることができればと思います。

「その発言、ソースはあるんですか?」に潜む罠

「〇〇国の××大学でこのような論文が発表され~」「最先端の研究によると~」・・・
こうした言葉を報道番組やネット上で耳にすることはもはや珍しくありません。
あらゆる情報を誰でも手に入れることができる今、誰もが最先端の研究や論文について知ることができるようになっています。
情報があふれかえる時代だからこそ、このように自分の意見の根拠(ソース)を明示することの重要性が一層増していると言えるでしょう。
実在する研究や論文の引用が明示されていると、議論に対する聞き手側の信頼度も大きく上がる気がしますよね。

しかし、こうした言葉には大きな罠が潜んでいます。
論文・研究=真実では全くないという罠です。

研究=真実ではないということ

論文・研究=真実ではないとは、どういうことでしょうか。
研究者たちが悪意を持って情報を操作しているということでしょうか。
そうしたケースも稀に存在するかもしれませんが、そういうことではありません。
以下、何個か考えられる原因を紹介します。

  1. 研究が古い
    学問は常に進化し続けています。
    当時は正しいとされていた昔の論文も、今となっては反証されているケースは多々あります。
    例えば、15世紀ごろの論文を引用元として引っ張り出してくるのであれば、「太陽は地球の周りを回っている」と議論できるわけです。

  2. 研究の背景に何かしらの意図や目的がある
    民間企業や、政府関係のシンクタンク等が発表する研究にて注意しなければいけないケースです。
    こうした政治的・経済的意図が絡む研究はデータ改ざんとはいかなくとも、研究成果の解釈が限定的だったり、そもそも意図に沿うような研究しか行われないようなケースがあります。

  3. 実験結果の再現性がない
    「とある雨の日にサイコロを3回振ったら、3回連続で6の目が出た。よって、雨の日にサイコロを振ると6の目が出やすい。」このような論文を読んだら、どう思うでしょうか。
    信じないですよね。
    厳密には、「嘘ではないかもしれないけれど、結論がおかしい」と感じるかと思います。
    極端な例に見えますが、実はこれに近い現象が実際の研究現場でも起きていることが指摘されています。
    特にスゴ論で扱われることの多い心理学の分野では、「Replication Crisis」(再現性の危機)として、この現象は10年ほど前から強く問題視されています。
    参考:https://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/video/contents/6

  4. 相関関係が因果関係として拡大解釈されてしまう
    「アイスクリームの屋台が増えた。その翌月、近隣のプールでの事故数が5%増えた」
    この文章を聞いてどう思うでしょうか。
    アイスクリーム屋さんが一般人をプールに突き落としているのでしょうか。
    そうではないですよね。
    夏だからアイスクリーム屋さんが増え、同じく夏だからプールの利用者が増加し、結果事故数が増えてしまったのです。
    そこに因果関係はありません。
    残念ながら、私たち人間は相関関係と因果関係を区別することが非常に苦手です。
    この場合特に厄介なのが、論文としては相関関係を述べている場合でも、読み手によって因果関係が解釈されてしまうリスクがあるということです。

黒幕はアイスクリーム屋さん?!

スゴ論としての取り組み

研究≠真実というリスクがある中、できるだけ正確な情報を発信するためにスゴ論では以下の取り組みを行っています。

  1. 原文を読み、引用元を明示
    解釈による齟齬を最低限におさえるため、まとめや引用ではなく論文の原文を読むようにしています。
    また、必ずスゴ論の記事の最後には紹介した原文のソースを貼り付けています。
    気になる場合は、是非原文を読んでみてください。

  2. 論文の出展元の基準を担保
    スゴ論では一定の基準を満たす記事や研究しか紹介しません。
    大手学術誌に載っている記事や、国際機関によるホワイトペーパーより題材を選出しています。
    出展元のインパクトファクター(その学術誌がどれほど大きな影響力を持つかを示す数字)や、論文の引用数(その論文が他の論文によってどれほど引用されている後いうこと)を確認し、一定基準を満たすもののみを紹介しています。

  3. エビデンスレベルを明記
    「研究の質」を基準化したものである。エビデンスレベルを明記しています。
    エビデンスレベルについて詳しく知りたい人はこちらの記事をご覧ください。

  4. 記事の相互確認
    スゴ論のすべての記事は、リリース前に必ず別のメンバーにより内容を確認・編集しています。

スゴ論を読むにあたっての留意点

以上のように、スゴ論ではなるべく真実に近い情報をお届けできるようにできる限りの努力をしています。
しかし、できるだけ正しい情報をお届けしたいからこそ、読者の皆様にもスゴ論を読んでいただくにあたって注意していただきたいことが何点かあります。

  1. 「研究=真実」ではないということ
    前述した通り、そもそも紹介している論文が真実にそぐわない可能性は否定できません。

  2. スゴ論で紹介されている記事が全てではないということ
    スゴ論で紹介している記事は、教育分野という限られた分野の中でもほんの一部を占めるものでしかありません。
    紹介された論文とは異なる意見を唱える研究が存在する可能性も十分考えられます。

  3. あくまで人が書いている記事だということ
    これはスゴ論に限らず、この世に存在するすべての情報に言えることですが、情報である以上、その裏にはその情報を発信した「人」が存在します。
    その「人」は性別・性格・人種・生い立ち・思想等、あらゆる要素によって構成されているといえるでしょう。
    例えば現状のスゴ論チームに共通する特性として、日本人・30代前後・海外経験がある・大学院に通っている等が挙げられます。
    こうした特性を持っている人が集まったグループである以上、記事選出や作成の段階で何かしらのバイアスがかかっている可能性は非常に高いです。

最後に

ここ数年、新聞などで「正解のない社会」という言葉を目にすることが増えました。
情報化・国際化が急速に進む世界の中で、私たち一人一人に自分の判断をもとに行動することが求められているといえるでしょう。
スゴ論は教育に関する学術的な情報を少しでも広められるよう、活動を行っています。
正解に近い情報を届ける努力はするものの、それは100%の実現は不可能な目標であるということは、記事を読まれる際に頭の片隅においておいていただきたいです。
これからも皆様と研究の最先端をつなぐ架け橋となれるよう、スゴ論チーム一同努めて参ります。

文責:山根 寛

スゴ論では週に2回、教育に関する「スゴい論文」をnoteにて紹介しています。定期的に講読したい方はこちらのnoteアカウントか、Facebookページのフォローをお願いいたします。
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過去記事のまとめはこちら

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